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美味しいお料理とお酒で、普段より会話も弾んだ──。
「あんなに大きな会社を一代で築かれたなんて、本当に凄いです」
「いや、私はただ自分が欲しいと思ったものを、作ってきたにすぎないからな」
「……欲しいと思ったものをですか?」
「ああ」と、蓮水さんが頷く。
「男性陣も、ビジネスでいろいろなカラーを着こなしてもいいだろうと思ったんだ。モノクロばかりではない色鮮やかなスーツがあれば、ビジネスシーンももっと華やぐはずだと思ったからな」
ショコラカラーのスーツに合わせられた光沢のあるシルバーのネクタイがワイングラス越しに映り込んで、煌々と輝いて見える。
相変わらず、格好良く決まってて素敵だな……。
「HASUMIができてからは、本当にビジネススーツも様変わりしましたよね」
ともすれば見とれてしまいそうな気持ちを、ワインでぐっとひと息に流し込んで口にする。
「君にそう言ってもらえると嬉しいよ。ああ、こんなに女性と話をしたのは、久しぶりだな……」
そんな風に言われたら、せっかく飲み込んだ気持ちが逆戻りをしてしまいそうで、
「奥様のことを、ずっと愛してこられたから、今まであまり女性とのお付き合いもされてこなかったんじゃないですか」
気分を変えるつもりで、敢えてそう話した。
「……ああ、愛していたのは無論だが、新たな出会いを諦めていたわけでもないんだ。ただ私は、それほど女性との付き合いが上手くはないようでな」
「それは、違うと思います!」と、頭を思いきり横に振って否定をした。「だって、現に私が……」そこまで言いかけて、慌てて口に手をあてた。
お酒の勢いに押されて、つい秘めた思いを打ち明けてしまいそうにもなって、
「……もてるはずですよ、きっと。気づかれていないだけで……」
口先でぼそぼそと自らの気持ちを誤魔化すようにも話した。
「……特にもてると思ったこともないが」
あまり納得のしていない様子で呟くのに、そういう気負わないところに惹かれちゃっている私だっているんですから、絶対にもてないなんてことはないですし、
今までだって、彼への密かな思いを胸に抱えていたような女性も、実は多かったんじゃないのかなとも感じた……。