1話の続きみたいなお話です!
夜が明ける少し前。
拓実の部屋は、まだ深い闇に包まれている。カーテンの隙間から差し込む街灯の光が、ぼんやりと天井を照らしていた。
yn「……寝ないの?」
背中越しに声がして、拓実は振り向く。そこには、ソファに浅く腰掛けた奨の姿があった。スーツのジャケットを脱ぎ、シャツの袖をまくった彼は、普通の大人。
tk「寝られるわけないやろ。奨くんに久しぶりに会って……黙ってキスして……帰ってまうん?」
yn「帰らないよ」
即答だった。
少し意地悪に言ったつもりだったのに、まっすぐなその声に、拓実は胸の奥を揺らされる。
tk「……こういうの、初めてだから。大人の人が来るの」
yn「大人の人って」
奨が小さく笑う。拓実は顔を赤くしてそっぽを向いた。
yn「……でも、ここなら安全だね。奴らは知らない」
tk「ほんとにそれだけ?本当に、俺に会いに来ただけ?」
拓実の問いに、奨は一瞬、目を伏せた。だがその沈黙のあと、静かに近づいてくる。
yn「……違う。半分は“逃げてきた”。でも、もう半分は——」
手が、頬に触れた。
それは、銃を握る手じゃない。誰かを傷つける手じゃない。ただ、拓実を確かめるように、そっと包む手だった。
yn「拓実に触れたくて、声が聞きたくて……それが理由じゃ足りないかな?」
tk「……足りる」
声が震えて、喉の奥が熱くなる。
この人は嘘をつく。生きるために、隠しごとをする。だけど——拓実にだけは、まっすぐな言葉をくれる。
tk「抱いて」
ぽつりと、呟いた。
奨の目がわずかに見開かれ、すぐに熱を帯びる。
yn「……いいの?」
tk「うん、いいよ。怖いのは、あんたがいなくなることの方やし」
そして、静かに唇が重なった。
ゆっくり、丁寧に、今度こそ嘘のないやさしさで。
部屋の闇の中で、二人の温度だけが確かに溶け合っていた。
夜が明けても、彼らにはまだ、朝が来ない。
だけど、それでもいいと、そう思えた。
コメント
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続き嬉しいですありがとうございます😭 本当にリアルに想像できます、、最高です🫠あと文才ありすぎます!!フォロー失礼しますっ