テラーノベル
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“太陽”以上にしっくり来る比喩はないと思う。
どんな時もその場を盛り上げようと、明るく面白く振る舞い周囲を照らしている。
それは公共電波に乗った場でもしかり、最近はメンバーしかいないようなプライベートの場でさえも。
誰彼構わず振りまく笑顔で、元気づけられる人も多いことだろう。
若井滉斗は紛れもなく、太陽と表すにふさわしい人間だった。
***
ふらふらと、覚束ない足取りで楽屋へ向かう若井。その背中から目を離さないよう後ろから着いていく。
たぶん、傍から見れば歩く姿は普段となんら変わりないように見えるだろう。だがもう何年も同じ時を過ごし、互いの性格まですべて知り尽くした自分には分かる。今コイツは、気を抜けばすぐに体が崩れ落ちてしまいそうな中、気を張り詰めて平静を装っている。本当はすぐにでもその背を支えてやりたいが、本人がなにも言わず、ましてや周囲の目もある手前、こうして見守ることしか出来ないし、おそらく若井もそれを望んでいるのだろうと思う。
楽屋までおよそ数メートル。一番前を歩いていた藤澤が先に楽屋の扉を開け、自分が入るより先に若井を中へ通す。それを確認して、僕は傍らにいたスタッフに「しばらく入ってくるな」と目線だけで訴える。その意図が伝わったのだろう、割と付き合いの長い彼は視線を受け取ったあと、神妙な顔をして頷いた。スタッフがその場から離れていったのを見届け、自身も楽屋に入って後ろ手に扉を閉めた時だった。
かくん、と目の前の膝が折れた。
「若井っ」
膝から崩れ落ちた若井をとっさに藤澤が前から受け止め、自身は後ろから支える。前後から支えられながらも膝をついてしまった若井は、後ろからじゃ顔は見えないが突然のことに混乱しているようだった。
「大丈夫?」
藤澤が、若井の顔をのぞきこんで尋ねる。その眉はへにょりと下がり、瞳や声、表情すべてにありったけの心配が浮かんでいた。
「あ、うん……。ごめん、なんか、力入んなくて」
うまく状況を処理できていないのだろう、覇気のない声で答えた若井は、しかし声音だけでへらへらと笑っているのが想像に難くなかった。そしてあろうことか、震える足で自力で立とうとしたものだから、その両脇に腕を入れて体を思いきり引き上げる。
「うおっ、」
「そんなんで立てるわけないでしょ。涼ちゃん、一旦コイツ座らせよう」
「了解」
若井の右腕を自身の肩に回し、反対側は藤澤に任せる。つい先ほどの収録中みたいな形で、近くのソファまで若井を運び座らせる。困った顔で尚も立ちあがろうとする若井に動くなと釘を刺し、自身は彼の荷物を、藤澤は着替えをまとめる。
「若井の服、これで合ってる?」
「あ、うん。ありがとう……」
藤澤から着替えを受け取った若井は、戸惑いながらも礼を返す。
「ごめん、なんかいろいろやってもらっちゃってるけど、ちょっと休んだら自分で動けるから……っうわ!?」
「気づかないだけで思ったより体力削られてると思うから、そのまま大人しくしててよ」
まとめた鞄を半ば投げるように渡し、素っ頓狂な声を出しながら慌てて受け取った若井に何度目か分からない忠告をすれば、鞄を抱えた若井はしおらしくもやっと頷いた。
逆バンジー。
メンバーの誰よりも高所恐怖症の若井がそんなものに挑戦することになったのは、誰に仕組まれるでもない偶然の結果だった。しかし、罰ゲーム挑戦者が決まるまでの流れ、動機、番組上の展開。それらを鑑みれば、若井が飛んだのはテレビ的には成功だった。そう、テレビ的には。
けれど、と緩慢な動作で着替えを進める若井を見て思う。
彼のことを大切に思う一メンバーとしては、どうしても笑いより心配が勝ってしまう。それはきっと、若井の勇姿を見て泣いてしまい、いまは彼の隣に座って見守るように眺めている藤澤も同じで。心配と、勇気を出してやり遂げた姿に賛辞を送りたい気持ちとが混在している。
