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鷹槻れん

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#極道
鷹槻れん

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鷹槻れん

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月詠 涼
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【作品紹介】
黒か赤か。ファミリーカーかVIPカーか。
年末に車の購入を決意した京介と、夢見る芽生の「車選び論争論争」が勃発!
芽生は可愛い赤のコンパクトなファミリーカー【セレンタ】を推すけれど、京介は黒のワンボックスカー【アルフォード】一択。
揉める二人に、「納車まで一年」の営業マンの一言。
――「そんなに待てるか!」
待てない男と、夢見る彼女。二人が選んだのは〝即決・現金払い〟の……。
甘くてちょっと笑える、京介と芽生の車選び短編。
※車種名はあえて実在のものとは変えてあります。
年末のある夜。
ソファで寛いでいた芽生が、ふと視線を横へ向けると、テーブルにノートパソコンを開き、黙々とカーサイトを眺めている京介の姿が目に付いた。普段ならネットに触れること自体少ない彼が、真剣な顔つきでページをスクロールしているのが珍しくて、思わず覗き込んでしまった芽生である。
「……京ちゃん?」
「京介」
「あ、えっと……京介。もしかして……車買うの?」
芽生の問いかけに、京介が一瞬だけ指を止めた。
「あー、まぁ、ないのも不便だと思ってな」
相良組の組長さんだった頃の京介は、それこそ運転手付きの車で移動するのが当たり前。それを思うと、このところ出かけるたびにタクシーを呼んでの移動は確かに不便かも? と芽生も思った。
「京、介が運転するの!?」
いまだに目の前の男のことを〝京介〟と呼ぶのに慣れない芽生は、いつも通り〝京ちゃん〟と呼びそうになって慌てて訂正しつつも、言いたいことを言う。
「まぁ、お前、免許持ってねぇからそうなるな」
「きゃー! なんか嬉しい!」
京介がハンドルを握ったところを数えるほどしか見たことのない芽生の声が楽しげに弾んだ。
京介には恥ずかしくて言えていないけれど、芽生は運転する京介の姿がとてもかっこよくてときめいたのを覚えている。
「やった! あのね、せっかくだから私、ファミリーカーがいい!」
芽生がワクワクした瞳でそう告げた途端、京介が眉をひそめる。
「ファミリーカー?」
「そう! 広くて安全で、荷物もいっぱい積めるやつ! ほら、買い物とか旅行とかで便利そうじゃない?」
後部席のドアはスライドドアで……などと、芽生が両手を広げて身振り手振りで語る姿に、京介は淡く笑った。
「……考えとく」
ぶっきらぼうにそう答えた京介だったが、実は心のなか、(なに夢中になって語ってやがんだよ。可愛過ぎだろ!)と頬が緩みそうになるのを必死で誤魔化していた。
***
年が明けて間もない休日――。
田畑栄蔵とともに遠方に住む芽生の母方の祖母・中村奈央子を訪問した翌週のこと。
京介と芽生は近所のカーディーラーを訪れていた。
広々としたショールームには新車がずらりと並び、蛍光灯の光を受けてピカピカに磨き上げられたボディが眩しく輝いている。
「わぁ……!」
たくさんの展示車を見て、芽生の瞳がキラキラと輝いた。
「ねぇ、京ちゃん! これなんてどう?」
彼女が指差したのは、コンパクトなスカーレットメタリックのミニバン『セレンタ』。丸みを帯びた愛らしいフォルムは、確かに〝ファミリーカー〟そのものだった。
「清潔感あるし、かわいい! 中も広いし、私、これがいいな」
芽生が嬉しそうに京介を振り返る。
「……却下だ」
「えっ」
京介は一瞥しただけで素っ気なく切り捨て、迷うことなく別の車へと歩き出す。黒光りする巨大なボディ、重厚感のあるフロントマスク――アルフォードが鎮座していた。
「ファミリーなら、こういうワンボックスだろ」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 大きすぎない!?」
「これくらいでちょうどいい」
営業マンが慌てて駆け寄り、「こちらは八人乗りでして……」と説明を始める。
芽生は必死に食い下がった。
