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8 - ――記憶の終点、6色の夜明け(最終話)

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2025年08月07日

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最終話です!!















――記憶の終点、6色の夜明け







朝焼けが、館を包んでいた。

窓の向こうで、橙に染まる空が、6人を静かに照らしている。


誰もが黙っていた。

けれど、その沈黙は重苦しさではなく、深く繋がった心の余韻のようだった。


昨夜、悠が自分の記憶を語り、すべての想いを曝け出してくれた。

それによって、6色のドレスはようやく揃った。

それぞれの痛み、悲しみ、そして願い――

全員が「一人じゃない」ことを確かめ合った朝だった。


「みんな……ありがとう」


悠がぽつりと言うと、ほとけが優しく微笑んだ。


「僕らも同じ気持ちだよ。ありがとう、悠ちゃん」


「さぁ――」

りうらがゆっくりと立ち上がった。


「最後の扉を、開けに行こう」



6人は並んで、あの不思議な回廊を歩いていた。


床に敷かれた赤、白、桃、水、青、そして黒の絨毯が、6つの足元で一つに溶けていく。

それはまるで、彼女たちの絆が一つに結ばれていく道筋のようだった。


やがて、巨大な扉が姿を現す。


そこには金色の文字が刻まれていた。


【あなたたちが心を重ねたとき、この館は終わりを迎える】


誰からともなく、手を繋いだ。


それは、これまで何度も繰り返してきた儀式。

でも今は、少し違う。


手の温かさが、心の奥まで染みていく。


悠が最後に、一歩前へ出る。


扉の前で振り返り、6人を見渡す。


「うちは……この館に来て、初めて本気で生きたいと思えた」


彼女の目には、もう迷いはなかった。


「またどこかで会えるって、信じとるから。

みんなも、自分を嫌いにならんといて。……な? 」


小さな頷きが連鎖して、最後に全員で扉に触れた。


すると、世界が光に包まれた。



――目を覚ましたとき、りうらは病室にいた。


点滴のチューブ、機械音、まぶしい蛍光灯。

確かに見覚えのある「現実」。


「ここ……」


「目が覚めたんですね、りうらさん!」


看護師が駆け寄り、医師が大声で指示を出す。

そのざわめきの中で、りうらの目から涙がつぅっとこぼれた。


(夢じゃなかった……夢じゃ、なかったよね?)


枕元の引き出しを開けた。

そこには、誰かの落としたような小さな紙片があった。


《会えて、よかった。また、きっと会おう。――黒のドレスより》


その瞬間、心が確かに繋がったと知った。



ほとけは、退院した翌日、空を見上げていた。


(また誰かに「天使みたい」って言われるかもしれない)


(でも、僕はもう……ちゃんと、「僕」として生きていく)


遠ざかっていた母の笑顔も、少しずつ取り戻せそうだった。


「今度、誰かの“救い”になれたらいいな」


ポケットに、青いリボンが結ばれた小箱が入っていた。


その中には、あの館で描いた6人の肖像画が入っていた。



初兎は、いつもの坂道を、自転車を押して歩いていた。


日常が戻ってきても、ふとした瞬間に胸が熱くなる。


「はぁ、懐かしなぁ……けど、もう泣かへんで」


空に向かって、指で円を描いた。


「次会ったときは、あんたらにお弁当作ってあげるんやからな!」


その手には、館で交わした“再会の約束”が書かれたメモ帳が握られていた。



ないこは、駅のベンチで電車を待っていた。


膝の上には、ノートパソコン。


画面には、自作のゲームのキャラクターデザイン。


赤、白、水、青、桃、黒――6人の少女が並んでいた。


「6色のドレスってタイトル、どうかな……」


微笑みながら、自分に頷いた。


「今度は、フィクションとして誰かの心に残せたらいい」


その目には、確かな未来が映っていた。



いふは、学校の廊下を歩いていた。


すれ違う人々が、自然に目を向けてくる。


けれど、もう“強がる自分”を演じなくてもいいと知っている。


「なぁ、あのときお前らと話せて、ほんま良かったわ」


誰に向かって言うでもなく、笑いながら空を仰いだ。


(ウチも、弱さを見せてもええんや。せやろ? 悠)



そして――悠は、また“絵”を描き始めていた。


静かな公園のベンチで、スケッチブックを膝に乗せ、鉛筆を走らせる。


描かれていたのは、6人の少女たちが並んで笑っている風景。


「今度こそ、夢じゃなくて、現実で会いに行く」


そう決めて、携帯のホーム画面を6人の写真に変えた。


ほんとうに出会って、笑って、泣いて、心から繋がれた。


“たとえ夢だったとしても”――


「うちにとっては、本物やった」



季節は巡り、春が訪れた。


どこかの街の交差点。

偶然にも、6人の少女が同時に立ち止まる。


目が合い、誰かが「あっ」と声を漏らした。


そして――


「やっぱり……!」


「うそやん、ほんまに?」


「久しぶり……!」


再会の瞬間に、涙があふれる。


誰かが言った。


「この世界で、また会えるなんて、奇跡やな」


そしてもう一人が答えた。


「奇跡やない。これは、“約束”やで」


全員の胸元には、それぞれのドレスと同じ色の、小さなリボンが結ばれていた。


6人は再び手を繋ぎ、笑った。


今度は、夢じゃない。現実の絆だった。


エピローグ


――ある古びた洋館にて。


管理人の青年は、静かに微笑んでいた。


「また6人、救われたようですね」


背後には、棚に飾られた6色のドレス。


赤、白、桃、水、青、黒――


それぞれの色が、確かに輝いていた。


「さあ、次の願いを聞きましょう。

あなたの痛みも、ここで癒やすことができるかもしれませんよ」


扉が、また一つ、静かに開かれた。




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