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シャオロンは一度深呼吸をし、胸を張るようにしてロボロを見つめた。その瞳には、普段の少し小動物のような無邪気さとは違う、強い意志が宿っている。ロボロの鋭い視線が、彼の内面を透かすように感じられ、その瞬間、シャオロンの心は再び揺れ動くが、それでも伝えなければならないという思いは強く、言葉が自然と口をついて出た。
「ロボロさん、俺は…あなたに、伝えたいことがある。」シャオロンの声は、普段の軽やかさとは異なり、少し低く、真剣だった。
ロボロはその声に少し驚き、立ち止まった。普段は余裕を見せる自分でも、シャオロンの目の前ではどうしてもどこか弱さを感じてしまう。彼の瞳が、まっすぐに自分を捉えているのが、あまりにも直球すぎて、どこか居心地が悪くなる。だが、その感情を振り払うように、ロボロは軽く微笑みながら言った。
「…伝えたいこと、ね。何かしら?」
シャオロンは一瞬、言葉を探すように間を空けた。その沈黙がロボロを少し焦らせる。やっぱり、何かを考えているのだろうか。それとも、ただの遊びだったのか…。
シャオロンがその視線をロボロに向け直した時、彼の顔に決意が浮かんでいた。それはロボロが今まで見たことがない、少し強気で真剣な表情だ。彼はやっと口を開く。
「俺、ロボロさんが…どうしても気になる。あんたに、惹かれたんや。」シャオロンの言葉は、まるで弾けるように空気を切り裂いた。
ロボロはその瞬間、息を呑んだ。自分の予想とは違う答えに、少しだけ驚きと興奮が混ざり合った。その告白に、まるで時間が止まったかのように感じられる。
「…あなたが?」ロボロはもう少しだけ冷静になりたくて、声を少し低くして答える。だが、内心はどうしようもなく高鳴っていた。シャオロンがこんな言葉を口にするなんて、少し前までは想像すらしていなかったからだ。
シャオロンは少し顔を赤らめながらも、真剣な眼差しをロボロに向け続けていた。「うん、俺はロボロさんの強さに惹かれてる。それと同時に、…なんて言うか、あなたの冷たさみたいなところにも、引き寄せられる。どうしても、気になってしまうんだ。」
ロボロはその言葉を聞いて、胸の中で何かが大きく波打つのを感じた。強さ、冷たさ。そう言われると、なんだか自分がますます理解されないような気がして、でも、同時にそれが悪い気分ではなかった。
「シャオロンさん、そんなに言われても…」ロボロは少し微笑みながら、でもその笑顔にはどこか複雑な感情が混じっていた。「でも、私に近づくのは、やっぱり無理よ。」
その言葉に、シャオロンの表情が少しだけ曇る。だが、それでも彼は諦めず、さらに一歩踏み出した。「わかってる。あんたが言う通り、俺なんかじゃ釣り合わないかもしれん。でも、どうしても言いたかったんや。」
ロボロはその言葉に、心のどこかで引き寄せられるのを感じるが、それでも自分に厳しく言い聞かせた。「でも、私はそんな気持ちを受け入れられない。あんたは、あんたの人生を大切にして、どんどん前に進むべきよ。」少しだけその声に強さを込めて、ロボロは言葉を続けた。
「それが私にできる、唯一の助言よ。」
その言葉を聞いたシャオロンはしばらく黙ってロボロを見つめ、やがて深く息を吐いた。「…わかった。でも、俺はあきらめんよ。どうしても、あんたを守りたいと思うから。」
ロボロはその言葉に、また一度胸が震えるのを感じた。それが愛情から来ているのか、別の感情から来ているのかはわからない。しかし、今まで感じたことのない強烈な何かが自分の中に確かに存在している。それをどうすればいいのか、まだ答えは見つからない。
しかし、シャオロンの目には決して引き下がらない覚悟が宿っていることを、ロボロは感じていた。
その日から、ロボロは夜の街に来なくなった。
ロボロが夜の街に姿を見せなくなったことに、シャオロンは心の中で深い失望を感じていた。あれから一度も、彼女の顔を見ることがない。もちろん、あの日の告白の後、何か変わったわけではないと自分に言い聞かせていたが、どこかで彼女がまた現れることを期待してしまっていた。
夜の街を歩くたびに、以前のようにロボロの姿を探してしまう自分がいる。だが、どんなに探しても、彼女は現れない。まるで、あの日の会話すらなかったかのように、ロボロは遠くに行ってしまったような気がして、シャオロンは胸が苦しくなるのを感じていた。
それでも、夜の街で過ごす時間を無駄にすることはできなかった。仕事としてでもなく、何かの理由でそこにいるわけでもなく、ただただその場所にいる自分に嫌気が差し始めていた。それでも、ロボロが現れるその瞬間を、どこかで待ち続けているのだろう。
そんな日が続いたある日、再びロボロの姿を見かけた。彼女が歩いているのを遠くから目撃したのだ。シャオロンは自然に足を速め、その姿に近づいた。
そして、ついに彼女に声をかけることができた。「ロボロさん…!」
ロボロはシャオロンの声を聞いて、驚いたように振り返った。そして、彼女の目は一瞬、何かを決意したかのように強く見えたが、その後、冷たさを取り戻した。
「…何か用?」ロボロの声には、どこか冷ややかな響きがあった。
シャオロンはその冷たい言葉に胸を締め付けられるような気持ちになったが、それでも諦めるわけにはいかないと心に決めていた。「なぁ、どうしても無理なんか?俺、あんたを守りたいんや。」
ロボロはその言葉にほんの少しだけ目を細め、そしてふっと冷ややかな笑みを浮かべた。「守りたい?私は守られるような存在じゃないわよ。」
その言葉に、シャオロンの心はさらに深く傷ついた。しかし、彼はそれを隠すように、強く言葉を続けた。「わかってる。でも、それでも俺は、あんたを…」
ロボロはその言葉を遮るように手を振り、彼を見つめながら静かに言った。「もう、私のことを追わないで。」
その一言に、シャオロンは言葉を失った。目の前のロボロは、強くて、冷たい、どこか遠くの存在のように感じられた。自分の気持ちが届かないことを、はっきりと実感した瞬間だった。
「…じゃあ、俺、もう…」シャオロンは言葉を呑み込みながらも、そのままロボロを見つめる。胸の中には言い表せない感情が渦巻いていた。愛情、欲求、無力感。
ロボロは一度だけその目をじっと見返すと、少しだけ息を吐き、そのまま背を向けて歩き出した。シャオロンはその背中を見送りながら、しばらく動けずに立ち尽くしていた。
ロボロが背を向けたその瞬間、シャオロンは深く心の中で、何かが決定的に変わったことを感じていた。もしかしたら、自分がこれまで追い続けていたのは、ロボロという人物ではなく、ロボロを守りたいという自分の理想だったのかもしれないと。
それでも、その気持ちはまだ消えなかった。何度でも立ち上がり、再び会うその日を信じて、シャオロンは歩き続けることを決めた。