「でも、色は赤がいいなぁ。ほら、戦隊モノでも赤はリーダーの色でしょう?」
どういう了見だよ? という持論を展開する芽生に、営業が済まなさそうに「申し訳ございません、アルフォードには赤はございませんで……」と説明するより早く、「黒だ」と京介が即答する。
「え? でも黒だと……なんか、組長さんの時と変わらないよ?」
芽生の言葉に営業がギョッとした顔をして京介を見たが、その視線をスルーした京介が、
「知るか」
芽生の言い分をバッサリと切り捨てた。
そんな京介に芽生は思わず口を噤み、営業マンは冷や汗を浮かべながら曖昧に笑う。
京介はそんな二人を無視してアルフォードのドアを開けると、運転席に腰を下ろした。慣れた仕草でハンドルを握る姿に、芽生はため息をつきながら助手席へ滑り込む。
「広い……!」
座った瞬間、芽生の顔がパッと明るくなった。
「京ちゃん、あっちのより大きいけど……これもやっぱりファミリーカーだと思う! 子供六人まで生まれても平気で乗れちゃうとか……すごいね!」
その無邪気な一言に、京介の手がピタリと止まった。
「……は?」
「えっ?」
芽生は瞬きを繰り返し、自分の失言に気が付いた。
「ち、違っ……! いや、だって八人乗りって聞いたから! 別に深い意味は……!」
顔を真っ赤にして言い訳する芽生を横目に、京介はしばし無言でハンドルを握ったまま前方を見つめる。心なしか耳が熱くなった気がしたのだが、幸い車内は薄暗くて芽生にも気づかれずに済んだ。
(こいつ……ほんっと、さらっと爆弾落としやがる)
営業マンは笑顔を固めたまま視線を逸らし、試乗は妙な空気のまま終わった。
***
席を立った京介に、営業マンが丁寧に頭を下げる。
「お気に召しましたか?」
「ああ、悪くない」
京介の言葉に、営業はパッと瞳を輝かせたのち、
「ですが……実はこちら、非常に人気でして……新車ですと納期はおおよそ一年ほどに……」
「一年?」
芽生が声を上げる。
「そんなに待つんですか!?」
「えぇ……」
営業マンが申し訳なさそうに頷くと、
「はっ。そんなに待てるか!」
京介が吐き捨てるように言い放ち、芽生の手を掴んだ。
「中古車屋行くぞ」
「え!? い、今から!?」
慌ててバッグを抱え直した芽生が小走りでついていく。
営業マンはぽかんと、そんな二人を見送るしかなかった。
***
数時間後。
町外れの中古車店で、京介は足を止めた。
そこには艶めく黒のアルフォード――。ほぼ新車同然の新古車が展示されていた。
年式もそんなに古くないし、グレードも最上級。
情報をサッと確認するなり、
「これだ」
言うが早いか、京介は店員を呼び寄せ、即決で購入を申し出る。もちろん支払いは現金一括だ。
「ちょ、ちょっと……京ちゃん! ホントにもうこれに決めちゃうの!?」
安い買い物じゃない。芽生が驚きの声を上げたのも当然だろう。
「あ? 当たり前だろ。欲しいと思ったもんは、すぐ手に入れる。それが俺の信条だ」
京介が当然のように答えて、芽生を呆れさせた。
契約書にサインをし終え、二人は外に出る。冬の冷たい風が頬を撫でた。
新車ほどではないけれど、手続きに色々掛かるので、納車はすぐのことにはならない。
「……これ、やっぱりファミリーカーじゃない気がするんだけど」
【ご成約済み】の札が貼られたアルフォードを見て、芽生が小さくぼやく。
そんな芽生の隣で、京介は笑みを浮かべた。
「俺とお前が乗るんだ。意味なんてそれだけで十分だろ」
芽生はその言葉に胸がいっぱいになり、自然と頬が緩んだ。
「……そうだね」
冬の冷たい風の中でも、京介の言葉が芽生の胸を温めてくれる。
こうして二人の新しい相棒は、静かに彼らの未来を乗せる準備を始めたのだった。
【END】(2025/08/25)
コメント
2件
ほんと、待てるか!だね(笑) 最近の新車、納期長すぎて嫌になる!って思ってたから京ちゃんの気持ちに共感しまくりつつ。
うわぁ~~っ、めっちゃ良かった!!😭💕 車選びからこんなにエモくなると思わなかったよ…! 赤のセレンタ vs 黒のアルフォードの押し問答、もう京介の「待てるか!」がカッコよすぎてぶっ倒れるかと思った😇✨ しかも最後の「俺とお前が乗るんだ。意味なんてそれだけで十分だろ」って…京介の不器用な愛情がじわじわ沁みるセリフすぎます!!芽生が「子供六人」って言っちゃった後の車内の気まずい空気も可愛くて笑ったww この2人の掛け合い、もっと読みたいなぁ…! 短編だけどギュッと詰まっててめちゃくちゃ満足度高いです! 鷹槻れんさん最高です🔥💖