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「ヒ、っ、い”い”ッ♡」
どうしてこんなことになった。男はつぎからつぎへと脳に叩き込まれる未知の快楽から逃れようと必死に考えていた。
「ぉ”ッ……♡ぅ”……♡♡あ”ぁッ………♡♡」
カラオケボックスにひとつの嬌声が響き渡った。女のように甘い声は多量の息を含み、やがて消えると新たな悲鳴があがる。
様々な液体が入り交じり彼の首を、腹を、そして太腿を伝い、また絡み合う。
やがて緑のネオン・ライトが2人の影を照らし影を作る。
コップの氷がカランと音を立てて崩れ、ギュジンは気が遠くるなるのを感じた。
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およそ事の始まりの30分も前、ギュジンはいつものようにソンジュンに呼び出されていた。カラオケボックスの前でおおきな深呼吸をしたのち、厚手のガラス戸に手をかけ部屋の中に立ち入る。
「来たかクソギュ」
ギュジンがツンと鼻を突くようなタバコの匂いに顔を顰め部屋の前で立ち竦んでいると、ソンジュンは重い腰をあげソファから立ち上がりギュジンの肩に腕を回す。ギュジンの細く薄い身体とは反対に、ソンジュンの身体は長年のスポーツクラブで培った肉厚的な筋肉と高い身長を持ち、傍から見れば大人と子供ほどの体格差がある。小麦色に焼けた健康的な肌はギュジンの日に焼けたことのないような白によく映える。
ソンジュンは躊躇なくギュジンを冷たい壁に叩きつける。彼の重たい前髪を手で払い除け、上部に固定する仕草はもはや手馴れたものだった。
「メッセージ見たよな?」
「…………うん」
「だったらなんで遅れたんだよ」
「……ごめん」
ギュジンがこうしてソンジュンに呼び出されることは少なくなかった。
あるときは金を持ってこい、あるときはイライラしてるから殴らせろだの、またあるときは母親の身分証を持ってこい、と。いつだってソンジュンは無理な願いをギュジンに押し付けては彼を苦しめた。
「ぁ……あの、僕…今お金持ってなくて……………」
しどろもどろになり震える声で必死に訴えかける。ギュジンが言葉を終える前にバチンと部屋に乾いた音が響いた。
「そういうこと言ってんじゃねぇよ。分かんねぇか?……おまえさ、最近調子乗ってるだろ。だから1回しつけ直してやろうと思ってさ」
「…………」
ギュジンは右頬をはたかれた痛みでじわりじわりと涙が込み上げてくるのを必死に我慢した。涙を見せればソンジュンの加虐心を余計煽ることになるだろうと思ったのだ。しかし、その努力は無駄になるとギュジン自身がいちばんよく知っていた。これから自分がどう扱われるのかをすっかり体に教え込まれていたからだ。
ギュジンが高校に入学し、ソンジュンと出会った頃にされたことをまたされるのだということ。何時間にも渡って殴ったり蹴ったり、タバコを腹に押し付けられたりとそれはもう酷い跡が残ったものだ。家に帰るや否や母親が駆け寄ってきて、この傷はどうしたんだと心配そうに彼に尋ねた。女手一人で育ててくれた彼女に迷惑をかける訳にもいかず、その手を払い除けた。ギュジンは母親を邪険に扱ってしまったことを今も後悔している。
いま彼女はなにをしているだろうか?店を締めギュジンの帰りを待って、夕飯の支度をしている頃だろうか。
「───なあ、聞いてんのかクソギュ?……ったくホントにグズだな」
ギュジンの髪の毛を引っ張ったまま壁際に歩いていきソファに放り投げる。その勢いで机の上のマイクが落下し、けたたましいハウリングを奏でた。ギュジンが体制を直す前にソンジュンは馬乗りになり、ギュジンを押さえつける。
