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声に出していないセリフ ○○
声に出しているセリフ 「○○」
誰が話しているかは出来る限り分かるようにします。
ガラッ。
今日は週の終わりの金曜日。気温は2°で、口から出る息が白く染まって空気に溶けていくくらい寒い朝でも、この教室は騒がしい。
扉を開けて自分の席へ向かう途中、どうしても目に入る。
大人しく本を読んでいる顔が。
よく分からないが、とても分厚い本を読んでいるようだ。思わず話しかけそうになる自分にあれから何度目か分からない溜息をつく。
そうか、もうあれから、3ヶ月も経つのか。
きっかけは、とても些細なことだった。
2人で話をしている時に、よく空を見ていることが多くて、少し苛ついて強く当たってしまったんだ。
ずっと見ていれば、様子が少しおかしいことには当然気付けていたけど、生憎その日は虫の居所が悪かった。まぁ単なる八つ当たりと同じだ。
後悔した時にはもう遅くて、喧嘩になってしまった。その後暫くして一度話したけれど、上手く話せなくて結局喧嘩別れのままになっている。
クラスの皆は僕たちが喧嘩したことを珍しく理解しているらしく、無駄に口を挟んでこない。
お互いに無理をする部分があるから、支え合っていこうねと話していたのに、僕は本当に馬鹿だ。
「おはよ、夏樹」「あ、夏樹だおはよー」
「ん、おはよ」
毎日飽きないで挨拶を繰り返して、同じような生活が続く。
-「夏樹、おはよ」
そんな声が聴こえた気がして、後ろを振り向いてみるけど、そんな訳がない。
何勝手に期待しているんだろう、自分は。
「おは」
そう端的に声を掛けてきたのは晴仁だ。
「おはよ」
また挨拶を返し、今日も読書の時間が近付いてくる。
ロッカーから2冊の本を取り出し、どちらを読むか迷う。片方は自分で買った本。もう片方は、喧嘩した日の前に貸してくれた本だ。早く返さなきゃいけないのに、どうしても話しかけられない。
結局貸してもらった本を早く読み終わって返すことに決め、丁度時間が来たのでページを開く。
時間は意外にも早く過ぎ、暇な授業時間を過ごす。
窓際の席だから、外を眺めていれば終わる…んだけど、どうしてもペアワークの際はそういう訳にもいかない。ペアの後ろに揺れる髪が視界に入り、一度目を閉じてそれを消す。こういう時が嫌なんだ。
まぁそんな感じで学校も終わり、あとは…最近読んでいる名前で呼べば、【地獄の一時間】だ。
まぁ所謂生徒会。なんで地獄かというと、同じ委員会だから。この学校はクラスの委員同士で隣に座らなければいけないという決まりがある。どこの学校もそうなのだろうか?
くだらない帰りの挨拶も終わり、指定されている教室に向かうと、既に座っていた。ここでも変わらず本を読んでいる。
まぁ考えるのすらキツイから簡単に言うと心を無にして過ごした。この時間があるとその日はどっと疲れる。
家に帰っても誰もいないから、必要最低限のことすらろくにやらないままベッドに倒れ込む。
そのまま石のように固まって過ごしているとあっという間に夜になる。流石にシャワーくらい浴びなければ。
もう動けない。今度こそ動かなくて済む。
眠れないまま朝を待っている間、後悔が疲れきった全身を襲う。
「…いっそ、僕のことを忘れてくれたらいいのに。」
そう呟いて、僕はまた考えるのをやめた。