いつものように寝て起きて学校に行ってを繰り返していたある日のこと。
俺は、
虐められているらしい。
そう気がついたのはつい最近のこと。
「ふぁぁあ〜……」
呑気にあくびをしながら登校する。
運が悪いことに佐藤とは真逆の方向に家があるため一緒に登校、下校をすることは難しい。
つまんないなぁ……
ふと、そう思った。
今までは、こんなに平和なことは無かったから。
学校につき、いそいそと教室に入る。
あれ?
いつもなら、佐藤が先に登校していて『光おはよぉ』とか、なんとか言ってくれるのに。
机に視線を持っていくがそこには誰もいない。
今日は俺が先に来たみたいだ。
(後でいじってやろ〜♪)
などと呑気なことを考えていた俺は自分の机を見て後悔することになるのだった。
「……え…?」
机にはたくさんの悪口が書かれている。
理解が追いつかない……
今までずっといじめまがいなことはされてきたが、こんな本格的ないじめはされたことがなかった。
(……とりあえず…残しておくか…)
証拠に使えるだろうと思って机をそのままにし、席に着く。
前々から嫌な予感はしていた。
が、まさか本当にやってくるなんて…
しかも佐藤がいない今日に…
(陰湿だなぁ)
なんて、反応が薄いからか多分やったであろう本人が話しかけに来た。
「…あんたさぁ、平気なフリしちゃってダッサ〜。
あ!逆にこういうことされて嬉しいの?wじゃあ、明日から楽しみにしててね♪」
「…はい…」
「……ッ!あと!佐藤凛くんに近づかないで!分かったね?フンっ」
「……」
嵐のように去っていったな……
というか佐藤が何か関係してるのか?
佐藤が好きとか?ライバルってこと?
そんなことをもんもんと考えていると『ぴゃー遅刻だぁー!』と騒ぎながら佐藤が入ってきた。
゛佐藤凛くんに近づかないで!゛
……
俺は、佐藤に話しかけるのを少し躊躇した。が、佐藤が俺に話しかける前に俺の方を向いて立ち止まっている。
そして、佐藤は俺のことを見た瞬間真顔になった。
な、なに?俺なんかやっちゃったかな…
……………違う…
俺の机を見て…だ。
佐藤は数秒固まっていたが、急に動き始め俺の机を拭いている。
「あ、佐藤…俺がやるからいいよ…ハンカチ汚れちゃうよ?」
『………………………。よしっ!光、おはよ!』
ほとんど拭き終わったからか、笑顔になって挨拶をされた。返すべきか……
(佐藤から話しかけてきたし…いいよね…)
そんなことを思いながらいつの間にか1時間目が始まりそうだ。
「おはよう」と返して、授業の用意を始めた。
4時間目の体育まで体力を温存するため、という言い訳をつくって寝ていたからかめちゃくちゃ元気です。
念願の4時間目。
体を動かすのは好きな方だ。
3時間目終わりのチャイムが鳴った途端に俺の脳は体育モードで、周りから見てもワクワクしているのが伝わるくらいにははしゃいでいる。
自分の鞄を探って体操着を探す……が、
「あ?あれ!?ない!なんでぇ!?」
『どうした?何かあったの?』
「……体操着忘れたかも…」
『あーwどんまいw』
「笑い事じゃないって!うぅぅぅ…もう少し探すから先に行ってて……」
『はいよー頑張って!』
ないとやばいんだ。
それは何故かって?
