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美術
部屋にある白いキャンバスに色をぶちまけた
全てが駄作に見えて厭になった
嗚呼 畜生
ぐちゃぐちゃのキャンバスは、嘲笑っているようだった
「クソッ!」
思いっきりキャンバスを押し倒した
息切れして肺と心臓は早く鼓動する
其の儘絵の具塗れのベッドに力無く落ちた
全てが厭になってきた
目を閉じて暗闇に落ちた
溶けるように夢に落ちた
鏡が写す自分は白かった
そこに黒が流し込まれた
みるみるうちに体は黒に染まる
自分は
自分は──
照明が眩しくなり、目を開けた
変わらない風景があった
気分転換にと、ネオン街に来た
黒にはピンクや黄色がよく映える
電波線が絡んだ摩天楼の中
ベンチで横に成り空を見た
星は楽だなあと、 手で空を切りながら思う
アルコールでやられた思考で、考えた
何故ネオン街に居るのかと
世界は動物園のように騒がしい
左を見ようが右を見ようが、真面な奴なんて居ない
崩壊したこの世界で、自分の居場所を探していた
其れで、判った
やるしかない
自分も
同じように
否定されたくないという一心で、自ら染まり続けた
その内、自分が何か忘れてしまった
家に帰り部屋で自ら染まった自分に苛立ちヤケ酒をした
酒に溺れている
口から嘔吐物が溢れた
テレビが脳を刺激し、より一層吐き気を強くさせた
酒でしか自分を作れない
見たくない現実を酒で目隠しを為ている
胃酸とアルコールの匂いが混ざり合い、鼻を刺激し、また吐いた
視界が歪む
耳がキーンとノイズを走らせる
頭が痛い
キャンバスはぐちゃぐちゃのまま、なにもいわず、ただ立っているだけだった
其れで安心したのか、寝てしまった
いつもの夢を見た
また、鏡で自分が壊れる様子を、拷問のように見せつけられた
そして朝が来た
来て欲しくない朝
昨日吐いた嘔吐物の匂いでムクリと起きた
キャンバスをジッと見た
黒はまるで闇のような鏡だった
腕を差し伸ばした コンと音を立て、倒れた
嘔吐物の処理をし、水を吐き気が出るまで飲み続けた
底の無い闇にずっと居る
光なんて無いんだろうな
自分が自分じゃなくなって来ている事が判る
キャンバスをバキバキに折ってゴミ箱に捨てた
何をしたいのか、自分でも判らないが…楽になれる気がした
昨日と同じようにネオン街に舞い戻ろうと、電車に乗った
電車が揺れ、肩が当たる
耳に入る舌打ちを音楽で塞いだ
朝日がのぼる無機質な街に、何を求めるのか判らない
ただ自分は変わらず汚れている気がした
窓に映る顔面に腹が立って顔を背けた
最初は趣味で絵を描こうと買った白いキャンバスは、自分を投影していく度に、黒くなった
黒くなった其れを、自分を、電車の窓でまた見るとは思わなかった
趣味で描いた絵も、全てが塗りつぶされていった
電車のドアが開き、ざわめきが聞こえる
くだらない雑談は、昔を刺激した
電車から出て、ストレスの溜まった体を酒で押さえ込んだ
少し吐き気がして、缶を捨て、 ジュースを買った
少し幼稚かも知れないと思いながらも口に運んだ
味は、アルコールで麻痺した舌に、衝撃を与えて一気に飲み干した
駅のホームのベンチに座り、自由帳を開き、絵を描き始めようとしたとき、シャーペンを握った手が微かに震えた
シャーペンと自由帳をしまった
また要らないモノを描いてしまうのだろうか
腹の虫が鳴き声を上げる
そこら辺のコンビニで何時も食べるパンを買い、口に入れた
途端血の味がして地面にこぼれた
血が地面を赤黒にしていく もうろうとしながら、手についたものを見た
手に赤黒い血のような鮮明な赤がついていた
膝から崩れ落ちた
立ち上がろうとしても、足が動こうとしない
手を壁に張り付け、必死に立とうとする
限界が来て、目を閉じた
意識がもうろうとする
走馬灯が流れる
暗転した
心臓の音も弱々しくなった
白い無機質な天井を見て、病院だと判った
嗚呼 死ねなかった
足音を立てながら近づく人が自分に体の健康を尋ねた
1週間も寝ていたらしい
背を向けて看護師は部屋を出た
体をベッドに委ね、天井を見た
ふとあのキャンバスが脳裏によぎった
そのキャンバスを手で払った
シャーペンと自由帳が手に当たった
少しだけ線を描いた
逃げ場であったキャンバスを捨ててしまった今、何ができるのだろうか
自由帳にシャーペンを走らせながら思う
消して、消して、描いて
変わらず汚れている心をぶちまけた
まだ体が回復為ていないのか、血がまた噴き出した
作品に血がつこうがシャーペンを走らせた 手に力が入らなくなり、血で指を濡らして描いた
看護師に止められるまで永遠に
突如看護師にシャーペンと自由帳を没収され、無機質な街を眺めることにした
黒に染まるのが怖くなって目を背けようとした
長い時間をかけて体はまた元通りになっていった
スマホを取りだし電話をかけた口を開けて言った
「ただいま」
スマホから友人の戸惑いの声が聞こえた
それに答えれず無言になって、電話を切って、ジュースを買って、電車に乗った
窓に映る自分の顔に申し訳なさを感じながら、見つめた
もう一度目を背けた まだ自分に自信が持てない
本を読む
本を書く
絵を見る
映画を見る
小さな事でも逃げ場はあるのに
本でも逃げ場はあったのに
アルコールに依存した
其れが、自分が、申し訳なくて
袋に入っている本を見つめた
繰り返してしまうのかと思いながら
葛藤をしながら
自分の地域の駅のホームの流れる人混みの中で、思った
自分の物語が描かれた本を、閉じた