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#若井滉斗
nono 🍏🎹
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別にどうなりたいとかどうしてほしいとかそういうわけじゃない。
最初からそんなことはあり得ないってわかっていたし、あくまでも憧れの人、住む世界が違う人、人生の先輩のような?それなのに全く偉そうにしたり、自分語りなんてしなくてフラットで、けどさり気なく俺の気持ちに気づいてくれるところが···気づいた時には『好き』になっていた。
ただ、それだけ。
「ご飯いこー」
ニノさんから連絡が来るのはいつもタイミングが良かった。
俺の仕事の合間とかわかるのかな?
向こうも忙しいはずなのに、合わせてくれるしいつでもいい、みたいなニュアンスで誘ってくれることが嬉しかった。
またご飯いきましょう、飲みにいきましょう。
当たり前の挨拶みたいに交わされる言が彼は本当のことで俺はいついつあいてる、ここいきたい、みたいに具体的なスマートなお誘いに、2人きりで会うことが増えてメッセージのやりとりも、電話も良くした。
夜だってのに真夏の東京は熱帯夜ですぐにじわっと汗をかくのを感じる。
お店の前で律儀にも待ってくれていた彼は涼しい顔をしているけど。
「まぁーた忙しそうだね」
「···ニノさんには言われたくないです」
涼しい部屋で乾杯してから なんのことか、と笑った彼はきっと忙しいはずなのにあんまり仕事の話をしない。
だからたまに映画が、とかセリフがねなんて言ってくれると俺だけに言ってくれてるんじゃないかって嬉しくなる。
俺の仕事のことにも決してあれこれ聞いたりしないけどファン、のような立ち位置で公開しているものに関しては凄く見てくれていて、それもありがたかった。
その日もゲームの話とか音楽の話で盛り上がって、でも珍しく彼のお酒が進んでいた。決して泥酔したり絡んだりしない彼が「色々あるからね···」と小さく呟いた時、こんないつもアイドルとして表舞台にたって、もう地位も名誉もえると思っている彼でも悩むことは尽きないのだと知った。
「そろそろ、帰ろっか。あー、ちょっと飲みすぎた···元貴といるとさ、なんか楽しくてねぇ、飲みすぎちゃった」
そう言って俺の肩に掴まった時、やっぱりいつもと今日は違う、と感じる。
「···何があったんですか?」
「んー?なんにもないよ、ただ今が楽しいだけ」
いつも通り涼しい顔して、けどその言葉は弱く聞こえて俺の支えなしではふらついてしまうくらい、たぶん、酔っていて、何があったのだと思う。
こんな日は、次会った時にちょっと照れたような顔をするから、それも俺は好きだった。
「···ここから近いんで俺の家来て、ちょっと休みましょう」
「···悪いねぇ」
タクシーの中で彼は目を瞑って肩にもたれかかってきた。
別に酔っているだけ。
意味なんてない。
でも家に着くまで出来るだけ長くその重みを、温もりを味わいたくて身じろぎひとつせず、ただじっと彼のことだけを考えていた。
「着きましたよ」
「相変わらずオシャレでうちより広い」
「何言ってるんですが、全く」
水どうぞ、と渡そうとした時には彼はソファに小さくなって寝転んでいた。
すぅ、と寝息が聞こえてそれ以外は自分の鼓動がうるさかった。
「ニノさん、お水」
「······」
「···寝ちゃったの?」
「······」
返事はない。
その彼の眠ったソファの近く、床に座り込んで寝顔を見つめる。
安心しきったように、見える。
髪に触れるとサラサラと気持ちよく、
さっきまでの暑さが嘘のように冷房が効いた部屋でニノさんの頬だけが温かい。
好きだと言ったらどんな顔をするんだろうか。
驚く?皆俺のこと好きになっちゃうんだよね、なんて冗談みたいにして返されるんだろうか。
それか真面目で真剣な時には茶化したりしない彼だ、気持ちは本当に嬉しいけど、なんて言われちゃうんだろうか。
そもそも結婚もしてる彼に受け入れてもらえるとか喜んで貰えるほどの能天気さ持ち合わせていない。
現実は見えている···はずだった。
けどどうしてかなぁ、それなのに好き、な気持ちは、消えてくれない。
会う度に好きだと思う。
その体を抱きしめてみたいと思う。
加速する気持ちも、いつかは消さなくちゃいけないのに。
「···好き、です。ニノさん、好きなんです···ごめんなさい」
小さく、消えそうな声で囁いて···いけないとわかっていても、気持ちは溢れて。
微かに···けど、その唇に自分のを重ねる。
少しひんやりした唇。
一瞬触れ合っただけのキスなのに。
泣きそうなくらい幸せなのにあまりにも寂しくて、ただ静かに彼の近くに座っていた。
10分くらい経った頃、彼は起き上がって、俺の髪を撫でた。
「すっかり寝てた···ごめん、けどおかげでスッキリした。明日からも頑張れそう」
久しぶりに深く寝た気がする、なんて笑って伸びをした彼にお水を渡してタクシーを呼んで、玄関まで見送る。
本当はもっといてほしいよ、なんなら泊まっていったら、と言いたかったけど···彼には帰らなきゃいけない場所があるから。
「ありがとうございました、また···次は今日教えてくれたパスタのお店、いきたいです」
「うん、行こう。···なぁ、元貴」
「はい?」
「元貴といると、なんか素でいられる気がして···だから、こんななって···そんな存在って、少ないからさ。これからも気を使わない大切な友達、として···一緒にいてほしい。出逢えて良かったと思ってるよ、本当に。ありがとうね」
「···ありがとう、ございました」
じゃあね、と彼は今日一の笑顔を見せて俺の頭をポンポンと撫でて帰って行った。
見送って、背中が見えなくなって、部屋に入ってバタン、と扉が閉まった音を聞いて彼が眠っていた場所に倒れ込んだ。
彼はきっと、俺の気持ちに気づいたんだ。キスしたことも、好きだと言ったことも全部気づいてて、それで···普段言わないような、あんなことを言って帰ったんだ。
俺よりずっと大人だった。
俺のことを傷つけないように、関係が壊れないように、けどちゃんと答えを置いていってくれた。
「···けど、俺は···」
わかってる、わかってるのに涙が溢れて止まらなかった。
けどそう言ってくれたから、俺は諦めて、友達でいるしかない。
だから今日だけは···今日だけは、今までの感情を思い返す。
「好きでした···本当に」
ほんの僅かに残った大好きな人の匂いが消えるまで、俺は泣いた。
コメント
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お疲れ、はるかぜ。今回の19話、めっちゃ刺さったわ…。 元貴の「好き」が溢れてるのに、押さえきれなくて、でもダメだとわかってる感じがひしひし伝わってきた。寝てるニノさんに触れるシーンとか、キスの一瞬の描写とか、短いのに胸がぎゅっとなる。そして何より、気づいてたニノさんが“友達”って線を引くところ、ああいう優しさが一番辛いよな…。元貴の涙、もらい泣きしそうになった。