テラーノベル
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「···!元貴!りょうちゃん起きたっ」
「わかい、だ···もときの笑い声···聞こえた···」
りょうちゃんは息をするのも苦しそうで呼吸も浅い、でもしっかりと若井と俺を見て握った手は冷たくてもさっきより強かった。
「うん、久しぶりに3人揃ったよ、良かった···やっぱり3人じゃなきゃね、りょうちゃんがいてこそだから···」
「そうだよ、良かった···りょうちゃんがいないと元貴に俺ばっかり怒られるし」
ふっ、とりょうちゃんが笑う。
この笑顔が大好きだった。
「若井···今までありがと···元貴をよろしくね···」
まかせろ、って小さく答えて若井は大きく頷いた。
確認するようにりょうちゃんも頷いてから、俺を見る。
「もとき···ありがとう、本当に···だいすき、ありがと···」
「俺も大好き、もうすぐご両親も来るから、ねぇ、最後みたいなこと言わないで···っ」
「大丈夫、ぼくは···ずっともときの側にいる···から···」
「···りょうちゃん?りょうちゃん?!」
さっきまで一定のリズムを刻んでいた機械音が鳴り響き、警告音のようなけたたましい音に変わる。
「だめだよ、りょうちゃん!りょうちゃん、お願い···っ」
若井がナースコールをして看護師さんが来て俺は引き離されて。
先生が来て、ご両親が来て、若井はずっと俺の手を握ってくれていた。
機械音が止められて、りょうちゃんは2度と目覚めることは無くて、若井はずっと泣いていたように思う。
暫く泣いて、色んな人が来て泣いて、けどりょうちゃんは穏やかな表情でずぅっと眠ったように静かにしたままだった。
もうあの笑顔を見せてはくれない。
もぉ、とかねぇ、とか甘くて優しい声で話しかけてはくれない。
細くて長い指で触れてはくれない。
案外力強いその腕で抱きしめてはくれない。
皆いつの間にか居なくなっていた。明日には家に連れて帰ってあげたいとお母さんが言っていたから今夜だけは2人きりにしてくれたんだろう。りょうちゃんを優しく撫でて、そっと抱きしめた。
いつもの温もりはそこにはない。
俺はその時ようやく泣いた。
心のなかで世の中の全てが憎くて毒づいて怒りが溢れて仕方なかった。
どうしてりょうちゃんがこんなことに?もっとどうでもいい人間は山程いるだろう?なんで、どうして。
俺を置いて。独りにして。
ふざけるな、りょうちゃんを返せ。
俺からりょうちゃんを奪うなんて。
返せ、今すぐに。
一それができないなら。
俺もそっちに連れて行って。
大声でとにかく泣いた。
顔はぐちゃぐちゃで、頭が痛くなるくらい、りょうちゃんの袖を濡らしてしまうくらい泣いた。
どんなに泣いても、夜が明けても、もう戻ってこないんだと理解しても受け入れることは出来なくて、若井が様子を見に来て俺の肩を抱いてくれた。
そしてりょうちゃんは実家に帰って、若井と一緒に病室の片付けをしていた時に『元貴へ』と書かれた手紙を見つけた。
それだけじゃない。
若井へ、綾華へ、高野へ、両親や今までお世話になった人へ···本当にたくさんの手紙が残されていた。
「若井、これ···りょうちゃんからだ···」
若井はそれを受け取るとすぐに開封してそしてまた目を真っ赤にさせて泣いた。どれだけ若井と俺を泣かせたら気が済むの、と手紙を開く。
そこには真っ白な便箋の真ん中に丁寧に書かれた馴染みのある文字があった。
『僕は元貴と出逢えて幸せでした。
元貴愛してる。僕の分も生きて。もときが見つけてくれるまで、またね』
生きて、なんて。
またね、なんて。
俺はまだ、貴方の居ない明日を行きなくちゃいけないの?
「仕方ないなぁ···」
貴方を想いながら、また会えるその時まで···。
お通夜、お葬式と···全てが静かに進み、独りの夏休みを過ごしてからりょうちゃんのことを公表してから暫くはとにかく対応に追われた俺も若井もまた日常に戻りつつあった。
若井は俺に寄り添ってくれたし、綾華にも高野にも手紙を渡して泣いたのを見てなんだか俺の寂しさを分かち合ってくれたようでありがたかった。
それでも泣きそうになる時も眠れない夜もある。
そのたびに手紙を開き、りょうちゃんがずっと書いてた日記を読んだ。
そこには俺への想いが溢れていた。
病気がわかった時のことも別れるのを決めた日のことも、そして俺とまた再会したことも。
苦しみも、悲しみも、喜びも、幸せも。
その度にまたりょうちゃんを庶幾い生きていく。
#初投稿
2,862
#自己満
ずんだもちぃ
4,522
あれから数十年がたって、俺は病院のベッドの上でこれまでの人生を思い返していた。 意識が薄れていく。
目を開けることも難しい。
もうこの世界とサヨナラみたいだ。
薄れた意識がはっきりとしていく···目を開けると明るい真っ白で何もない場所にいた。
けど、悪くない場所だ。
ぼんやりと歩いていたら、目の前に 懐かしい、大好きなあの頃と変わらない見慣れた姿勢の良い背中を見つけた。
ずっと、なんども呼んだ名前を呼ぶ。
「りょちゃん!···たくさん、待たせたね」
「···ううん、それが僕の願いだったから···けど、会いたかった、凄く凄く、会いたかった」
くる、と振り向いたその姿は元気な頃のりょうちゃんのままだった。
「···俺も、会いたかった。さよならしてからのほうが長いくらい年を取っても、最後に思い返すのはりょうちゃんとの思い出ばっかりでさ」
「···うん」
「しっかり、りょうちゃんの分まで生きたつもり。だから···いいよね、もう」
「ちゃんと見てたよ。ありがとう、元貴···」
やっと、本当にやっとりょうちゃんの涙を見た気がする。
ぎゅっと抱きしめる力強さ、匂い、温もり···全部懐かしい、あの頃のままで俺も泣きそうになった。
「夏休みしよう。ずっと続く2人の夏休み」
「うん、ずっと···2人でいたい。元貴と離れたくないから」
「俺はいつでもりょうちゃんを見つけるって、言ったでしょう。離さない、けど何があったって見つけるよ」
手を繋いで2人で明るい方へ歩いていく。気が早い?でも今から来世の約束をしよう。
「元貴が見つけてくれるなら···僕は絶対に元貴と一緒にいられるね」
その笑顔に俺も自然と笑ってしまう。
話したいことがたくさんある。
まだ2 人の夏休みは始まったばかりだ。
コメント
6件
あーーーやばい、、、涙腺崩壊です、、、ハピエンじゃないって思ってたのにハピエンですこれは😭❤️💛まじで号泣です
涙が止まりません、沢山泣きました。 会えて良かった、見つけてくれて良かった。 切ないけれど苦しいけれど、最後の再会のところが幸せでまた泣きました😭 だいすきです🥹🫶🏻