「ああ、その反抗的な目つき。見てるとイライラしてくるんだよ」
ライトに逆光しソンジュンの表情は読み取れない。バシリとまたもや音がなり、ギュジンの左頬を赤くした。ヒリヒリと焼き付くような痛みで情けない呻き声をあげる。
「泣いたって誰もお前を助けに来ねぇよ。ほら、顔こっち向けろ」
グイッと顎を引き寄せられ、ソンジュンと目が合う。
黒く塗りたくったような真っ黒の瞳。
目を逸らそうとしたって無駄だ。
眉ひとつ動かさず眼前の獲物を狙うような、そんなじっとりとした視線に思わず息が詰まる。
しかしその瞳はいままでのギュジンを蔑むものとは違い、べつの意思を孕んでいた。
心臓が早鐘を打ち、今すぐ逃げろと警告してくる。
その一瞬が何分にも何時間にも感じられ、限界に達したギュジンは静寂を破る。
「あ…………っ あの、僕、もう帰らないと───」
ソファから立ち上がろうと腕で背を押すがソンジュンは退く気がないらしく、彼の上でいまだ鎮座している。
「待てよ」
ふいに腹の傷がズキズキと痛み出しギュジンは喉を鳴らした。この違和感の正体は一体なんなのか───。
ソンジュンは片方の口角を吊り上げ、なにかいたずらでも思いついた子供のように笑うと今度はギュジンの頭を優しく撫でた。
「ひっ…………」
「まあそう怖がるなって。俺もさ、やり方を変えようと思ってんだ。ギュジンも痛いのばっかりじゃ嫌だろ?」
ギュジンの息があがる。男が何を言いたいのかわからず、じっと見つめる。
ソンジュンはギュジンのシャツをたくし上げ、白い肌を露出させる。喉からヒ、という上ずり声が出て心拍が一気に早くなった。ついとソンジュンが指先を腹に押し当てる。先日彼がギュジンに付けた痣を撫でてやれば面白いほど声が上がった。へその下からゆっくり降下していき、また上へ撫であげる。
「──あ、ここ。痕になってんだな」
タバコで根性焼きされた火傷を見つけるとソンジュンは嬉しそうに笑う。ソンジュンのアルト・ボイスが薄い腹に響き彼の判断をより鈍らせた。
ソンジュンが地を何往復かしたのち、満足気に腹から手を離すとギュジンはやっとの思いで息を吸い込む。まるで肉食動物が獲物を食らう前に肉を柔らかくさせる仕草を彷彿とさせ、ギュジンはこれからソンジュンが彼に何をするか、理解してしまっていた。
ソンジュンはカチャカチャとわざとらしく音を鳴らしながらベルトを外しチャックを下ろした。
「なっ……なにを…………」
「なにって、これからお前を躾けるんだよ」
そう言うとソンジュンはトランクスをずり下げる。彼の凶悪なソレが姿を現し、もはやグロテスクともいえるほどだ。脳が目の前の光景を直視するのを拒み顔を背けようとするが、顎をガッチリと固定されそれも叶わない。
「舐めろ」
「ゃ……っあの………」
「舐めろっつってんだよ」
ギュジンは状況を理解できないまま髪の毛を強引に引っ張られ無理やり口に押し込まれる。
「ん”ぉ”っ!?……ッ”!!」
一気に喉奥まで突き立てられ、息ができない。足をじたばたと動かし抵抗するが彼の前では全くの無力だった。ソンジュンの圧倒的な大きさのものではギュジンの口に入りきらず、根元からはギュジンの涎と汁が混ざりしたたっている。
「歯ぁ立てんなよ」
ソンジュンはギュジンの頭をつかんだまま腰をゆっくりと動かし、律動を繰り返す。
「んん”ッ!!!んーーっ”‘…………!!」
もはや口を閉じることも、舌を自分の意思で動かすこともできず、ギュジンはただソンジュンのものを受け入れるしかない。
「ン、ンンっ……ぉ”………ッ」
「あークソ、お前ホントに下手くそだな」
