今ガチメンバーと久し振りに集まって、沢山遊んだ。最近は私たちの間に亀裂が走り、仕事とはまた別の意味で気軽に会えなくなっていた。それは私たちも例外ではないけど、ルビー達みたいに深くは考えてない。アクアが潰れちゃわないように、静かに見守ろうとみんなで決めた。帰ってきたばかりのアクアは、今より精神がボロボロで、それを隠そうとする姿が、見ていられなかった。あんな、怯えた表情はもうさせない…させたくない。
「うーん…それにしても、アクたんのあの顔、なにかあるんだよねぇ……」
私以外、誰も気が付かなかった。あかねは分からないけど、あの様子じゃ、多分気づいてない。きっと、気づいてたらアクアの傍から離れない筈。あかねは、何としてでもアクアを守ろうとするから。
「なんで、私なのかな……」
正直、荷が重い。決して嫌じゃない。私だって、アクアを助けたい。けど、私だけじゃ、何も行動に移せない。
「どうしようかねぇ」
頭を抱える自分に嫌気がさす。でも、焦りは禁物。今日はもう寝てしまおう。寝室へ行こうとソファーから立つと、それと同時にインターホンが鳴った。
「……?」
時計を見ると、ちょうど21時をまわったところ。1人の芸能人として、警戒心を強める。アイのようになってしまったら、ルビーとアクアのトラウマを強く刺激してしまう。
『メムさん。夜分遅くにすみません。私、吉祥寺です!アビ子先生と……鴨志田くん?もいます!』
「うぇっ!?吉祥寺先生!?」
びっくりしすぎて変な声が出た。慌てて玄関のドアを開ける。
「こんばんは〜。いきなり来てしまってごめんなさい。連絡はしたんだけど、返事がなかったので、勝手にお邪魔させていただきました」
吉祥寺先生の言葉に、首を傾げる。多分考えごとに集中していて、気づかなかったのだろうと思い、家に上がらせる。鮫島先生と鴨志田くんがずっと俯いているのが気になるけど、苦笑いしている吉祥寺先生と目が合う。
「…ゆっくり、話しましょう」
「はい。ありがとうございます」
よう分からないけど、まずは話を聞こうと思う。それから考えよう。
「姫川さんの様子がおかしい?」
それをどうして私に言ったのかと思い、また首を傾げる。
「詳しいことは私も分からないんです。鴨志田くんに聞いただけなので……」
吉祥寺先生の視線が、鴨志田くんに向く。
「…いや、正直、オレもよく分からないんスけど……」
言葉を選んでいるのか、口数が少ない。2.5次元俳優の鴨志田朔夜。見た目も性格もチャラチャラしているけど、実力は本物。どんなキャラも自身に落とし込める適応型。有馬ちゃんと同じタイプの役者で、たまに参考にもしているらしい。
「っ……」
そんな人が、冷や汗を流しながら俯いている。一体、何が彼をそうしたのか。
「何か言ったらどうですか?」
「ひえっ……」
冷たい声がリビングに響き、自分が言われた訳じゃないのに思わず声が上がる。
「ちょっと、アビ子先生……!」
吉祥寺先生が慌てるが、鮫島先生は鴨志田くんの方に鋭い視線を向けたままだし、鴨志田くんは俯いたまま動かない。
「…アクアさんについて、何か知ってるの?それとも、その父親のこと?」
「っ…そ、うっス……」
「なに?何がそうなの?」
さっきまで何も話さなかった2人が、今は話し合おうとしている。鮫島先生が一方的に攻撃していて、見ていてハラハラする。
「片寄ゆらさんって、知ってますか?」
「っ……!」
片寄ゆら。ファッションモデルからドラマ女優まで、どんなことでもこなす人気マルチタレント。個人的に気になって、雑誌を買っていたりした。
「知ってます!色んな番組に出ていたので、印象に残ってます!」
「そ、そう!多分その人っス!1度だけ、出演する作品が被って、それから仲良くさせてもらってる先輩で……」
「あ……」
小さくなっていく声に、今片寄ゆらは行方不明になっていることを思い出した。かなり時間が経っているから、もう亡くなっているかもしれないと、ネットニュースで見かけるようにもなった。
「…あの、変だと思うかもしれないけど、今から話すこと、信じて聞いてもらえますか?」
真っ直ぐな瞳を、私たちに向ける。
「…信じるよ。だから、私たちに聞かせて」
鮫島先生の言葉に、私と吉祥寺先生も頷く。
「━━ゆら先輩、もしかしたらカミキヒカルのところにいるかもしれない……です」
ー終ー
コメント
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続き待ってます!!!(*^^*)