テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
目が覚めると、そこは真っ白な立方体の部屋。真っ白なベッド、小さな机と椅子が置かれたシンプルな部屋。よく見れば鉄の扉の近くに鏡もかけられている。
『ここ…どこ?』
示し合わせたように鉄の扉が開いた。入ってきたのは、オールバック銀髪にハイライトの無い黒い目をした長身の男だった。
「おお、目が覚めたようだね。よく眠れたかい?」
その男は優しい笑みを浮かべながら椅子に座って自己紹介を始めた。”ゼノ・ヒューストン・ウィングフィールド”という名前で、NASAというところで働いているらしい。
「記憶が曖昧だろう、君自身のことを教えようか。」
ゼノは沢山のことを教えてくれた。ここで得た情報は3つ。自分は🌸という名前だということ、今は10歳ということ。そして、外の世界の危険から保護するためにこの白い部屋に入れているということ。
『この…ジャラジャラしたやつなぁに?あと首の黒いやつ…』
足についていた重くて冷たい輪っか。更には鎖のようなものが伸びていて、🌸は半径2mくらいしか動くことができなかった。首には首輪のようなものが取り付けられている。
「これらはね、君をここに居させる為の大切なものだ。君を守るためのものだよ。」
この首輪は居場所や心拍数、体温などを瞬時に知ることができるんだよ、と饒舌に語り始める。
『ゼノさん、🌸のこと守ってくれる人?それなら🌸、ゼノさん好き〜!!』
まだ小さな体でゼノを抱きしめる。自分を監禁した人間をまるで騎士のように認識していた。
急に抱きつかれたゼノの漆黒の目が見開く。
「おお…そうかそうか、好きか。僕も🌸のことが好きだよ。どこへも行かせないくらい。」
さらさらとしたストレートの銀髪を撫でながら微笑んだ。”どこへも行かせない”。無機質な蛍光灯の光に照らされた足枷がそれを証明した。ゼノは壊れ物を扱うかの如く、優しく抱きしめ返す。
「僕はね、君をどこにも行かせない。外は衆愚で塗れている。そんな世界に、君というまだ美しい無垢な存在を放して汚したくないんだよ。」
嘘偽りの無い目。まだ知能も低い🌸ですら嘘ではないと確信できるほど。でも一つだけ、まだ理解できていないことがあった。
「絶対にここから出ないでくれ。君がここを離れたら僕は───壊れてしまうかもしれない。」
“壊れる”、人が壊れるとは一体どういうことだ?🌸にはわからない。自分をにこにこと見つめるその黒い目の奥は…非常に歪んで狂気に満ちた、重苦しい愛が渦を巻いていた。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
19