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緑茶は飲めないが紅茶は飲める
緑茶は飲めないが紅茶は飲める
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やっぱ毎回上手い! これからも頑張ってください!
きみが服を脱ぐと、トランペットの音がしてきちゃう。
なんかまるで祝福のラッパ。聞いたことある音楽から、知らない楽器まで。
僕は真面目で惨めで目立たないから、画面からいつも見切れてるみたい。
話がぜんぜんきみたちと噛み合わない。
「これは私たちのヤマよ!」
叫んだ佐藤を押し退けて名前は階段を飛んだ。
風見の目の前に出てくると、名前は指差す。ぎょっとして僕はすぐやめさせようとした。遅かった。
「あんた!顔は嫌いじゃない!」
佐藤が口をあんぐりして絶望の眼差しを向ける。
瞬間、風見が片手にある珈琲をぶっかけた。
「…飲みかけでよかったら」
わなわなする名前は冷たい視線の風見がバンに乗り込むと、叫んでスーツを脱ぎ出す。
「あっつーー!サイテー!性格わる!事件もまだ誰にも見せてないブラもやられたぁあ!」
「あぁー!」
高木が佐藤の目を覆う。佐藤は手をわたわたした。
「はぁ!?なんでわたしを隠すのよ!高木くんっ…!」
「今の公安のバン…」
角から出てきた白鳥が、意味不明だが混沌した映像に珈琲を吹いた。
ほら、あたまの中はトランペットのリズム。
色んな音がする。きみを見るとね。
僕だけがきみにその気にさせられて、いつもたまにしか主役になれないのだってそのせいなのにね。
「わー!」
高木はトイレでドアを閉めないで、パンツをおろして座っている名前と遭遇した。
たまらず顔を覆って腰を折った。意味がわからない。男子トイレ、って書いてあったのに。っていうか刑事になってからずっと男子トイレだよって言いたかったのに。
「…わからない…」
「な、なにが…」
今の状況をトランペットが音階で教えてくれたらいいのに。
恐る恐る少し顔を向けると、きみは頭を抱えてしかめ面。
「佐藤が乗り込むのは松田のせいだけど…風見は…わたしになぜ珈琲をかけたの?」
「はあっ?」
「飲みかけでよければ、って…手で渡せばいいじゃない。ツンデレなの?」
「あの…」
しん。となったトイレのレモンの匂いがして、ドアが開いた。
掃除のおばちゃんだった。
「ごめんねーあっち終わったわよ」
ドアはまた閉じた。
「…女が男子トイレを開けるのはいいのに逆はセクハラなのもおかしい…年齢は関係ある?」
真面目に聞いてくるきみに、僕はまた色んな音を聞いていた。
「…あの…すみません。僕に言われたくないかもしれませんが…よく刑事になれまし…」
「名前えっ!」
佐藤が男子トイレを思いきり開けた。
「行くわよ!いいの出た!?」
名前はパンツをはき出す。だっと駆けていく名前が出ると、佐藤は不思議そうに高木を見た。
「なにやってるの?あなたもよ!早く済ませて!」
僕がおかしいのか、この人たちなにか変なんだけど。
個室のドアが開いて白鳥が出てきた。
「逃げてきたのに」
「んん!」
と業務日報を開く高木と佐藤がその声に飛び上がる。
名前は紙パックのストローを指差した。
「向き逆に入れた!嫌な予感がする!」
「…あぁ…ってちょっと」
佐藤がこめかみを押さえる。
「高木!こっちね」
「えぇ?僕そのヨーグルト味飲めな…」
「こんな大事件なのに勝負下着でいられないなんて…」
「だからー!」
高木はまた顔を覆った。ヒーターの上に遠慮なくぶらさがる下着をもぎとると、また彼女は服を脱ぎ出した。
「…っぺーちゃん!」
そんな呼び方だったの?と佐藤も警部も、変装した高木にわざとらしく泣きながらしがみつく名前を横目で見た。
「…こちらからの情報は以上です」
ふ、とスライドが暗くなると風見は壇上を去る。というか、去りたかったんだろう。
「さあ!着替えたから!」
「…」
風見は目の前に出てきた名前に、みるみるうちに顔を歪ませていく。
「お…名字…」
慌てる警部に、コナンがはは…と小さく呟くように笑った。
「ほら、おいでっ!裕也?」
「!?」
明らかにその表情は怯えたものになっていく。無理もない。
「だから違うっつってんだーー!」
「ああ!そっくりだわ!」
佐藤も口元を押さえて泣きそうになる。
「ぺーちゃんより今んとこ、えー…」
名前はまた風見に指差す。
「高木の次に好き!かも!うそついた…えと…」
ぐっ!と名前は指差す力をいれて笑った。
「しめ鯖の次!だから3番目!」
「あぁ?」
ついに苛立ちだした風見に、高木松田は慌てて風見の背中を押して行かせた。
「っふ、ふざけてんなよ…!こ、この忙しいときに…!」
今僕のこと好きって言ったよね?でもしめ鯖の次なんだ。
ほら、またトランペットが鳴る。たくさんの恋愛に散っていった偉人のピアノ、ヴァイオリン、今でも続く、よくわからないきみにしがみつく僕の心が鳴ってる。
「ごめんなさい松田くん!しめ鯖の美味しいお店に連れていく約束っ…」
うっ…と佐藤が涙をこらえる。警部が頷いてその肩に手を添えた。
「なんだこれ?千葉刑事大丈夫か…?」
コナンが腕を組んだ。
「高木!」
「!」
「がんば!」
ぐっ!と名前は胸元を思いきり開いて見せた。ぶらさがっていた勝負下着を、ついに高木はがっつり見た。口を思いきり開けたまま。
きみが服を脱ぐと、トランペットの音がしてきちゃう。
頭の中で祝福のラッパが鳴り響く。
僕はそれに耳を塞げないんだ。だって、それは自分の鼓動と同じ速さで、それは…きみも知ってる歌だから。