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⚠キルゴン
ゴンとキルアの日常は、いつも隣り合わせだった。共に笑い、共に戦い、共に旅をする。その一つ一つの瞬間に、キルアの心は密かに、しかし確実に形を変えていった。始まりは、ただの「親友」だったはずなのに。
ある日の夕暮れ、二人は小さな港町にいた。水平線に沈む夕日が、水面を茜色に染め上げる。ゴンは柵にもたれかかり、遠くを指差して無邪気に笑った。
ゴン「ねぇ、キルア!あっちの方に、大きな魚が釣れるって聞いたんだ!明日行ってみようよ!」
ゴンの声はいつだって明るくて、まるで迷いを知らない光のようだった。キルアは、その横顔をじっと見つめる。ゴンの瞳に映るのは、きっとどこまでも広がる空と海、そして新しい冒険への期待だけ。キルアの瞳には、そのゴンの横顔しか映らなかった。
キルア「……勝手にしろよ」
そっけなく答える声とは裏腹に、キルアの胸は温かい熱に満たされていた。ゴンの隣にいられるだけで、世界はこんなにも色鮮やかになる。だけど、その喜びは常に、一抹の不安と背中合わせだった。この“当たり前”が、いつか崩れるのではないかという底知れぬ恐怖が、キルアの心を蝕んでいた。
その夜、宿で隣り合わせに寝転がっていると、ゴンの寝息が穏やかに響いた。キルアはそっと寝返りを打ち、眠るゴンの顔を見つめる。規則正しい呼吸に合わせて上下する胸元。指先が、その胸元に吸い寄せられるように伸びていく。触れてはいけないと分かっていながら、止められない衝動。
ごくわずかに、シャツの生地越しに触れたその温度は、キルアの指先から全身に広がり、心臓を直接掴まれたかのような甘く、苦しい痛みを与えた。
キルア「……ッ」
慌てて手を引っ込める。ゴンは微動だにしない。ただ、キルアの鼓動だけが、煩いほどに胸を叩いていた。この気持ちは、一体何なのだろう。友人とは違う、もっと深い、甘美な毒のような感情。
次回 ❦ 200 … ?