『主様、朝ですよ』『起きられていらっしゃいますか?』
返事がない。
可愛いですねえ、私の主様は。
よく眠っていらっしゃる。
起こすのは気が引けますが、主様に遠慮なく起こしてと言われたものですし…。
『主様、主様』『ラトですよ、起きてください』
…どうしましょう。
このままだと主様がお困りになられてしまう。
主様、どうしたら良いですか…?
そういえば、起きないようなら入ってもいいと仰っていた。
…いや、それはさすがにまずいでしょうか。
ですが、このままだと主様はお昼まで眠ったまま。
………お許しくださいませ、主様。
ノックを4回、もう一度声をかけてみるも返事はない。
『失礼します』
がちゃ。
『主様』
失礼にあたると分かっているにもかかわらず、身体が勝手に主様の近くへ。
すやすやと、気持ちよさそうに眠っている。
まるで、おとぎ話の眠り姫だ。
『美しい…』
声に出てしまった。
この睡眠を妨げたくない気持ちが、このままずっと見ていたい気持ちが、私を邪魔する。
けれど、私は主様の執事。
責務は果たさねば。
『主様、寝坊してしまいますよ』
「ん…」
反応があった。
よかった。
あまりにも綺麗な寝顔は、私を不安にさせる。
「らと…」
え。
いま、主様が私の名前をお呼びに…。
…起きてはいない。
寝言のようですね。
寝言で私のことを。
……主様はずるいです。
ますますこの感情の制御が、難しくなってしまうではないですか。
『主様、学校なのですよね?』『遅刻してしまいますよ』
[遅刻]というワードに反応した主様のあの焦りようといったら…。
くふふ、主様は面白い方ですね。
許されるはずがない私の望みが、叶う日など来ないでしょう。
コメント
1件
最高の夢小説ですわ( ˇωˇ )👍❤︎