____なあ、…こんな話知ってるか?
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彼女は美しかった。心も体も清純そのもの。家柄も良く、おまけに秀才と来たもんだ。
ただ、君は弱かった。だから御隠れになられた。
彼女は人を愛し、愛された。俺は…多分あんま好かれてなかったかも、
君は、死の間際俺にこう言ったんだ。
「貴方は、、ほんとに醜い。 」
酷いよな。俺は、君のことこんなに忘れられないのに。体中血だらけで、何を言い出すんだこいつはって思ったよ。最後を見届けたのは俺1人。その1人にそんなこと言う?
君もいきなりそんなこと言われたらそうなるだろ?でもな、多分彼女なりの考えがあったのかなぁ…とか思っちゃったりするんだよね。いやないかな?どうなんだろ。今となっちゃわからん。
彼女とはよく、夜通し見張りをしたよ。今でも、
彼女と夜話した事がすっげぇ鮮明に残ってんの。
「アシㇼパちゃんって、たまに容赦ないですよね。初めてリスを食べた時は、胸に来ました…」「杉本さんウザイです。」「最近、アイヌ料理にも慣れてきました。」「ええ?!雪って食べれたんですか?!」「私、杉本さんのこと嫌いです。」「今日もまた白石さんが…」
正直、すっごく楽しかった。彼女との夜は俺しか知らなくて、普段の彼女からは考えられないくらい、饒舌になるんだ。それが愛おしくて、毎日朝になるまで話した。沢山、話した。
長く伸ばした綺麗な髪を切りたいこと。
花の蜜を吸うのが好きなこと。
実は、母方の祖母がアイヌなこと。
昔は、お転婆で、よく庭を走ってたこと。
父と母が死んで、投手の座に着くのが嫌で、逃げ出してきたこと。
兄弟が沢山いること。
━━━━━━みんな知ってる。
みんな俺しか知らない。それが嬉しくて、その幸せが君の口からポンッと出たその度にその幸せを1人でかみ締めた。
でも、君は俺の事、、ただの暇つぶしにしか思ってないだろうね。君はほんとに酷いよ。俺の事こんなにぐちゃぐちゃにして、、、おかげで、今も忘れられなくて、君といった場所、君と食べたもの全てを回った。
道端で見つけた椿。嗚呼、もうそんな時期か。君は、椿が好きだったよね。今度、供えようか。
「杉本さんは、、私の事忘れないでね。」
一緒に酒を飲んだ時、あの時の些細な言葉が気になった。別に、俺みたいに戦うわけじゃないのに。まるで死期を悟ったような。。考えすぎかなって思ったけど、一応、その晩に話のネタとしてさりげなく振ってみた。
「人から忘れられるのが怖い。」
「誰でもいいから記憶に残りたい。」
多くは語ってくれなかった。その日はそれで終わった。それを語った数日後には、死んだよ。
記憶に残りたいだっけ?
だとしたら大成功だね。俺はもうきっと、君のこと一生忘れられない。
愛してる。
そう言って男は、椿を供えたんだ。
コメント
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あ、まって投手じゃなくて当主だ…………(誤字)
!? 金カム、!?