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いるま「」
LAN『』
『昨日人を殺したんだ』
LANはそう言っていた
梅雨時ずぶ濡れのまま部屋の前で泣いていた
夏が始まったばかりと言うのに
LANは酷く震えていた
そんな話で始まる あの夏の日の記憶だ
『殺したのは隣の席の
いつも虐めてくるアイツ』
『もう嫌になって肩を突き飛ばして
打ち所が悪かったんだ』
『もうここにはいられないと思うし
どっか遠いところで死んで来るよ』
そんなLANに俺は言った
「それじゃ俺も連れて行って」
財布を持って ナイフを持って
携帯ゲームもカバンに詰めて
要らないモノは全部「壊して行こう」
“あの写真”も“あの日記”も
『今となっちゃもう要らないさ』
『人殺しと』
「ダメ人間の」
「LANと俺の旅だ」
そして俺らは逃げ出した
この狭い狭いこの世界から
家族もクラスの奴らも何もかも全部捨てて
LANと2人で!
遠い遠い誰もいないところで2人で死のうよ
もうこの世界に価値など無いよ
人殺しなんてそこら中湧いてるじゃんか!
「LANは何も悪く無いよ」
結局俺ら誰にも愛された事など無かったんだ
そんな嫌な共通点で
俺らは簡単に信じ合って来た
LANの手を握った時
微かな震えも既に無くなっていて
誰にも縛られないて2人線路の上を歩いた
金を盗んで 2人で逃げて
今更怖いモノは俺らには無かったんだ
額の汗も 落ちたメガネも
『今となっちゃどうでもいいさ』
「あぶれ者の」
「『小さな逃避行の旅だ!』」
「いつか夢見た優しくて
誰にも好かれる主人公なら
汚くなった俺達も見捨てずに
ちゃんと救ってくれるのかな」
『そんな夢なら捨てたよだって現実を見ろよ?
“シアワセ”の四文字なんて無かった
今までの人生で思い知ったじゃないか!』
『自分は何も悪くねぇと
誰もがきっと思ってる』
宛てもなく彷徨う蝉の群れに
水も無くなり揺れ出す視界に
迫り来る鬼達の怒号に
馬鹿みたいにはしゃぎ合い
ふと君はナイフを取った
『いるまが今までそばに居たから
ここまで来れたんだ
だからもういいよ もういいよ』
『死ぬのは俺1人で良いよ!』
*****
『いるま、お前は生きて
生きて生きて生きて……そして死ね』
ザンッ!
*****
そしてLANは首を斬った
まるで何かの映画のワンシーンだ
白昼夢を見ている気がした
気付けば俺は捕まって
君がどこにも見つからなくって
君だけがどこにも居なくって
そして時は過ぎて行った
ただ暑い暑い日が過ぎていった
家族もクラスの奴らも居るのに
何故かLANだけがどこにも居ない!
あの夏の日を思い出す
俺は今も今でも歌ってる
君をずっと探しているんだ
君に言いたい事があるんだ
9月の終わりにくしゃみして
6月の匂いを繰り返す
君の笑顔は君の無邪気さは
頭の中を飽和している
誰も何も悪く無いよ
君は何も悪くは無いから
「もういいよ投げ出してしまおう」
そう言って欲しかったのだろう
なぁ!?