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⚠︎︎fwak / 監禁 / 過去作の供養────────────────────
Noside
じゃらり。ピンと張った鎖が緩んで地面に落ちる。比喩でもなくその手綱を握る不破は、お利口なはずの飼い猫の傍へ、一歩近づいた。
「……そんな警戒せんといてよ。明那」
恍惚と、歪んだ愛情ばかり煮詰めたような感情を孕む不破の視線の先には、息を震わせながら威勢よく不破を睨みつける赤いメッシュの青年、三枝明那の姿があった。薄暗い部屋の隅にまで追い詰められた三枝の首元は、よく見れば紫色の首輪によって縛られて、それは不破の片手が握っている鎖の持ち手とよく繋がっていた。
「別に、傷つけたいわけちゃうねんぞ」
「ただ、明那は俺だけのモンって証明したいだけやねん」
「だから、な? その唇、俺に預けてくれへんか」
ぞわり。全身の体毛が、その一瞬にして逆立った。同じ言語を喋っているはずなのに三枝にとっては到底理解のできない……いや、理解を拒みたくなる言葉の羅列だった。同僚であり、親友だと思っていた男から性的な接触をねだられている。三枝にとって、それは耐え難い事実だった。
すとん、と目の前でしゃがみ込む不破。三枝が少し顔を上に向ければすぐに目が合う。上から見下ろされるよりずっと距離が近く感じて、途端、三枝の身体は拒絶反応を起こした。身震えが一段と増すような感覚。呼吸すら困難になりそうだ。
視界が滲む。まともに不破の顔が見れない。いまにも溢れそうな雫も気にせず、三枝はもう一度うつむいた。「はっ、ひゅ」と僅かに開けた唇から吐息が逆流する。
嫌、だ。いやだ、くるな。
ただ、祈る。けれど、不破の影は確実にこちらに近づいていた。
「……あきな」
ぎゅう、と力強く瞼を閉じて自らを守るように縮こまる三枝に、不破は触れようと伸ばしていた手を引っ込めた。
「…………」
「なんで怖がるの」
少しの後、拒まれた事実が苛立ちに変わったのか、不破は持っていた鎖を乱暴に引っ張った。連動して、三枝の首元に飾られた首輪が引っ張られると、それは三枝の身体すらも動かした。
「あッ、……」
――瞬間、不意に灰と紫がまじわう。三枝の瞳はいずれにせよ揺れているというのに、不破の瞳は随分と威圧的で、冷めきった目付きをしていた。これは三枝の態度によるものだ。三枝だって、自らが不破を怒らせたことを自覚していた。できることなら今すぐにだって目を逸らしたい。けれど、逸らしてしまえば余計刺激するに違いない。葛藤が渦まく中、三枝は震える眼で必死に不破の紫を見つめていた。
「なあ、明那。もう一回言うよ」
「俺のモノになって」
今にも相手を殺してしまいそうなほど、鋭い視線を真正面から向けられて、これが最後のチャンスなのだと三枝は理解した。その重圧は、不破の言葉を従順に受け入れることしか許さない。控えめに首を縦に揺らし、ついに自らを受け入れた三枝。満足な返事に、不破は心底嬉しそうにしながらほころぶ。
「……よかった」
やさしげな笑みを浮かべた不破は、三枝の頬を手で包み、まずは唇から、ふるえる身体を無理やり貪った。