テラーノベル
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「『魔法』が……残っている?」
そうぽつりとこぼすとフィルフリーは至極真面目な顔で僕の目をじっと見つめた。
まるで視線を吸い取られているようで落ち着かない。
「そう、これは紛れもなく『魔法』だよ」
どくりと音が鳴った。心臓の音だ。
もしもそれが本当ならば、僕は―――
―――僕はまた、この世界で「生きることができる」かもしれない。
「と言っても、俺は上手く出来ません。完璧に使いこなせるわけじゃない」
「………」
彼の眉がすこし下がる。そして困ったように笑みを浮かべた。
(使い、こなせない?これは、『魔法』って言ったはずじゃ……)
「本当はこれ、夜空の色を閉じ込められる魔法なんです。でも、御覧の通り、透き通っているでしょう?」
夜空の、色を。
「そうですね、まず、魔法の歴史から話すのがいいかもしれませんね」
彼は美しい声で歌うようにその歴史を語り始めた。
昔々、そのまた昔。
魔法は珍しいものではなかった。
人々にとってそれは
透き通った空や、川の流れのように、きれいなもので。
馬車やカバンのように、便利なもので。
水やパンのように、必要不可欠なもの。
そんな存在だった。
まるで息をするように、日常の中に溶け込んでいた。
ある街に、正義感が強く、魔法を器用に操る少年がいた。
彼が一度魔法を使えば、子供たちが笑い、小鳥が歌いだし、ミツバチが踊りだす。
町の中でもとても明るく、親切で、笑顔が大好きな少年だった。
ある日、町の中で大きな騒ぎがあった。
『魔王が目を覚ました』と言うのだ。
台地が荒れ、作物も取れなくなり、感染症が蔓延した。
町からは活気と笑顔が消えた。
少年は見た。
病に苦しむ男の人を。
お腹を空かせて泣いている子供たちを
争いあっている大人たちを。
少年は思った。
魔王を倒さなければならない、と。
◇◆◇◆
魔王は、倒された。
他ならぬ、少年の手によって。
少年の魔法によって。
少年は眠りにつき、人々は日々の忙しさにのまれ、魔法の使い方、どんなものだったのかも、少年でさえもついには忘れてしまったのだ。
「魔法がない世界だとどう使っていいのかわからない。アーシュ様もはいきなり曲芸をしろって言われても出来ないでしょう?」
彼――フィルフリーが口にしたのは昔から離されている物語の有名な一節だ。
タイトルは確か、『勇者の冒険記』だったはずだ。
しかし、不思議なことに本に書かれていなかったことまで彼は語っていた。
彼が物語通り口にしたのは初めの一節だけ。
文字を覚えたてのあの頃、何度も読んでいたからわかる。あの物語は『勇者』すなわち『少年』視点で書かれていない。
当然、少年の心情なぞ、書かれているわけがない。
(どこでその情報を……?)
作者は不明。しかし物語からして、「少年」が書いていないことは確かだ。
今もなお、眠っているといわれているので「少年」自身がほかに本を書けるはずがない。
『魔法』がないこの時代に彼が知っているとも思えない。
(もしかして、「勇者」にあったことがあるのか?……どうやって?)
「………」
「有名な話ですよ、この国ではわからないけど。少なくとも僕の国では昔から語られている」
目を細めて静かに言った。まるで、昔を懐かしむように。
そうなんですね、というつもりだった。
しかし、僕の口からは予想外の言葉が飛び出す。
「フィルフリー殿は勇者に、会ったことがあるんですか?」
するとわずかに目を見開いた。透き通った青緑色の目が揺れる。
「さぁ、どうだろうね?」
柔和に微笑んだその顔が一瞬不気味に映った。
「少し話過ぎましたね。じゃあ俺はここでお暇します。またねアーシュ様」
そういって彼はパーティー会場のほうへと去っていった。
いつの間にか彼の『魔法』も消えていた。
絶対に魔法をつかみたい。
すべては僕が愛されるために。
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ぬゆㄘゃん✎ܚ@中1絵師
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コメント
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読んだ読んだ〜!!🥺💕 第3話で一気に世界観が深まったね…! フィルフリーが語る“勇者の冒険記”に載ってない魔王討伐の話、なんで知ってるんだろう…めっちゃ気になる!!「さぁ、どうだろうね?」の微笑みが不気味でゾクッとしたよ…😭💦 そして何より最後の「すべては僕がみんなに愛されるために」が切なくてアーシュの生きる理由を感じた…! 次も絶対読むからね!!🌸✨