そして。
ビジネスパートナーも、十年以上もの付き合いになる親友という関係をも超えた、恋人という位置の自分としては。
「若井、今日の仕事これで終わりだよね?」
ソファでなにやら話しているふたりに近づき、疑問符をつけながらも確信めいた口調で問う。頷いた若井を見て、腕時計を見て、ふたたび若井を見る。
「じゃあこのまま直帰ね。車は呼んであるから、今日はもう家で休みな」
「……ふたりは?」
「俺は打ち合わせが一本残ってるし、涼ちゃんもあったよね?」
「うん、そろそろ移動しないと」
ちらりと壁にかかった時計を確認した藤澤がいそいそと着替えを始めたのに倣い、自身もこのあと行う打ち合わせの資料を確認する。
「じゃあそろそろ行くね。元貴は打ち合わせ何時から?」
「十分後ぐらいにここで。ちょうど局内に一緒に打ち合わせするスタッフいるから」
「そっか、了解」
ばたばたと、自身の荷物をまとめた藤澤は少し時間が押しているのか、足早に楽屋の入り口に向かう。
「じゃ、ふたりともお疲れさま! 若井、ちゃんとゆっくり休んでね」
「うん。涼ちゃんありがと、お疲れさま」
「お疲れ。明日、十時にスタジオね」
「はーい」
手を振って楽屋を出て行った藤澤を、僕と若井も手を振って見送る。ちら、と隣を見れば若井はいつもと同じ明るい笑みを浮かべていた。
「じゃあ若井、準備終わったら行こ。下まで送る」
「えっ? いやいいよ、元貴打ち合わせあるでしょ」
「いまのおまえをひとりにするほうが心配」
「えー、信用ないなあ」
いつもの、少しおちゃらける時の口調で笑った若井の耳に、顔を寄せる。
「仕事終わったら、家行くから」
不意打ちの行動に驚いたのか、息を呑んだ若井は目を丸くしながらも頷いた。
「ほら、立てる?」
「あ、うん――わっ」
ぐい、と手を引っ張って立ち上がらせれば、少しよろけながらもしっかりと地に足をつけて立てている。内心安堵し、「なんか甲斐甲斐しいね」と笑って軽口を叩くその腕を引いて歩き出した。
太陽の権化のような男は、どんな時もそのスタンスを変えることはない。いや、変えようとしない。波を作らないのが彼なりのやり方だといつしか言っていたし、バンド内のキャラとしてもそれがうまくハマっている。
けれど、一メンバーでも親友でもなく、この世でたったひとりの恋人としては。
――どうにも、釈然としないものがある。
「元貴お疲れ、おかえり」
「うん、ただいま」
玄関で待ち構えていたらしい若井は、メンバー内、もしくはふたりきりでいる時にしか見せない緩んだ笑みを浮かべて迎えてくれた。そしてさも当然のように僕の鞄を受け取ろうとするものだから、それをスルーして我が物顔のようにフローリングに足を踏み入れる。
「打ち合わせは無事に終わったの?」
「うん、滞りなくね。それより中で待っててくれてもよかったのに」
「だって、元貴疲れてるだろうし、ちゃんと迎えたくてさ」
疲れてるのはどっちだよ、と内心ツッコミを入れてリビングへ向かう。いや、確かに自分も疲れてはいるが、体張って逆バンジーしてさっきまで立つことさえままらなかった人間に言われたくはない。
「体はどう? おかしいとことかない?」
「あ、うん。ちょっと足に力入んないけど、普通に歩けるし」
心配かけてごめん、とへらりと笑う若井にどこかもやっとした感覚を覚えながらも、すっかり通い慣れたリビングの扉を開ければ。
「――え?」
部屋の真ん中に鎮座している、ギタースタンドとそこにかけられたギター。犯人を振り返れば、たったいまリビングの扉を閉めた彼はあからさまに「やばい」という表情になる。
「あ、元貴、これは……」
「休んでろって言わなかった?」
「ご、ごめんて! なんか手持ち無沙汰で、つい……」
真面目すぎる。
若井のある意味才能とも呼べるその性質は尊敬すべき点だが、時折心配にもなる。まさに、いまのように。
「あ、そうだ。元貴、晩ご飯まだ?」
