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■事務所様、ご本人様、関係者様とは全く関係ございません。
□onlr
□知り合いがいない場所で発情期が来たlr
□この二人…可愛いですよね…。素の自分も愛してほしい on 可愛い。
ローレンは道のど真ん中で崩れ落ちる。
呼吸が荒くなり、身体が熱くなり、視界が滲んでいく。
発情期が来たのだと、すぐに理解した。
(周期が狂った…何で…?ここ数日で色々起きたからか?)
周りを見回しても知り合いは誰もいない。
好奇心、嫌悪感、下心…様々な視線が向けられて居心地が悪いのに上手く動けない。
(今は直しているとはいえ、一度改造したチョーカー…二人に通知は行くのか…?)
実はローレンが鬼ヶ谷、柊を協力者に選んだのは2カ月程前のことだった。
Ωの発情期は3カ月に一度、つまり、彼らを協力者にしてから発情期を迎えたのは今日が初めてなのだ。
(これで通知が行かなかったらそれはもう自業自得、自己責任…仕方ない。誰かに犯されても項を噛まれなければいい…)
じりじりと歩み寄ってくる知らない足音。
聞いたことのある足音は聞こえてこない。
(例え通知が行ってたとしても、そんなすぐに来れるはず無いんだよな…そりゃそうだわ…)
さすがに事務所が異なる二人に常に傍にいてくれというのは無理があると分かっていた。
しかし、それでも同じ事務所の者を協力者に選びたくはなかった。
(でも…一人くらいは…頼んでおいた方が良かったか…?)
どんなに後悔しても遅い。
完全にアウェイのこの状況で、身体も上手く動かない情報で、ローレンは既に諦めていた。
(知らない奴に犯されたら…二人を…協力者から外そう…それがいい…)
虚ろな瞳で、自分の体を抱きしめた状態で地面を見つめる。
そこに見知らぬαの手が迫る。
「そいつに何か用ですか~?おにいさ~ん?」
聞き覚えのある顔にゆっくりと顔を上げる。
「チョーカーに表示されてる数字が見えねぇんか?視力悪すぎるから眼鏡買ってどうぞ~?」
「テン…」
そこにはローレンに迫っていた手を掴む鬼ヶ谷の姿があった。
彼は口元だけは笑っていた。
瞳は鋭く、目の前にいた見知らぬαを射殺すかのように見ている。
αの男はその瞳を見ると短い悲鳴をあげてその場から逃げて行く。
「立てる?」
「…通知、行ってた?」
「うん。だから来たんだけど。ツルギさんには俺が行くって伝えてあるよ」
鬼ヶ谷はローレンの手を掴み、そのまま上に引き上げて横に抱く。
所謂『お姫様抱っこ』というものにローレンが慌てだす。
「………っ…、この抱き方マ!?」
「こんな状況のΩ歩かせらんないでしょ。っていうか歩かせたら足遅くてイラつきそう」
「…流石に短気すぎない?」
「相手がローレンだからかも?」
「何で協力者OKしてくれた…?」
鬼ヶ谷は周囲を威圧しながら歩き続け、とあるホテルの前で立ち止まる。
発情期を迎えたΩを連れたαが訪れるホテルなんて分かり切っているのだが。
鬼ヶ谷は適当に部屋を選ぶとローレンを抱き上げたまま部屋へと向かった。
・
・
・
ベッドに降ろされたローレンは未だ立った状態で自分を見下ろしてくる鬼ヶ谷を見つめる。
「……あんまり、発情期に引っ張られてはない?」
「全然ってわけではないけど多少余裕はあるね。まぁ、鬼だからじゃね?」
「そっか…鬼ヶ谷選んで正解だったかも…」
「ツルギさんは知らんよ。あの人は一般人やからがっつり効くかもな」
そう言いながらベッドに乗り、ローレンに覆い被さる。
多少余裕はあっても彼はαであり協力者なのだ。
ローレンはこれから彼に抱かれることを察し、ぎゅっと目を瞑り覚悟を決める。
「…?」
しかし、いつまで経っても鬼ヶ谷が手を出してくる様子は無い。
一体何事かと思い目を開ければ、鬼ヶ谷の顔はすぐ近くまで迫っており、自分を見つめている。
驚き一瞬パニックになりかけたが、あるものに気付いてすぐに冷静さを取り戻す。
「テン…お前…」
鬼ヶ谷の頬を汗が伝う。
まるで、襲ってくる欲に抗うように、耐えているかのように。
「……てんの」
「ん?」
ぼそっと鬼ヶ谷が何か言うが、聞き取ることが出来ない。
ローレンの不思議そうな表情に伝わってないことを察したのか鬼ヶ谷は面倒くさいといった表情を浮かべる。
「このまま抱かれてもいいのかって言ってんの」
「え」
「このままここであーしに抱かれてもいいのかって言ってんの!」
二人の間に訪れる静寂。
先にそれを崩したのはローレンの笑い声だった。
「いや、何でギャル?ふっ…ははっ、はははっ…!」
「誰かさんが緊張してるからでしょうがよ」
「んふふふっ…ふふっ…んふふふ~っ…!!」
「いや笑い方赤ちゃん」
きっと抱かれたくないと言えば目の前の男は耐え続けるのだろう。
理性を揺さぶられる中、ローレンの傍を離れないつもりなのだろう。
「テンさぁ、俺のこと、抱けんの?」
「あン?」
「知り合いだから協力者になってくれただけで、俺のこと抱くのは御免なんじゃないのかって言ってんの」
ギャルの言い方で返された鬼ヶ谷はきょとんとした表情を見せた後、苦笑する。
「おいおい、本当に発情期か~?なんか余裕やんか」
「しんどいよ。もうなんか、テンが欲しくて欲しくて仕方ない感じよ今」
「ははは!口説き文句に色気無さ過ぎなんだけど!?」
鬼ヶ谷は笑いながらローレンの顔に触れ、目尻に優しく口付ける。
「ちゃんとそれ込みで協力者受けたに決まってるでしょ」
その言葉を聞いたローレンの瞳がゆっくりと蕩けていく。
元々、相手に無理強いするつもりはなかった。
発情期を迎えた時に、今回のように助けてくれさえすればそれで良いと思っていた。
一人で耐える時間など、今まで何度も過ごしたのだから。
「テン…キスはしないで」
「はぁ?え、何?そういう乙女ところあった?」
「違うよ。お前のためにしないでおけって言ってんの」
「俺のため?」
「うん。お前の番に、それは残しておいてあげてねって」
再び鬼ヶ谷がきょとんとした表情を浮かべる。
ファーストキスかどうかなど知らないくせに、鬼ではあれどバーチャルスラムで暮らしている身なのだから残っていない可能性の方が高くないだろうか、と。
しかし、あまりにも、
あまりにもローレンが真剣な瞳で言うものだから、鬼ヶ谷は茶化すことができなかった。
真相は如何であれ、鬼ヶ谷はローレンに合わせてやることにして今度は鼻に口付ける。
「りょーかい」
ローレンが安心したように微笑み、鬼ヶ谷の首に腕を回す。
鬼ヶ谷はそれに応えるように更に距離を詰め、潰さないように抱き締める。
(今はしないでやるから、俺を番に選んだその時は沢山キスさせてな)
そんなことを思いながら。