テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
タイトル「青崎島事件」
藤本直樹「ある日の、暑い、夏の日でした。皆、静かに、静かにくらしていました。私は青崎島の中小工事で働く人で、朝起きて、仕事して、寝る生活を送っていました。ただ、それだけでした」
警察「青崎島で起きた事件のあなた方の行動は、褒められるものではなく、責められるでしょう。しかし、経緯を話す義務は、あなたにも、島民にもあります」
藤本直樹「(10秒沈黙)」
警察「お願いします」
藤本直樹「…ある日、川で男の死体が見つかったんです」
警察「撲殺ですか?」
藤本直樹「はい。頭がぐちゃぐちゃなくらいには。皆、その人と関わりがあったと言うか、人見知りなもんですから、パニックになりました」
警察「どんな風に?」
藤本直樹「パニックと言っても、噂や、「アイツがやったんじゃないか」みたいな程度でした」
警察「続きを」
藤本直樹「皆、疑心暗鬼でした。何故なら、皆、誰がしたのか分からなかったんです。だから余計に、疑心暗鬼が強くなったんです」
警察「具体的には?」
藤本直樹「具体的と言われましても…そんな空気が漂っていたと言うか…皆、心の奥で「アイツじゃないか」と思ってたと思います」
警察「そして、あなたたちは?」
藤本直樹「皆、忘れようとしました。一件落着。その筈だったんです」
警察「筈だった?」
藤本直樹「…4年後の春に、漁船が女性の裸の死体を見付けたんです」
警察「関係は?」
藤本直樹「…ありませんし、顔も見たこともありません」
警察「外部の人間だと?」
藤本直樹「だと思いますが、ウチの島の漁船は、あまり島から離れてないので、本土の人が流れ着いたと言うのは無理に近いので、皆、その死体に怯えるようになりました」
警察「その死体は、本土の殺人事件の被害者のものだったと、知っていましたか?」
藤本直樹「いいえ」
警察「その海の死体は、犯人がボートを使い、青崎島に沈めたんです。真夜中ですから…目撃は?」
藤本直樹「(少し考えてから)無い…と思います」
警察「判りました…なぜ、死体に怯えるように?」
藤本直樹「川で誰が殺したかもわからない死体が見つかって、今度は誰が殺したかも、誰かもわからない死体が見つかったんです。怯えますよ、普通」
警察「その犯人が誰か、当時知っていましたか?」
藤本直樹「いいえ、私は知っていません」
警察「島の人間である「田中幸作」が、本土に居るときに交際女性とトラブルを起こし、殺害し、海に沈めたのも?」
藤本直樹「当時はわからない。誰も、誰が殺したか、誰が知っていたかなんて、誰も知らなかったと思います」
警察「話が逸れましたね。その海で見つかった死体を山に「埋めた」のは事実ですか?」
藤本直樹「…はい。忘れたかったんです。皆、この死体を。ある者は「呪い」、ある者は「祟り」だと、非現実的な空想にすがる人もいるくらいでしたから」
警察「そういえば、最初の川の殺人事件の件は?」
藤本直樹「……死体が見つかってすぐに、燃やしました」
警察「何故ですか?」
藤本直樹「……覚えていません」
警察「続きを」
藤本直樹「…それで平穏は戻った…訳ではありませんでした。島最大のボンボンである「佐藤浩二」が耐えきれずに、警察に通報しようとしたんです」
警察「…」
藤本直樹「…燃やしました。その人を、その人と家ごと放火しました」
警察「あなたが決めた事ですか?」
藤本直樹「いえ、数人です。5か、8人程度でした」
警察「なぜ放火しましたか?」
藤本直樹「…自分達の死体遺棄が…この2件の殺人事件がバレるのが、怖くて…自身の保身のために…放火しました…。叫び声と木がパチパチと燃える音に怯えながら……私は…床につきました」
警察「そうですか」
藤本直樹「……ですが…放火を知らない島民はまた、怯えるようになったんです。…神に祈りを捧げるまで追い詰められました」
警察「…」
藤本直樹「川の死体と海の死体の遺棄と、放火の件で、島民はケンカや意見の食い違いだけで、「お前があの犯人だ」、「お前はあの犯人と関わりを持ってる」とまくし立ては、村八分…最悪の場合、殺人事件にまで発展しました」
警察「そして、異常を感じた交番の人が本署に報告し、明るみになった…と。間違いはありませんか?」
藤本直樹「ありません」
警察「…最後に、何か質問は」
藤本直樹「川の殺人事件の犯人は、誰だったんですか」
警察「…あなた達が放火で殺害した、「佐藤浩二」です。佐藤氏は、被害者である「新井誠」と友人の「西川清子」の3人で釣りをしていました。その最中に隙を見て殺害し、協力者である西川氏に口封じとして現金10万を渡した…と。被害者はもともと、金を借りては滞納する人だったようで、犯人からも周りからも恨まれていたようです。佐藤氏が二件目の際に通報しようとしたのは罪悪感からかはわかりませんが、西川氏が話した事に変わりはありません」
藤本直樹「…そうでしたか」
警察「何か?」
藤本直樹「…皆、狂っていました。幽霊だとかにすがり、正当化し、そして人を殺す時点で…最初から、普通じゃなかった」
警察「この島は、日本本土から離れた離島、漁などが盛んであり、青崎島名物のカニが有名。しかし、その島自体を知る者も居らず、また、小さな交番や駐在所があるだけで、本土からのアクセスも悪く島民158名……。こう言う閉鎖的で外部との関係が曖昧だから起きたのかも知れません…。ありがとうございました」
4,129
49
ねこむすび
9
100
コメント
42件
臆病者の腰抜けだらけの島かぁ… よく150人以上も残ってたもんだ 普通、そんな臆病者やら腰抜けだらけなら農業なら狩りやら生業にようとしたら死と同居してビビリ散らかすのに
うわ、めっちゃ重い展開やった…閉鎖的な島で起きた二つの殺人と、その隠蔽のために更なる犯罪が連鎖していく感じ、ゾッとしたわ。警察との会話だけで島の狂い方がじわじわ伝わってくる構成がめっちゃ上手い。「覚えていません」のとことか、逆に記憶があるのが怖すぎる。第1話でこの雰囲気と伏線、めちゃくちゃ好みやわ。続きが気になりすぎる🔥