ズズズ……
暗闇の中、バルドの意識は沈みゆく。亡霊たちが囁くようにうごめき、彼の鎧に纏わりつく。
「お前も……我らの一員となるがいい……」
どこからともなく響く、無数の怨嗟の声。船乗りたちか、あるいはこの船に囚われた亡霊たちか。
しかし――
「フン……俺を誰だと思っている」
バルドは静かに呟いた。
その瞬間――
バキィッ!!!
亡霊が、まるで人形のように砕け散った。
「なッ……!?」
葵の亡霊たちがざわめく。しかし、バルドは動じない。鎧がきしみ、彼の体から重々しい圧が放たれる。
「俺は…船で生まれた。船の血肉を吸い、ともに生きてきた。船が俺の母胎……ならば、亡霊ごときが縛れると思うなッ!!」
ズドォォォォン!!!
バルドの体が衝撃波を放ち、亡霊たちが吹き飛ぶ。影の世界が崩壊し、バルドの肉体が再び現実世界へと戻り始めた。
――船上。
「……チッ。やっぱり、簡単には沈まねぇか」
葵が舌打ちする。トアは遠巻きに見つめながら、苦笑した。
「いやいや、これマジでやばくね? 普通に戻ってくるんだけど」
ズゥゥン……!!!
甲板の床が軋み、ひび割れ、バルドの影がせり上がる。そして――
「……終わりじゃねぇぞ」
バルドが姿を現した。
片腕が亡霊化している。
右腕だけが黒い靄に覆われ、異形の存在となっていた。
「俺を亡霊にしようとしたな? ならば、その力を利用させてもらう……!」
葵は目を細める。
「……なるほど。強敵ほど、簡単には死なないってことか」
「いやいや、もっと驚けよ!」
トアが叫ぶが、葵はニヤリと笑う。
「むしろ、そっちの方が燃えるってもんだろ?」
バルドの亡霊の腕がうねり、黒い刃を形成する。
「――第二ラウンド、開始だ」
戦いは、まだ終わらない。
コメント
2件
今回も神ってましたぁぁぁ!!! トアちがまた戻ってくるとは思わんかったよ、、すげえ!(?) いやーにしてもバルっち厄介やね、、、なんとか頑張れぇ!!!!(( 次回もめっっっっさ楽しみいいいいぃ!!!!
葵ちゃん冷静…!!バルドさんすげぇ…!!!(語彙力)続き楽しみです!!