「え? うん、まだだけど」
「トマトパスタあるよ、冷凍だけどめっちゃうまいやつ」
そうやって胃袋を掴んで話を逸らそうとするところは納得いかないが、好物につられて一気に胃が空腹を訴えてきたのは事実なので目を瞑ることにする。
「じゃあ、食べる」
「了解。俺準備しとくから、先お風呂入ってきなよ」
もうなにを言ってもコイツに休む気はないということを悟り、人知れずため息を吐いた。
「ん、めっちゃうまい!」
「でしょ? よかったあ」
ダイニングテーブルを挟んで向かい側に座り、嬉しそうに微笑む若井に不覚にもきゅんとしてしまい、照れ隠しでフォークに絡めた大きめの一口を口に入れる。
「あ、元貴、ソースついてる」
そう言うや否や、こちらがなにか反応する前に若井は指で僕の口元に触れ、トマトソースをすくい取った。しかし、細くて長い指が触れた瞬間。そして、すくい取ったソースをそのまま自身の口に運ぶ瞬間。
その指が、震えているように見えた。
いつもなら、恋人の口についたソースを拭って食べるなんて気障ったらしい行動にいちいち恥ずかしがっているところだが、いまはそれどころじゃなかった。
「若井――」
「あ、そうだ。コーラもあるんだけど、いま飲む?」
コイツは、分かっていてやってるのかたまたまなのか。
心配する僕の声を遮った若井は、返事も聞かずにキッチンに回って冷蔵庫からコーラを取り出す。
「いつか元貴が飲むかなと思って買い置きしててさ。新しいやつだから炭酸もちゃんと入ってるし」
そばまで寄ってきて、はい、と僕に向けてペットボトルのコーラを差し出そうとした時だった。
「あ、」
する、と若井の手から滑り落ちたコーラが、重い音を立てて床に落ちる。
「わ、ごめんっ、落とした」
そのまま慌てて拾おうとした若井の手首を、とっさにぱしっと掴む。
ほそ、と若干驚いたのも束の間、目の前の長い指が小刻みに震えているのがしっかりと見え、その振動は手首にまで伝わってきていた。
「も、元貴?」
「この手、どうしたの」
「あ、えと、さっきからちょっと震え止まんないんだけど、多分逆バンジーで極度の緊張状態にあったからだと思うし、時間が経てば治ると思うから大丈夫だよ」
ごめん、情けないよね。
そう言ってまた、へらりと笑った。
“太陽”以上にしっくり来る比喩が見つからないひと。
いつでもどこでも、気を許していいはずの空間ですら、周囲を気遣い笑って過ごす。たとえ自分が、どんな状況にあろうとも。
日没することを知らないこの太陽に、自分は、周りは、何度救われたか分からない。
でも。
へらりと笑う若井の、明らかに無理をして取り繕っていることが分かるその表情に、己の中のなにかがぷちん、と切れた。
かたん、と音を立てて椅子から立ち上がる。
「もと――」
ぐっと一歩詰め寄り、至近距離にある戸惑った顔を見上げる。それに気圧されたのか、若井は埋まった分の距離を取るためにじり、と一歩後ずさった。
「な、なに……っぁ、」
若井がまた一歩後ずさった瞬間、力が抜けたようにその膝が抜けた。
「若井っ」
掴んだままの手首を精一杯引っ張る。
先ほどと似たような状況、しかし今回は支えられるのは自分ひとり、加えて若井は後ろに倒れようとしていて、いくら体幹があると言っても成人男性の体重を支えることは不可能で。
そのまま、尻餅をつく若井に覆い被さるように倒れ込んだ。
「ごめんっ、若井、大丈夫?」
「……怒ってる?」
「えっ?」
心配の声をかけたはずが、どこか怯えたような表情で問われ、思わず若井を凝視する。その眉は八の字に下がり、瞳はどこか迷子のように彷徨っていた。
「さっき……楽屋に帰った時から、ちょっと怒ってるように見えたから。ごめん、気に障るようなことしちゃってたら直すから、教えて?」
日は必ず昇るし、逆を言えば必ず落ちる。
日中燦々と地球を照らす太陽も、一日に一回、影の下にその身を隠すことが決まっている。