チッと短い舌打ちをするとソンジュンはペニスをギュジンの口内から引き上げた。
「げほッげほッ……お”ぇ……っ」
仰向けのままギュジンは勢いよく咳き込んだ。喉にこびり付くヒリヒリとした痛みが襲い、呼吸すらままならない。ソンジュンはギュジンの髪から乱暴に手を離し、代わりにギュジンのベルトに手をかける。
「…………っ?」
生理的な涙ですでに目を腫らした哀れなぼろ犬はいまだ咳き込みながらソンジュンを見つめる。ループからベルトを抜きおわり、粗雑に床になげつけるとギュジンのズボンを引っペがした。
「な、なんで……なんで脱がすの…っ…」
涙目で尋ねるが返事を聞きたくはなかった。出来ることなら耳を塞ぎたかった。
「もう分かってんだろ?自分がこれからレイプされるって」
まっくろな瞳を撓ませて笑う。ソンジュンはギュジンの足を掴み、持ち上げると自身の方に引き寄せる
「いっ……いやだ、やだやだやだッ!誰かっ誰か、助けて……っ!」
ギュジンが事の重大さを理解し、必死に助けを求め暴れようとするがもう遅い。ギリギリとソンジュンは足を掴む力を強め、ギュジンの股をわり体を押し付ける。圧倒的な力差を前にギュジンはひれ伏すしかない。ソンジュンはギュジンの後孔に唾を吐きかけると自身のガチガチになったペニスをあてがい、彼の吐息がかかるほど近くまで顔を寄せた。
「──ギュジン、お前が二度と俺に逆らえないように体に刻み込んでやるよ。せいぜい良い声で鳴いてみせろ」
ソンジュンはゆっくりと腰を沈める。
「ッ”〜〜〜〜〜!!」
ギュジンの腰ががくんと跳ね上がる。ソンジュンの圧倒的な賜物を腹の中で感じ、その刺激がギュジンの脳を余計混乱させた。腕を固定され、脚を閉じ行為を拒むことも許されない。自分に覆い被さるこの男がそれを悠々に物語っていた。
───ソンジュンに犯されている。
ギュジンは信じたくなかった。自分が雌犬のように哀れに声を荒げ、それをただ受け入れるしかない事実を。
「ひィ”ッ……ィ”っ」
どうにか喉から掠れ声を絞り出しその痛みを分散させる。ぐぷりと音を立て、内部の肉を掻き分け少しずつ最奥へ押し進む。
「くッ…………さすがに狭いな」
言葉とは裏腹にソンジュンは少しずつ動きを激しくしていく。ローションでもあれば良かったのだが、潤滑油がソンジュンの唾ひとつでは思うように動かすことが出来ない。体中から玉のような汗が吹き出るのを感じ、ギュジンは背のファブリックに爪を立ててひたすら彼の自己満足に堪えるしか出来なかった。
絶え間なくやってくる痛みに身を固くして声を張上げる。何度も揺さぶられ意識が遠くなるたび、ソンジュンは彼の頬を張り現実を分からせた。
「勝手に終わらせようとするんじゃねえよ」
とソンジュンがギュジンをたしなめ、小さな腰を鷲掴み持ち上げる。
───ときに、人間の体は不思議なものだ。数回の挿抜を繰り返したのち、ギュジンは自身の体が熱を持ち、少なからずともそれが不愉快なものではなくなりつつあるのを感じた。この状況下で彼の肉体は雌として屈服することに快感を覚え始めたのである。しかしギュジンがそれを知る術もなく、ましてやその事実に気がついたところで認めるわけではない。悶絶の声が少しずつ甘いものになり、遂には体が彼を求めるようにまでなってしまうまで。
「ぬ、ぬいてぇ”ッ………あ”あ”あ”ッ♡♡……………♡」
威勢だけはいいものの、強引な恋人の愛撫を一身にうける生娘のような嬌声が口から漏れる。ソンジュンが杭を抜き差しする度にカウパー腺液がギュジンの内太腿を伝い、ソファの布をしとどに濡らした。
「なんだギュジン、女みたいな声出して」