実を言うと、俺の親は平気でDVしてくるようなクズだ。
身体には無数の痛々しいアザがある。
今は肌寒い季節だからと言って、半袖になったら見えるところにまでアザをつけてきやがったのだ。
憎い……
そんなことを考えているひまはない、どこかにないか手当り次第探す…が、
(どこにもない…)
もう時間になってしまうと焦っていると、ふいにドアの方から声が聞こえた。
「あれ?もしかしてこれじゃな〜い?可哀想〜w」
そう言ってそいつが手に取ったのはゴミ箱に捨てられた俺の体操着。
名札に「小野光」としっかり書いてあった。
「な、なんで……いや、それ貸せよ。」
「は?これを着るつもり?汚ーい。はい、どうぞ〜後で洗ってあげるね♪」
こいつの通りに動いてはいけないと思い、咄嗟に貸せよ。と言ったものの…内心凄く着たくない。
「はぁ…」
と小さなため息を着いて、運動場へと向かった。
『遅いよー光〜。』
俺が来た途端目を輝かせて話しかけてくれる佐藤に温かみを感じながら、「ごめん!」と返す。
こんなに普通に返してもいいのだろうか。
゛佐藤凛くんに近づかないで!゛
朝に言われた言葉が頭の中をぐるぐるとさまよう。
いや!いいんだ!
と、自分を諭すように頭をブンブンと振る。
あんなに楽しみにしていた体育もさっきのことが気がかりで何も手につかなかった。
「はぁ…」
とまた小さくため息をつく。
(佐藤も俺の近くにいたら…嫌われちゃうかな…)
ふと、そんな言葉が頭に流れてきた。
……可能性はゼロではない。
できるだけ佐藤に近づかないようにしようかな…
「……ッ…。」
……視線が痛い……
俺が明らかに避けていると分かってから、佐藤の行動も変わった。
佐藤は、俺に話しかけるでもなくずっと見てくる。
『光さぁ、』
不意に佐藤が話しかけてきて、身体がビクッと跳ねる。
「…ごめ、ちょっと…トイレに…」
『待ってって!』
…ッ、
トイレに行くという言い訳を使って逃れようとしたものの、佐藤が俺の腕をグッと掴んだ。
痛いくらいに強く掴んでいて、簡単に逃れられない。
「は、離せよ…」
『光。俺のこと避けてるよね?何で?嫌いになっちゃったの?それとも、俺なんかしちゃったかな……だとしたらごめん!謝るから!』
……佐藤…ごめん…
違うんだけど……… 違うけど…、、、
佐藤から離れるためにはこれしかないと思った。
今のこの関係が崩れてもいい。
佐藤に迷惑がかかる方が嫌だから…
だから、
「…そうだよ…俺、お前のこと嫌いだったよ!いっつもくっついてきやがって!うぜぇんだよ!」
『光…』
言ってしまった…
完全に嫌われた…かな…楽しかったなぁ…
少しの間だったけど…
『光さ、俺のこと嫌いなんだよね?』
「…ッ。そ、そーだよ…」
『じゃあさ、何で泣いてんの?』
「え?……!?」
佐藤に言われて初めて気がついた。
俺の頬には透明な液体がつたっていく。いつの間にか泣いていた。
な、何で……これでいいのに…いいはずなのに…なんで泣いてんだよ…
『光。何があったの。』
佐藤の声はいつもの柔らかい声ではなく、真剣で、少し怒りも混じったようなそんな声だった。
少し怖い……
『光、何があったのか教えて?教えてくれるまで、この腕離さないから。』
う、それは困る…
俺は、諦めて今日あったことを白状した。
まぁ、そんな大事にはならないようなことばっかだけど……
なんて考えていると、
『はぁ……そんなことだろうと思ってた。』
「……え、気づいてたの?」
『うん。そりゃ気づくでしょ。あんな古典的なものいじめ以外に何がある。
それと…他に何かされてない?』
「何も…特に痛いものとかはされてないかな…」
『……そ。』
佐藤は素っ気ない返事をする。
気がついてたのか……
佐藤の手が俺の腕からスルスルと解けていく。
安心したみたいだ。
良かったと思い、佐藤に話しかけようとしたときいきなり佐藤がハグをしてきた。
