__なんだろ、ここ?
ひたすら歩いてたどり着いた先には、
青くて大きい建物があった。
グウウ~…
「お腹すいたなぁ…」
かれこれ2日はたっただろうか。
俺の家は父子家庭で、
父親は毎日のように夜遊びに行っては
酒につぶれて暴力を振るってきた。
でも、それが日常。
しょうがないこととして受け入れていた
「ん?なんだこれ、何かのボール?」
父親に家を追い出されたから
暇つぶしに近くの公園に行ってみることにした。
またいつもと同じ感じだったし
多分3時間もすれば帰っても問題ないはずだと
羽をのばしにきたのだ。
「あ、これもしかしてサッカーボールってやつ!?」
「うわぁ〜かっこいい!」
遠い過去に1度だけ目にしたことがあった。
確か手は使わずにボールを使うんだったかな
「よっ、と…」
「おぉできた、楽しい!」
それから俺は
どんどんサッカーにのめり込んでいった。
今まで嫌いなもの
ましてや好きな物なんてなかったのに
一人だけど、サッカーボールで遊ぶことだけが
唯一の楽しみになった。
「おい、そんな薄汚れたボール持ってんじゃねえよ。汚ぇな」
「捨てるからさっさと渡せ」
でもそんな楽しみでさえ、奪われてしまう
サッカーが出来なくなるのだけは嫌だった。
だから逃げた
このクソみたいな環境から
サッカーができないこの場所から
「こんな森みたいなとこになんの建物だろ…」
目の前に佇む巨大な青い箱には
何やら文字が書いてあるが、
あいにく義務教育を受けていないため全く読めない
「これ、入り口かな?」
「でももう動けない…少し休もう」
そうして俺は、寒さなんて気にせず
硬いコンクリートの上
サッカーボールを抱え眠りについた。
「んッ…あれ、ここは」
「あ、起きましたよ絵心さん」
そう口にした女性は
落ち着いた様子で近づいてきた
「はじめまして。私は帝襟 アンリです」
「アナタ、この建物の入り口で倒れていたのよ」
この綺麗な女性は帝襟さんと言うらしい。
相手が自己紹介をしたのだから
こちらもそれに応じるのが礼儀というやつだろう
「えっと、俺多分すごい遠くから来て」
「…あ!」
「あの、ボール!俺が持ってたサッカーボールってどこにありますか」
「これのことか?」
この人はさっき帝襟さんが呼んでいた
絵心という名前の人だろうか。
その手にのっているボールは俺が使ってたものとは
比べ物にならないほど綺麗に磨かれていた
「汚れてたから磨いておいた、ほら」
「あっ、ありがとうございます!」
「サッカー好きなんですか?」
「はい、ルールとか全然知らないですけど」
絵心さんも帝襟さんもいい人そうで良かった
でもそろそろ迷惑かもしれない
「お前名前は?」
「あ、名前ないんです。すみません」
「そうだったの、別に謝ることじゃないわ」
名前が無いとこういう時に困るんだよな
別に欲しいとも思わないけど不便ではある。
「まぁいいや、なんでこんなとこまで来た?ひとりか?」
「父親が何度もこのボール捨てようとしてきて」
「もうあそこじゃ、サッカーできないから」
そういうと、
絵心さんはニヤリと笑って俺の前に立った。
「じゃあここでサッカーするか?」
「…え?」
「ちょっと絵心さん!?」
サッカーができる?
「もう店員オーバーですよ」
「分かってるさ、冗談冗談」
誰にも邪魔されないで?
「ごめんなさい、変なこと言って」
「…やりたいです」
「ここでサッカーしたいです!!」
「だから、冗談だって言っただろうが」
「サッカーやりたいです!」
「絵心さんが変なこと言うから…!」
サッカーがしたい一心でなんとか説得するが
中々受け入れてもらえない。
でも言い出したのはそっちだよね、?
「期待させたのが悪いですよ」
「うるせえぞチビ」
「もうここは満員なんだよ」
「店員オーバーにしてまでお前を入れるメリットを言ってみろ」
ようやく希望が見えた気がした。
「俺、サッカー大好きです!」
絵心は呆れたと言わんばかりに顔を顰めた
「名前はなし、誕生日も不明。歳はおそらく16歳ぐらいだろうな。んで父子家庭か」
「もう…いいんですか?」
「こんだけやる気があればそれなりに育つだろ」
あれからひたすら駄々をこねる俺に
見兼ねた絵心さんは、このブルーロックという場所に
入ることを許してくれた
「だがお前は今のままじゃどのチームにぶち込んでもろくな活躍しねえだろうから、しばらく俺んとこで生活しろ」
「えっ面倒見てくれるんすか?」
「お前みたいなぶっ飛んでるやつ相手にしてたら俺が過労死する。」
「てことでよろしく、アンリちゃん」
「私ですか!?」
やっばいめっちゃワクワクする…!
「あとしばらく…ってか、そもそも枠がないから背番号はなしだ」
「えぇぇ〜!」
「しょうがないだろ。別に嫌がらせでやってる訳じゃない」
「入れてやっただけ感謝しろ」
それもそうだ。
とりあえず今はサッカーができればなんでもいい
「じゃあ明日から練習を始めていきましょうか」
コメント
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駄々こねてる男主くん想像したら鼻血が…←きも