額に汗をかきソンジュンはせせら笑う。不意に手が伸び、ギュジンの頬を撫でた。冷たくて気持ちがいい。細く、それでいて力強い男の手だ。数回腰を打ち付けるとソンジュンはギュジンのフードを掴み、ひっくり返し、所謂寝バックの姿勢にさせた。
「ぉ”ッ、ぉ”ッ、ぉ、っ…………っ♡♡」
ソンジュンが腰を引くたびギュジンは低く唸るような嬌声を上げた。ソンジュンの体重がよりかかり、正常位の時よりも深く彼の脈打つものを感じさせた。熱い肉の隙間に入りこんだ体液は水音を激しくさせ、ギュジンを屈辱感の渦に叩きこんだ。
「もう、やめ……ッ、ふ、ッ、……やめて……っ”」
「は……ハハ、そう言うわりには随分気持ちよさそうにしてるじゃねえか」
「ち、ちがっ…………ぁ”ッ……ぐっ……♡」
ソンジュンがギュジンの腰を強く引き寄せ、打ちつける。革製のソファは2人分の体重がのしかかり、ギシギシと悲鳴をあげた。
「ッ…………すげえ締め付けるじゃねえの、ギュジン。そんなに子供欲しいか?」
嘲るように耳元でそう囁かれ必死に首を振るものの、体は正直なようでギュジンのナカはよりキツく締まった。快楽から逃げようと腰をくねらせるが、ソンジュンはそれを許さない。ギュジンの首を両の腕で抱きしめるように締め上げ、ピストンを早める。結合部からはぐちぐちと卑猥な音がなり、それが余計とソンジュンを興奮させた。
「はッ………は……ッ”…♡」
首を絞められ顔を真っ赤にし、息をするのも精一杯なギュジンは口をぱくぱくと開いた 。
「男に掘られてよがってんじゃねえよ、このクソビッチが…………ッ」
ばちゅんっ、と奥を叩かれギュジンは腰を仰け反らせる。
「あぁックソっ…………出すぞ」
「ゃだっやだやだやだッ…っァ、………あ”ーーーッ♡♡」
びゅくびゅくと精を注がれる。
ソンジュンはまるでギュジンを孕ませようとするかのように腰を強く押し付け、数回ドクドクと脈打ち最奥で果てる。しばらく余韻を楽しんだ後、ゆっくり引き抜くと中から少し粘度の高い精液が流れ出てくる。
「…………ッ♡…………ッ♡」
びくっびくっとギュジンのちいさな肩が震える。ソンジュンの体重に押しつぶされ、ぎゅーっとシートを握る力が強くなる。深い絶頂を迎え、残った余韻で雌犬のようにヘコヘコと腰を揺らした。
「ッ…………ふ……………クソギュにしてはなかなか良かったな」
ソンジュンはいまだにソファでぐったりしているギュジンの頬を再度叩くと立ち上がり、トランクスを引き上げズボンのベルトをつけ直した。ギュジンは首の締めつけからようやく解放され、肺に流れてくる空気と唾液を吸い込み、思わず咳き込んだ。
「後片付けしとけよ」
もはや頷く気力すらないギュジンに告げると、ソンジュンはカラオケボックスを後にした。1人部屋に残されたギュジンは体の震えをなんとか押さえつけ乱れた衣服を纏う。下半身の異物感が消えないまま立ち上がり、テーブルのスマホの電源をつける。暗い部屋の中だったからか突然の眩しさに目を細める。時刻はとっくに8時をまわっていた。母親からのメッセージと不在着信が何件も溜まっており、なんと返すべきか禄に回らない頭で考える。友達とカラオケに行っていた、と送りスマホを卓に置いた。ギュジンには暫く一人の時間が必要だった。
部屋は静まり返り、聞こえるのはどこからが聞こえてくる流行りの曲を楽しげに歌う声だけだった。
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新着メッセージがまた一件。
ギュジンは気が付かない。
ひび割れた液晶には、『またよろしくな』とソンジュンからのメッセージが表示され、数秒後にはまた暗く天井の壁を映した。