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その日の放課後は
サッカー部、テニス部、バスケ部と
人気者が集う部活が他校との練習試合を行っていたためか、図書室の利用者はたった1人でございました
窓際に設置されたカウンター席の端に座り、熱心にペンを走らせている男子生徒
彼の名前は阿部亮平さま
2年1組の生徒で学年トップ独走中の秀才です
窓から差し込む光に照らされた横顔
勉強や読書の時だけかける眼鏡姿がたまりません
一見、秀才を絵に描いたような地味で落ち着いた雰囲気ですが、スタイルも良いし、何気にスポーツも出来るので隠れファンも多く、普段ならあちらこちらに女子生徒がいるはずなのですが…
やはり年頃の乙女たちにはスポーツ男子の方が人気なんでしょうか?
それとも、他校との練習試合などなかなか平日に行いませんから、今日はそちらを優先したのでしょうか?
因みに図書委員の当番は少なくても2人、なのですが…みなさん、ちょっと体調が…なんて言って気付いたら消えておりました
只今、グラウンドで練習試合が行われているサッカー部のエース、2年2組の目黒蓮さまは、学年一と言われるイケメンでモデルかと思えるほど、高身長でスタイル抜群
ちょこっと天然な所もまた可愛いと大人気なのです
しかも、幼馴染みだという1学年下のラウールさまも目黒さまの応援に行っていると思われます
私の予想ですと、一番ギャラリーが多いのはサッカー部の試合なのではないかと
続いてギャラリーが多そうなのはバスケ部でしょうか
バスケ部には深澤辰哉さまというこれまた2年生の人気者がおります
一見するとさして美形という気がしませんが、とにかく優しくて、気付けば好きになっていた…なんて女子の多いこと多いこと
深澤さまのいる2年4組には学年の人気者も多く在籍しており、彼らも応援に行っているとなると体育館の2階席はほぼ埋まっていることでしょう
テニス部だって負けてはおりません
県大会準優勝に貢献した2年3組の向井康二さまがおります
明るく人懐っこくて、クラスのムードメーカーと評され、先生方ともフレンドリーに接する事が出来るのは彼の人柄のなせる業なのでしょうね
コミ障気味の私には羨ましい限りでございます
女子にも男子にも好かれる人気者たち
皆それぞれに人気がありますから
グラウンド、体育館、テニスコートをローテーションで回っているのかもしれません
時折、遠くの方で黄色い声が聞こえてきます
阿部さまもその声につられるように、時々、窓の外に目をやり、数分物思いに耽っているご様子
その憂いを帯びた表情といったらもう、たまらない!!のですが、どう表現したら良いか…自分の語彙力のなさに絶望するぐらい言葉になりません
さて、そろそろ
「あんた誰?」なんて声が聞こえてきそうですね
私は阿部くんと同じクラスの茂部と申します
茂部と書いてモブ
そう私は生まれた時から周囲に溶け込むことのうまいモブなのです
随分と自分を卑下していると思ったあなた!!
違いましてよ
私はこれ宿命とばかり、影の薄さを利用して、こうしてイケメンウォッチする毎日
全く相手に気付かれないのですから、これもある意味才能ではないかと自負しておりますの
口調がおかしい?
