ふと、目が覚める。
『ふぁ…』
…今日も「僕」は「オレ」になる。
きっかけはきっとあの才囚学園に捕らえられた時だろう。
僕は、あそこで色んな真実を暴いてきた。
…その中で、気になる人が居たんだ。
王馬小吉。嘘つきで、掴みどころの無い彼が、気になっていたんだ。
最初の頃は、「最原ちゃん」「最原ちゃん」と呼んでくれて、面白い嘘で僕を笑わせてくれた。
ナイフゲームの時も、指を処置してあげたら、太陽みたいに笑って。
「……最原ちゃん、ありがと!」
その顔が、好きだったんだ。
しかし、彼は最低な事をした。
ゴン太くんの裁判の時、彼はゴン太くんを売った。
「……オレと組んで入間ちゃんを殺した事実をお前がすっかり忘れてるって事だよ。」
僕は、それが許せなかったんだ。
…それからだったと思う。
それから、彼は段々「笑えない嘘吐き」になっていってしまった。
「自分は首謀者なんだ」なんて言って、皆からのヘイトを集めて。
そして彼は、外の世界の絶望的な事実を話した後、百田くんをエグイサルの格納庫に監禁した。
勿論、皆は王馬くんに怒る、衝撃の事実に絶望する、という状況。
暫く経ってから、僕は格納庫の、プレス機を見て絶望したんだ。
だって、百田くんの上着が挟まっていて、潰されているんだ。人が。
血が、血が、色んな所に飛び散って。
勿論、その時の僕は百田くんが潰されたと思った。
ふと、こう考えてしまったんだ。
王馬くんが、潰されていたら良かったのにな。
って。
自分でも最低だと思う。でも、彼はきっとクロだ。そうに決まってる。
百田くんを監禁して、プレス機で潰して殺したんだ!
みんながそう思った。
…そうして、裁判が始まった。
裁判場には、エグイサルが居た。
百田くんでも、王馬くんだったとしても、分からない。
…エグイサルが口を開いた。
「…にしし……」
絶望的だった。エグイサルからは、王馬くんの声がする。
「オレは死にましぇーん!!みんなを愛しているからー!!」
「お主は何歳じゃ!!」
ずっっと、王馬くんの声がしたかと思えば、急に百田くんの優しい声がする。弄んでいるような彼の様子に、春川さんなんて、爆発寸前だ。
…推理をして気がついた。
これは、もしかしたら、王馬くんが潰されているのでは?
ビデオをもう一度見てみると、
「あっ、プレス機が一瞬止まっていますよ!」
キーボくんが言う。
「じゃ、じゃあ潰されたのは…」
「は?百田じゃなくて王馬が潰されたって?…殺されたいの?」
「…」
「んあー!肝心な所では黙りかい!!」
そうすると、全て辻褄が合う。
じゃあ、エグイサルの中に入って、王馬くんのフリをしているのは…
『―ッ!!』
まずい。このままだと、「彼」がオシオキされてしまう!!
『…王馬くん、僕はもう嘘をつけないよ…』
…今更、遅い。でも、彼がオシオキなんて…!!
「…ちょーっと待ったぁ!」
…エグイサルが開く。
中から出てきたのは…
……やっぱり、百田くんだった。
それから、僕たちは白銀さんの正体を見抜いて、 僕、春川さん、夢野さんとでダンガンロンパを終わらせた時に、思った。
……彼は、ずっと1人で頑張っていたのだ。
誰にも助けを求めず。
誰にも気に掛けられず。
ずっと、ずっと1人で。
『…総統のキミが居なくなったDiceはどうするんだよ…』
しなびれたスカーフを握りしめ、言う。
これは、格納庫から見つかった、彼の遺品だ。
…そういえば、彼は少し前に言っていた気がする。
『オレが死んだら、最原ちゃんはオレの代わりに総統になってよ!約束ね!!あ、これは嘘じゃないよ!
……でも、オレみたいになってる最原ちゃんは笑えるよね!』
『…嘘じゃないの? 』
『にしし……嘘じゃないよ!ホントだよ!でも折角なら完璧にオレになって欲しいな〜……』
『えっ、ちょ、王馬くん!!』
…彼の笑う顔が、ひどく懐かしい。
僕は、スカーフを首に巻き、決めた。
…これが、「僕」が「オレ」になるまでだ。
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