テラーノベル
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タイトル「誰かの人生の話」
作:ねこむすび
※創作です
高校3年の時の春の日
楽しい学校生活なんて来なかった
気弱で虐められやすく、よく物を捨てられたりパシリにされた
悪いときには掃除用具入れに敷き詰められ、袋叩きにされた
先生は御前が悪いだのなんだの言って目を逸らし続けた
そんな自分に光を与えてくれる人がいた
その人はカラオケに誘ったり、イジメを辞めようと声かけをしてくれた
自分からすれば、神のような存在だった
でも、違った
その人もイジメの加担者で、「優しく接した後に冷たくする」奴だった
実際、急に口を聞かなくなり、次第にイジメがエスカレートした
その犯人は、よく優しくしてくれた人だった
その憎しみがたまり、高校3年の7月にグレて、バイクにまたがり、よく警察と鬼ごっこをしていた
また警察に捕まり、親にビンタをされた
抵抗すれば更に殴られるのは知ってても、恨み憎しみが増していって抵抗がエスカレートした
心底人なんて使用できなかった
小学生時代もそうだった
もしも映画のような人物なら、誰かが助けてくれるのだろうか
そんな妄想をバイクの唸り声で掻き消した
そんな時に桜に出会った
夏には珍しい雨の日に、ずぶ濡れのままそこに佇んでいた
濡れた長い前髪から覗かせる瞳に感情が無かった
哀れに思って、パン1きれだけ差し出した
となりに座ってパンを貪った
人の温もりを知ったような気がした
それでも現実は違った
それを目撃したイジメっ子が学校内にバラし、「アイツは人を抱いた」とデマを流して孤立させてた
一人ぼっちになって、そのストレスで憎しみは殺意に変わっていった
初めて、ハサミで人の腹部を刺した
快感と罪悪感が同時に襲った
手が震えて、赤いペンキのように床は染まった
幸い死は免れたが、警察に捕まり、高校は退学処分となった
少年院から出ても周囲の反応は変わらなかった
両親の暴力は更に激しくなり、体中にミミズのような痣が出来た
まだ成人もしてないのに煙草や酒に手を出した
その度に体が拒否反応を示し、嘔吐と頭痛を繰り返した
黒く染まった心の中、桜は現れて言った
「逃げよう」って、桜は言った
ヤングケアラーの桜は、幼い妹を亡くしてから家を去った
残された父はギャンブルに染まり、逮捕され、ホームレスとなった
母が病死してから、桜は壊れたんだなと、共感を覚えた
壊れたメガネも、額から滑り落ちる汗も無視した
コンビニから飯を奪って、のうのうと生きた
社会不適合者らしく生きた
生きてるって思えた
蝉は踊り狂い、警察は怒号を叫び、テレビのノイズのような視界に酔いながら走り続けた
きっと皆、自分は何も悪くは無いって言いながら生きてんだろうなって思いながら
なあ、そうなんだろ?
2007年7月24日の夏の日の狂った思い出を振り返る
その後桜は首を斬った
そして僕はまた一人ぼっちだ
桜は「君だけは生きて欲しい」って言った
呪いのような言葉だった
墓石の「石川桜」の字を見ながら思った
そんな記憶を振り返りながら、部屋にある白いキャンバスに色をぶちまけた
全てが駄作に見えて厭になった
嗚呼 畜生
ぐちゃぐちゃのキャンバスは、嘲笑っているようだった
「クソッ!」
思いっきりキャンバスを押し倒した
息切れして肺と心臓は早く鼓動する
其の儘絵の具塗れのベッドに力無く落ちた
全てが厭になってきた
「嗚呼、桜なら褒めてくれるのに」なんて戯言を言いながら、目を閉じて暗闇に落ちた
溶けるように夢に落ちた
鏡が写す自分は白かった
そこに黒が流し込まれた
みるみるうちに体は黒に染まる
自分は
自分は──
桜のあの言葉は
照明が眩しくなり、目を開けた
変わらない風景があった
気分転換にと、ネオン街に来た
黒にはピンクや黄色がよく映える
電波線が絡んだ摩天楼の中
ベンチで横に成り空を見た
星は楽だなあと、 手で空を切りながら思う
もし、桜があんな事を言っていなければ、死ねたかも知れない
「桜のせいだよ」なんて言った
アルコールでやられた思考で、考えた
何故ネオン街に居るのかと
世界は動物園のように騒がしい
左を見ようが右を見ようが、真面な奴なんて居ない
崩壊したこの世界で、自分の居場所を探していた
其れで、判った
やるしかない
自分も
同じように
否定されたくないという一心で、自ら染まり続けた
その内、自分が何か忘れてしまった
家に帰り部屋で自ら染まった自分に苛立ちヤケ酒をした
酒に溺れている