けれど、目の前にいる日没を知らないこの太陽は、この期に及んでも沈もうとしなかった。
まるで、二十四時間、日が沈まない白夜のように。
その証拠に、目は明らかに傷ついた色をしているのに、口角だけは無理やり持ち上げようとしている。
「――分かった」
むにっ、とその両頬を思いきり引っ張る。
「いっ!? いひゃいいひゃい!」
「そんなに言うなら、直してほしいとこ教えてあげる」
痛みなのか、違う理由か、涙の溜まった黒い瞳を捕まえて、じっと見つめる。
「俺が直してほしいのはその顔」
「へ……? はお?」
「いっつも笑っててさ、俺も涼ちゃんも、周りのみんなもその笑顔にはいっぱい助けられてるし、ずっと元気でふざけてるキャラもメディア的にはハマってる。でもおまえ、自分が辛くても笑うでしょ。今日もそう。絶対怖いし嫌だったはずなのに、ためになるって無理して盛り上げて、自分のことは棚に上げて。それが必要な時も確かにあるよ、テレビ的にはあの流れで正解だし、仕上がりもよかったし。けど最近のおまえはカメラが回ってなくても、どこでもそういう感じだから心配になるわけ。メンバーと親友として見たら、心配だけど見守りたいって気持ちもあるよ。でもさあ、若井の恋人としての俺は、そんなんじゃ我慢なんないわけ! 世界でいっちばん大切な人が無理してるの分かってるのに放っておくなんてできないし、愚痴も弱音も悩みも全っ部吐いてほしいの! 恋人ってさ、そういう存在じゃないの!? 辛い時は寄りかかって甘えて、一緒に乗り越えていくもんだろ! なのに俺ばっかりおまえに助けられて、おまえはちっとも俺を頼ろうとしないんだから!」
いくら人より肺活量があると言っても、ここまで一息に叫びきるのは限界があった。
荒い息を繰り返しながら、若井の肩に顔を埋める。
「白夜になんかならないでさ、普通に日没してよ……」
「え?」
荒い息の中、ぽつりと小さく呟いた声は若井には届かなかった。
おもむろに顔を上げれば、目の前には先ほど僕に弾丸のように喋られたせいで惚けた顔があった。その両頬が、さっきまで抓っていたせいで赤く染まっている。
「……ごめん、ちょっと取り乱した」
「そんなこと――」
「でも、本気だから。僕は若井が辛い思いしてるのは嫌だけど、無理して笑おうとしてるのはもっと嫌。だから僕といる時は絶対に無理してほしくないし、ひとりで抱え込まないでほしい。それとも、僕が頼りないからできない?」
「そんなことない……!」
こう言えば若井ならすぐに否定してくれると分かっていながら、ずるい聞き方をしてしまったなと思う。
「……ごめん。俺、周りの人から見た俺に対するイメージを、崩したくなくて。小学生の時、太陽くんだねって言われて嬉しかったのは事実だし、俺はいつも笑ったりふざけて振る舞う立ち位置が適してるんだって思ったら、なんか抜けられなくなっちゃって。波を作ったらどこかで境界線が分からなくなりそうで、怖くてできなかった」
「……今日も、無理してた?」
そう聞けば、若井は少し躊躇いながらも小さく頷いた。
「……収録終わってからずっと、手と足に力が入んなくて、震えが止まんなくなって。でも、そんなの情けないし俺らしくないなって、いつもの若井滉斗でいなきゃって、そう思って」
だんだんと伏せられていく目を離すまいと思いながら、じっと見つめ続ける。俯いたその瞳の色を見て、確信する。
「まだ、言ってないことあるでしょ」
ほぼ断定の口調で言えば、若井は驚いたように丸い瞳をこちらに向け、しかしすぐに気まずそうに逸らされてしまった。
「……涼ちゃんが」
「うん」
「涼ちゃんが、言ったんだ。『僕があの時若井を指差したせいで、若井が飛ぶことになっちゃった』って。『だからごめんね』って」
楽屋のソファでふたりで座っていた時か、と合点がいく。なにか話しているなと思ってはいたけど、まさかそんな会話をしていたとは思わず、わずかに目を見張る。