佐藤は俺の肩に顔を押しつけて、俺がギリギリ聞こえるくらいの小さな声で
『よかった……』
と言った。
そんな佐藤が可愛いなと思いながら、俺は佐藤の背中に腕をまわし
ありがとう
と言葉にした。
『……光。今言うのもアレなんだけど……』
「ん?なに?」
『……、俺さ、光のこと……その…す、好き…なんだよね…』
「……え…えぇ!?」
衝撃の一言を突然口にされて1回思考が止まった。
まさか、両思いだったなんて……
嬉しすぎて思わず笑みがこぼれる。
目の前の佐藤はまだ返事がなくてソワソワしてるけど笑
「佐藤…いや、凛!俺も好きだった!」
『やっぱそうだよね……って、えぇえ!!?』
お笑いかのような反応を見せる凛はやっぱり面白くて可愛くて、好きだな……
俺……今めっちゃ幸せだ。
いじめのことで学校に行くのが少し怖かった。
学校に行くことを決心して、向かうと案の定いじめられ……かと思いきや。
「…さ、佐藤?」
廊下で、人だかりができている真ん中にはビショビショに濡れた凛がいた。
教室の中を少し覗くと、必死に弁解している女子生徒(俺をいじめてたやつ)がいる。
「…あ、ごめんね?佐藤くん…手が滑って…水がかかっちゃった…本当にごめん。わざとじゃないの。」
『……』
うわぁ……
めっちゃ猫を被って、凛に話しかけているざまはとても気持ち悪いものだ。
ふと、こちらに気がついた女子生徒が
「あ!」
と俺に指を指す。
みんなの視線が俺に集まる。気づいていなかったのか俺の周りにいた人たちは途端に離れていった。
「…こいつよ!こいつにかけてあげようかなって思ったから水を…」
『……れよ…』
「え?」
『お前…黙れよ』
瞬間、凛の声色が変わった。
あのときと同じ…少し怖い声。
明らかに混乱している女子生徒とそのガヤたち。
そんな周りを気にすることなく凛は言葉を続ける。
『黙れっつってんだよ!何?光には水をかけても問題ないとでも思ってんの?光をなんだと思ってんの?
人の中身も見ないくせに、勝手に決めつけてさ。その結果いじめまでして俺に被害は被るし。
お前らなんか、大っ嫌いだよ!』
「……ッ!」
いつの間にか、ガヤたちはいなくなっていて当の本人(女子生徒)は大っ嫌いがだいぶ響いたのか放心状態。
凛はクルっと後ろを向き、
『光!おはよ!』
と何事もなかったかのように満面の笑みで挨拶をした。
「うん、おはよぅ」
と返すと、凛が俺のおでこにキスを落とした。
突然のことで頭が働かなかったが、状況を理解した途端に顔が熱くなる。
「……ッ///!も、もう…学校では、やめてって//」
『え?学校じゃなかったらいいの?』
「……////お前、黙れよ!///」
『゛お前゛じゃなくてさ、゛凛゛って呼んでよ。』
「………やだ…みんないる時は恥ずかしいじゃん……」
『……スーー〜〜…光ぅ…そんな可愛いこと言うと抑えきれなくなっちゃうんだけど…///』
その後、凛の一撃必殺でいじめはなくなり今では元気に恋人ライフをおくっています。
ときどきガチで恥ずかしいこと平気でしてくるから厄介なんだよな……
『光ぅ〜』ギュ
「はぁ…もう!離れてって!///」
今の俺は多分幸せです。
そろそろ引っ越そうと思う。
凛と同居でもしようかな///えへっ
お久しぶりです。稲荷です。
受検が終わったんですよ!
合格発表はまだだけど…ドキドキです。
なんか思ってたより短く終わってしまって自分でもビックリです。
納得のいく作品には残念ながらならなかったので中途半端ですね。いろいろ…
すみません
そろそろお嬢様と執事を出してあげないと可哀想だなって思ってるので、チャットノベルも書こうかな?
まぁ、気長に待っててください。
それでは!
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