申し訳ありません
私、オタクという属性でして
中二病という痛ましい病にかかっております
因みに現在、転生系悪役令嬢ざまぁ系にどっぷりハマっておりますので、多少おかしな語り口調にはなりますが、その点ご了承下さいませ
さて、私が図書委員として返却本を所定の位置に戻しつつ、気配を消しながら目の保養に勤しんでいると、何やら騒がしい足音が近付いてまいりました
何事か、と思っているとーーーー
バンッと激しい音と共にある男子生徒が飛び込んできたのです
司書の先生が不在だったから良いものの
図書室への入り方としては一発アウトな登場の仕方です
まぁ、廊下を走っている時点でダメなんですけどね
飛び込んできた生徒は周囲を見渡し開口一番
「あべちゃ~~ん」と叫びました
とてつもなく良い声なのですが…
なんでしょう
国民的アニメの猫型ロボットに頼りっぱなしの眼鏡の彼を彷彿とさせます
呼ばれたアベえもん…もとい、阿部さまは渋いお顔で人差し指を立てて口元へ
無言で注意をされた男子生徒は
ハッしたように
もう一度周囲を見渡しました
誰かいたら「すみません」と謝ろうと思ったのでしょう
私は2メートルはありそうな本棚から少しばかり顔を出しつつ、気配を消しているので…気付かなかった彼はホッと息をつき、トコトコと阿部さまのもとへ
「ごめん、あべちゃん」
しゅんと項垂れながら、阿部さまの隣の席に座った彼は、同じクラスの佐久間大介さま
鼻先まである長い前髪で顔を隠し、ザ陰キャを演出しておりますが、その正体はY-Netという配信チャンネルのバーチャルライバー、D(ディー)さまではないかと…
ピンク髪の可愛い系男子のアバターを使い、正体は不明という事になっておりますが、声がそっくりそのままなのです
DさまのSNSアカウトには美少女コスプレの画像も多く載せられ、性別不明ともされておりますが、私のオタクセンサーが彼だと明確に告げております
ギャップがありすぎて似ているだけ、と思われそうなんですが、私はそこをあえて狙っているのではないかと思っております
因みに阿部さまとは幼馴染みだとか
家も近く、スープの冷めない距離、と聞いた事があります
長い前髪のせいでお顔は拝見出来ませんが
Dさまご本人であったなら、それは美しい顔をしていることでしょう(美少女コスプレから推測)
そんなお二人の姿に顔がにやけてしまう私
そんな私に衝撃的な展開が待ち受けているとは………
さてさて
話は戻ります
阿部さまの前でしゅんと項垂れる佐久間さま
彼も同じクラスなのですが、昼休みからずっと姿を消しておられたのです
鞄はそのままに5時限目、6時限目と不在だったため、阿部さまは相当心配しているご様子でした
「お前、どこ言ってた?」
普段品行方正で物腰柔らかな阿部さまの口から漏れる“お前”に、私、ドキドキしてしまいました
佐久間さまと一緒の阿部さまは、クラスで見せる顔とは少々違うようです
「ごめん…こうね、ぐぁぁぁってなってたから隠れてた」
一方の佐久間さまも
クラスでは無口で影が薄い印象ですが、幼子になったかのような口調の可愛さに思わす震えてしまいました
歓喜!!
私とは違い、阿部さまは首を捻ります
「意味が分からん。最初っから説明」
「…はい…」
しゅんとしつつ、ちらりちらりと阿部さまを伺いながら佐久間さまは口を開きました
「あのね、今日はあべちゃん委員会で昼一緒に出来なかったでしょ?
だから、俺、体育館裏で漫画読みながらこっそりご飯食べてたんだけど…
そこにね、ボールが転がってきたの」
言葉をきって、阿部さまを見上げます
「続けて」というように阿部さまが頷くと
「でね、そのボールを追いかけて目黒くんがきて」
佐久間さまから発せられた“目黒くん”と言うワードに、阿部さまの眉がぴくりと反応したように見えました
因みに私、子供の頃から視力は2.0と野生児並みでしてよ
「なんだろ、なんかさ…めっちゃ良い空間だったんだよね
静かで、俺と目黒くん2人しかいない、みたいな
でね、読んでた漫画が丁度告白シーンだったこともあって…ついね…告白しちゃった」
えへへっと後頭部に手をやり、照れ笑いをする佐久間さま
流石です!!現実でそんな照れ方するひと初めて見ました!!!!
しかも、可愛い!!可愛いんです!!!!!
しかし阿部さまは「はぁっ!!」と腹の底から出したと思われる驚きの声を上げました
きっとここが図書室であると吹っ飛ぶ程の衝撃だったのでしょう
私も驚きました
お2人の関係があまりにも近いので、私はてっきり両想い、または両片思いなのかと思っていたんですが、接点のなさそうな目黒さまを佐久間さまが想っていたとは意外です
「大胆な事するなぁ
俺はてっきり目黒くんの練習試合を見るために良い席確保しにサボっているのかと」
「いやあべちゃん、それは流石に先生にバレて怒られると思う」
グラウンドですからね
まだ練習試合に向けての準備もされてませんからね
そんな中で場所取りしている佐久間さまをひとり想像してしまいました
なんとなく可哀想可愛いで保護案件な気がします
「で、なんて言ったの?」
「好きです!!付き合って下さい!!!て」
「うわぁ…間違いなく告白だ」
呆れ半分な口調な阿部さまに
「頑張った!!」と首を大きく振る佐久間さま
「目黒くんはなんて?」
「ごめんなさいって」
弾んだ声で言う佐久間さまに阿部さまは少し困った顔をしておりました
「それ、フラれたって事だよ。何で楽しそうなの?」
「ん?だってさ
面識もないような男に告白されたんだよ?
