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貴方の家。勉強会もどきの、はずだった。
帰り際に突然、「この後一緒に勉強しよう」なんて言うから。思わず顔が綻んで、いとで吊り上げられたみたいに笑顔が暫く止まらなくて。 自転車を漕ぎながら何度もその声を考えてしまった。どうしてくれるのよ。
真白いシャツのあなたはかつかつとシャー芯を出した。外の雲は白い。
先刻まで積分の問題を解いていたノートに、あなたの筆跡で何かを書く。 白いシャツによく映える、日焼けした肌。
学校の購買で買ったというブルーのラインマーカーをとりだして、線を引く。開いた窓から覗きみる、真夏の空は青い。
「ほら、綺麗だと思わない?」
貴方はペンのキャップをかち、とつける。
そのままそのペンで文字を指さした。
「*夏*」。
少し斜めがかった、薄い貴方の筆跡。
「ほんと…だね。綺麗だと思う」
白い日差しの中で微笑む貴方のその顔。
夏の潮風がさらりと吹いた。
あたしの紺のセーラーカラーと、白いレースカーテンが揺れた。
やっぱり、あたしは貴方のことが大嫌いだ。