「でもそんなの違うじゃん。あれは流れ上仕方なかったし、間違っても涼ちゃんに自分のせいだって思ってほしくなかったから。だから尚更、いつも通りに振るわなきゃと思って。でも、それが逆に元貴を苦しめちゃってたんだね」
ごめん、と目を伏せて小さく呟いた。その無理やり笑うのに失敗して、歪んだ口角をしっかり目に収めてから。
「ぅわ、」
今度は両頬を引っ張ることはせず、代わりに両手で包みこむ。
「それ。無理に笑うのも、あとすぐ謝るのも禁止ね」
「あ、ごめん、でもこれはなんか癖で……」
「はいまた謝った〜」
「うえ!?」
へにょりとへこんだり大げさに驚いたり、百面相する若井が面白くて、自覚はないがメンバーから言わせると独特らしい甲高い笑い声が漏れる。
「たしかに、若井は太陽くんだよ。さっきも言ったけど、それに僕も涼ちゃんも、それ以外にもいろんな人が救われてる」
でも、と若井の頬から手を離し、代わりにその両手を包み込む。激しいフレーズも繊細なフレーズも、どんな無茶振りをされても弾きこなす、細くて長くて綺麗な、僕の大好きなギタリストの手。それよりは少し小さいけれど、僕の手で精一杯にその大好きな手を包み込む。
「ずっと沈まない太陽はないんだから、ずっとみんながイメージする太陽くんでいる必要はないよ。若井がどんなふうになったとしても、それは全部若井滉斗であることには変わりないし、僕はどんな若井でも受け止めるから」
「元貴……」
「うおっ、」
どん、と軽い衝撃と共に、若井に抱きしめられる。肩にぐりぐりと顔を埋められたかと思えば、すぐにじわじわと温かいなにかで肩が濡れる。そして次の瞬間にはずび、と鼻をすする音が聞こえ、思わず笑ってしまった。
「泣き虫だなあ」
「だっでぇぇ……」
ま、そんな若井も好きだけど。
そんな胸中を音にすることはせず、代わりにぐずぐずと泣き続ける若井の背中をぽんぽんと叩き、顔を上げさせる。
「んはは、ひどい顔」
でもそれが、愛おしくてたまらない。
涙でぐしゃぐしゃな顔に笑いながら、甘じょっぱいその唇に自身の唇を重ねた。
なによりも大切な太陽が、安心して沈める場所になることを願って。
おまけ
①
「で?」
「ん?」
「膝が抜けたの、二回だけ?」
「あー……、それ聞いちゃう?」
「教えて」
「……帰ってきたあと、玄関で一回なった」
「……」
「で、でも誰も見てない時になったのはそれだけだから!」
「はー……、ほんと今日来てよかった」
「そうじゃん、忙しいのにありがとね。でも呼んでくれたら全然俺が行くから」
「あのねえ、そんな状態のおまえに来させるわけないでしょ。来る途中で動けなくなるとかあり得るからね」
「大げさだなあ」
「若井」
「……はい、すみません」
②
「さっき、俺の前では愚痴も弱音も悩みも全部吐けって言ったけどさ」
「うん」
「メンバーで……涼ちゃんと三人でいるときも、頼ることを覚えなね。涼ちゃん、若井のことすごい心配してるから」
「……うん」
「ま、急には無理だと思うからゆっくり、ね」
「……うん、ありがとう」
「でもとりあえず無理して笑うのと、すぐ謝るのは禁止。あ、あとひとりで泣くのも」
「なんか増えてない?」
「風呂でひとりで泣いてたら突撃するから」
「俺のプライバシーは!?」
コメント
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うわ~~~~~~~~、めっちゃ良かった……!! 読了後、しばらく放心してたわ(笑)。 「太陽」って比喩一つとっても、若井の明るさ故の孤独とか無理してる感とかが全部乗ってて、元貴の「沈まないでほしいんじゃなくて、沈める場所になりたい」って想いがめちゃくちゃ刺さった。二人の距離感、楽屋→帰宅後の流れが自然で、特にコーラ落とした後の手の震えの描写がリアルで心臓ギュッてなったわ。 最後のキスシーンも甘すぎず、愛おしさが滲んでて最高。おまけまで含めて、もう続きが待ちきれない! ふりーだむさん、素敵な作品をありがとうございます🔥