普通にさ、気持ち悪がってもおかしくないのに、ちゃんと頭下げて、ごめんなさいって言ってくれたの
目黒くんはやっぱ良いヤツだった」
確かに
同性に告白されたら驚くし、困りますよね
それでも佐久間さまの話しぶりではとても紳士的だったのでしょう
「そっか」
「うん。それにさ、俺考えたんだけど
この世界って1つじゃないじゃん?」
「は?いや、待て待て」
「ん?」
「ん?じゃないのよ。何を言い出すんだ、お前は」
「????」
「そんなわかりませんって顔されても、こっちが分からないから。
世界が1つじゃないって何?」
「だって1つじゃないでしょ?平行世界ってあるじゃん。
この世界と同じに見えて違う世界。
そこではさ、俺もあべちゃんも、目黒くんも他のみんなも実在するけど、今とはまるで違う生活してるかもしれないよ
年も見た目も違っててさ
職業も色々で、アイドルとかやってたりしてさ。きゃーきゃー言われてたらどうする?
あとさ、あとさ
スパイとか殺し屋とか、色んな自分がいるかもよ
だから、色んな世界の佐久間が頑張って、目黒くんおとしてるかもしれないじゃん。
今頃、ラブラブかも~とか思ったら、この世界でダメでも良いかなぁって」
身振り手振り大きく世界を表し、とても楽しそうに語る佐久間さまはとても眩しく見えました
平行世界
パラレルワールドなど空想の世界と言われるかもしれません。
それでも、全てが解明出来ない世の中なのですから、実際はあるかもしれませんよね
それでも、ここでない違う自分がどこかで成功しているかもしれない、とは
また面白い考え方をするものです
「違う世界ねぇ」
「そう。そう考えたら楽しいでしょ?」
「想像の斜め上をいくポジティブさにはびっくりだわ」
阿部さまは参考書を閉じると
「じゃ、別の世界では俺と佐久間の物語もあるかもしれないね」
足元に置いていた鞄を手に取り、立ち上がりました
「あるかもね~だって俺、あべちゃん大好きだもん」
のほほ~んと私が食いつくような発言をした佐久間さまを一瞥し、鞄に参考書やペンケースをしまい込んだ阿部さまは、広げていたノートを閉じて佐久間さまに差し出しました
「これは?」
「佐久間がさぼった授業の写し。俺の解説付きです」
「いいの!!嬉しい!!!」
受け取って大事そうに胸に抱える佐久間さまは本当に嬉しそうです
いや、もう阿部さまで良くないですか?
もう別の世界では、とか言ってないでくっつけば良いのに!!
「あんま落ち込んではいなそうだけど、甘い物でもおごってあげよう」
「えっ!!あべちゃんがめっちゃ優しい」
「俺はいつも優しいつもりだけど?
まぁ、佐久間にしては頑張ったから」
阿部さまは使っていた椅子を丁寧に戻し、机が汚れていないかを確認後、
「ほら、行こう」と佐久間さまを促し、図書室の扉の方へと歩き出しました
ちゃんとした阿部さまに倣い、佐久間さまも使っていた椅子をきちんと戻し、足取りも軽く阿部さまを追いかけます
想い人にフラれたなど微塵も思えませんが、人の心は見えないもの
阿部さまの存在がきっと助けになっているのでしょう
2人の後を追いかけたい衝動にかられますが、阿部さまにはバレてしまう気がするので諦めることにいたしましょう
無数に広がる平行世界では
モブとして生きる私とは違う私もいるのでしょうか?
考えた所で仕方ありませんが、どの世界に住む私の好きな推したちが幸せなら良いなぁと思うのです
モブとして生きる今の私も充分幸せなので、この特技をいかしつつ、イケメンウォッチ及び妄想BLに勤しみます
それでは皆さま、ごきげんよう
✱.˚‧º‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧º·˚.✱
色々設定を考えていたので
この世界でのお話も作りたいなぁと思っております
設定的にはかなり痛い話も含まれますが、まぁおいおい
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