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冷えた柵に手をかける。
鉄だ、当たり前だ。
柵の向こう側は、案外足場があった。
だが柵を掴まないとすぐに真っ逆さまになるだろう。
風が吹く。
冬らしい冷たい風だ。
雪は降っていない、まだ冬になったばかりだ。
空が赤く染まる。
今日はやけにカラスが多い。
呼吸をするだけで白い息が大量に出てくる。
疲れた。
この世界で最後だ。
以前の自分だったら、この夕焼けも写真にしていただろう。
そんな余裕は無い。
何に疲れたのかも分からない。
どうしてここに来たのかも分からない。
元々居場所なんてなかった。
どこにも。
白い息が視界に入る。
邪魔くさい。
息をするだけで自分を嫌う誰かが現れる。
『俺は門矢士になれているか。』
疑問符ばかりが頭に浮かぶ。
記憶を失った自分に何ができる。
自分が存在するだけで世界が壊れる。
俺は破壊者だ。
違う。
それを否定したかった。
肯定するしかなかった。
否定できる部分がどこにもなかった。
疲れた。
未練?
作ることさえ、許されない。
到底許されることではない。
結局、自分の旅を終わらせられるのは自分だけだった。
自分にしか出来なかった。
後悔なんてしてはいけない。
世界を通りすがる度に自分を否定された。
案外慣れればどうって事ないと
そう思っていた。
疲れた。
平気なフリをしていても
いつかボロが出る。
下を見ても、何も思えない。
こういう運命なのだと悟った。
手が震える。
そろそろ潮時だ。
今にも離れようとしている手は、赤く感覚がない。
まだ生きているのだと
まだ息があるのだと
そういう嫌悪感が
どうしても残る。
疲れた。
死に場所を見つける旅は、
何処までもくだらなかった。
自分に仲間など似合わない。
いつしか誰かに
「友情なんて似合わない」
と投げ捨てた記憶がある。
どちらかと言うと
それは自分の方だ。
仲間も友情も家族も自分には似合わない。
自分もお前らも
全部脚本の中で踊らされていたに過ぎない。
それに気付かなかった
いつ気付いたかなんて覚えていない
登場人物の中で
「仲間」という分類に区別されていたに過ぎない。
俺たちは仲間じゃない。
ただ偶然知り合っただけの赤の他人だ。
これでいい。
これで良かった。
これいいんだ。
これで良かったんだ。
存在していても何もいい事なんてない。
待っていてもその先にあるのは地獄だ。
ただ自分を否定されるだけの日々が始まる。
これで最後だ。
決心は着いた。
柵から両手が離れる感覚がする。
そろそろ限界だ。
もう潮時だ。
これが運命だ。
この綺麗な陽をフレームに収めたかった。
<続いてのニュースです。>
<昨日、○○ビルの屋上で飛び降りたとされる>
<身元不明の男性の死体が発見されました。>
<警察によりますと、>
<身元調査を行っている最中ですが、>
<どの情報にも身元が合致しないとの事です。>
<また、最新型であるDNA型鑑定を行いましたが>
<未だ身元が不明との事です。>
<続いてのニュースです。>
─────────────
【身元不明遺体者】
氏名:不明
年齢:推定20〜30歳
性別:男性
身長:推定180cm〜185cm
〈遺体の状態〉
・○○ビルの屋上にて遺体の物と見られる指紋を発見
・飛び降りだと推定、調査
・頭部、及び全身にかけて複雑骨折
・内臓破裂による即死だと判定
・両手の皮膚が赤く凍っている状態
・行方不明者名簿の情報に合致なし
─────────────
「この前の遺体、いくら調査しても身元不明だってよ。」
「マジか、もう家族とかが他界してるとか?」
「それでも検査すればどういう家族だったのかは分かるだろ。名簿とか見ても、何も情報がないんだってよ。」
「DNAとかでもか?」
「だからそう言ってるだろ、バカかお前は。」
「あはは…。でもそれは奇妙だな。まるで別の世界から来たみたいじゃないか。」
「別の世界?」
「知らないか?この世界とは似ているようでどこか違う、所謂『パラレルワールド』ってやつだよ。そっから来たんじゃねぇかなって。」
「はぁ……真面目に聞いた俺が馬鹿だった。大体、そんなファンタジーな話誰が信じるかよ。お前は夢見すぎだ。」
「信じれば存在するさ、俺も行きてぇなーパラレルワールド!」
「はいはい勝手にやってろ。」
「おいお前らそろそろ休憩終わるぞ。」
「あぁわりぃわりぃ、そろそろ行くわ。」
「どっかのバカがくだらねぇ話するから貴重な休み時間が潰れたじゃねぇか。」
「誰がバカだこの野郎!!」
「喧嘩するなアホども。」
終。