口から嘔吐物が溢れた
テレビが脳を刺激し、より一層吐き気を強くさせた
酒でしか自分を作れない
見たくない現実を酒で目隠しを為ている
胃酸とアルコールの匂いが混ざり合い、鼻を刺激し、また吐いた
視界が歪む
耳がキーンとノイズを走らせる
頭が痛い
キャンバスはぐちゃぐちゃのまま、なにもいわず、ただ立っているだけだった
其れで安心したのか、寝てしまった
いつもの夢を見た
また、鏡で自分が壊れる様子を、拷問のように見せつけられた
そして朝が来た
来て欲しくない朝
昨日吐いた嘔吐物の匂いでムクリと起きた
キャンバスをジッと見た
黒はまるで闇のような鏡だった
腕を差し伸ばした コンと音を立て、倒れた
嘔吐物の処理をし、水を吐き気が出るまで飲み続けた
底の無い闇にずっと居る
光なんて無いんだろうな
桜と共に過ごした日々は頭の中で消えずにいる
自分が自分じゃなくなって来ている事が判る
キャンバスをバキバキに折ってゴミ箱に捨てた
何をしたいのか、自分でも判らないが…楽になれる気がした
昨日と同じようにネオン街に舞い戻ろうと、電車に乗った
電車が揺れ、肩が当たる
耳に入る舌打ちを音楽で塞いだ
朝日がのぼる無機質な街に、何を求めるのか判らない
ただ自分は変わらず汚れている気がした
窓に映る顔面に腹が立って顔を背けた
最初は趣味で絵を描こうと買った白いキャンバスは、自分を投影していく度に、黒くなった
黒くなった其れを、自分を、電車の窓でまた見るとは思わなかった
趣味で描いた絵も、全てが塗りつぶされていった
電車のドアが開き、ざわめきが聞こえる
くだらない雑談は、昔を刺激した
電車から出て、ストレスの溜まった体を酒で押さえ込んだ
少し吐き気がして、缶を捨て、 ジュースを買った
少し幼稚かも知れないと思いながらも口に運んだ
味は、アルコールで麻痺した舌に、衝撃を与えて一気に飲み干した
駅のホームのベンチに座り、自由帳を開き、絵を描き始めようとしたとき、シャーペンを握った手が微かに震えた
シャーペンと自由帳をしまった
また要らないモノを描いてしまうのだろうか
腹の虫が鳴き声を上げる
そこら辺のコンビニで何時も食べるパンを買い、口に入れた
途端血の味がして地面にこぼれた
血が地面を赤黒にしていく もうろうとしながら、手についたものを見た
手に赤黒い血のような鮮明な赤がついていた
膝から崩れ落ちた
立ち上がろうとしても、足が動こうとしない
手を壁に張り付け、必死に立とうとする
限界が来て、目を閉じた
意識がもうろうとする
走馬灯が流れる
暗転した
心臓の音も弱々しくなった
白い無機質な天井を見て、病院だと判った
嗚呼 死ねなかった
足音を立てながら近づく人が自分に体の健康を尋ねた
1週間も寝ていたらしい
背を向けて看護師は部屋を出た
体をベッドに委ね、天井を見た
ふとあのキャンバスが脳裏によぎった
そのキャンバスを手で払った
シャーペンと自由帳が手に当たった
少しだけ線を描いた
逃げ場であったキャンバスを捨ててしまった今、何ができるのだろうか
自由帳にシャーペンを走らせながら思う
消して、消して、描いて
変わらず汚れている心をぶちまけた
まだ体が回復為ていないのか、血がまた噴き出した
作品に血がつこうがシャーペンを走らせた 手に力が入らなくなり、血で指を濡らして描いた
看護師に止められるまで永遠に
突如看護師にシャーペンと自由帳を没収され、無機質な街を眺めることにした
黒に染まるのが怖くなって目を背けようとした
長い時間をかけて体はまた元通りになっていった
スマホを取りだし電話をかけた口を開けて言った
「ただいま」
スマホから友人の戸惑いの声が聞こえた
それに答えれず無言になって、電話を切って、ジュースを買って、電車に乗った
窓に映る自分の顔に申し訳なさを感じながら、見つめた
もう一度目を背けた まだ自分に自信が持てない
本を読む
本を書く
絵を見る
映画を見る
小さな事でも逃げ場はあるのに
本でも逃げ場はあったのに
アルコールに依存した
「桜」に申し訳なく思って
其れが、自分が、申し訳なくて
袋に入っている本を見つめた
繰り返してしまうのかと思いながら
葛藤をしながら
自分の地域の駅のホームの流れる人混みの中で、思った
自分の物語が描かれた本を、閉じた
ーーENDーー
テーマ「無力」
伝えたいこと「結局人って無力だよね」
※誰にでも起こりうる話です
※いつか起きるかも知れませんね
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