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どうしても、どうしても アメリカの独立後に誕生日パーティに招待されたアーサー
っていう味覚音痴コンビを書きたかったから、セカキクの小説場ですがアップさせてください!ついでに読んでください!
CPなしでアルとアーサーって感じで書きました。
⚠史実
外はだんだん蒸し暑くなり、葉に緑が色づいてきた頃。いつものように服を着替え、ポストを見に行く。
アメリカが居なくなってからは随分静かな生活になった。キッチンにあるお揃いの食器も、今じゃ自然と戸棚の奥に隠された。あいつが使っていた部屋も今じゃ物置部屋になっている。
もう見慣れた。なんてことはない。
それが目に入るたび、そう自分に言い聞かせる毎日だった。
ポストを開け 目を通すと、いつもより装飾が派手な手紙が入っていることに気がついた。日本のイベントカードでもないし……。不思議に思い宛名に目を向けると、懐かしい名前が脳内に流れ、目を疑った。
byアルフレッド
手紙の裏面にはそう書いてあった。急いで表面を裏返すと、Birthday party invitation.と手書きで記されていた。誕生日会招待状だ。
独立後からは連絡もパッタリしなくなった。あんなことがあったし、手紙を書く気にもならなかった上に、電話も掛ける気にもならなかったからだ。唯一深く関わりがある日本にも聞きづらく、結局今のアメリカの様子なんて知らずに月日が経っていた。
「……あれから何年だ…?」
今更俺に誕生日の招待状を寄こすなんて。政治やら生活が安定したのだろうか。久しぶりに彼のことを考えたら急に心配になった。こういう時だけ親ズラになる自分もどうかと思うが……。
「……ん、あぁ日本。悪いな朝早くに」
『いえ。ご心配なく。こちらはお昼時なので』
「そ、そうだったな、」
「あぁそれで、聞きたいことがあるんだが」
『はい』
「そっちにアメリカから招待状って届いてるか?」
『あー、はい。届いていますよ』
「……その、今年が初めてか…?」
『?えぇ、そうですが。』
俺が嫌いだから今年から送った訳では無さそうだ。やっぱり独立後は忙しかったんだな。
「それだけが聞きたかったんだ。ありがとう日本」
『いえ。お役に立てたのなら』
「あぁ。じゃまた、世界会議で」
受話器を戻し、安心したのかどっと肩の力が抜けた。
……まぁ、だからといって正直、乗り気はしないことに変わりはなかった。なにより気まずいに決まってる。一応育てた身だからといって、俺に招待状を送ってくるアメリカの思考が理解できなかった。
(無神経な奴だとは思ってたが……ここまでとはな…)
だが、招待状を送られたからには、それに応えるのが紳士というものだ。俺の小さなプライドに付き合わされた体はクローゼットに手を伸ばしていた。
(……どうせ行くならちゃんと…な……)
1週間後。アメリカの誕生日会当日。招待状に書かれた会場へと向かった。初めてアメリカに足を踏み入れ、目を丸くする。独立から数十年の間に、不可能に近いほど発展した街並み、技術。どれも驚くようなものばかりで魅入ってしまう。
「アメリカの奴…どんな…」
「おーいイギリスー!」
反射的に声の聞こえた方へ体向ける。そこには何十年振りかのアメリカの姿があった。その姿は、別れた時よりも気持ち大人びて背も高くなっていた。表すなら高校生から大学生になった感じだろう。見た目が大人びても中身は変わらない彼に、なぜだか口が緩む。
「まさかホントに来てくれるなんて思ってなかったよ。何十年振りだい?」
「うーん、久しぶりすぎて話したいことが決まらないぞ。あれも話したいしー、あーあれも!」
「まぁいいや!会場はすぐそこなんだぞ!イギリスが迷子にならないように探しに来てあげたんだ」
彼は俺に喋る隙も与えず、一方的に話し始めた。どんな接し方をしたらいいか分からない俺の腕を掴み、駆け足で会場へ連れて行った。
「とくと見てくれよ!ここが俺のPARTY会場さ!」
「お前……これはどういう…」
「ん?何がだい?」
「だって、ここに居んの俺とお前だけじゃねぇか、」
連れてこられた場所は、広い会場に風船や食器。装飾がしっかりされているのに対して、人っ子1人いない。俺達だけが会場に居る状態だった。
「まぁまぁ、細かいことは気にせずコーヒーでも飲むといいよ」
「……俺は紅茶しか飲まねぇ」
「それは好みの話しだろう…?昔オレンジジュースがぶがぶ飲んでたじゃないか、」
「それはそれだ。コーヒー飲むぐらいなら水道水でいい」
「ほんと、君の性格悪さにはカンプクするよ」
「そりゃどうも」
「てかお前、カンプクなんて難しい言葉どこで知ったんだよ…」
「そりゃもちろんJapanさ!」
「あー、そうかよ」
「君が聞いたんだから、もうちょっと反応してくれてもいいんじゃないか?」
「しただろ?これでもOver reactionのつもりだ」
「嘘つけ」
今の彼はすっかりアジアに夢中だ。やり取りしている日本の手紙にもアメリカの話が多くなっていたのを思い出す。日本が陽気な人と記していて、アイツは独立しても変わってないんだな。と、安心する反面少し寂しい気持ちになったのを覚えている。
「そういえば、最近お前アジアばっかだよな」
「まぁ、中国とも関係を築いていきたいからね」
「どんなに発展させる気だよ、」
「君と違って俺はユウチョウしてられないからね!いつだってFull throttleさ!」
無駄に大きな声を出して目をキラキラ輝かせている彼が眩しかった。俺はコイツにはなれない。嫉妬やら不安やらがアルへの純粋な気持ちを邪魔した。元々俺より下だった奴が急にのし上がってきたのだから、嫉妬ぐらいはして当たり前だとは思っていたものの、想像以上だった自分のそれに気持ち悪くなる。
「そうやって、またお前は俺を置いて行くんだな」
「…」
ハッと我に返った。頭で思っていた事が、つい口から漏れてしまった事に気付くのに、そう時間はかからなかった。気付いた時にはもう遅く、アメリカは目を細めながらこちらを見ていた。
「あ、いや、これは、ちがくて、」
言い訳が見つからなかった。正直な不安だったから。今まであんな近くにいた彼が自分よりずっと先に行ってしまったような気がしたから。いや、行ってしまったから。
もう子供でもないし、君の弟でもないんだ。
今から俺は、君から独立する。
何日振りだろう。脳裏に焼き付いたあの日の言葉が今になってフラッシュバックしてきた。
こんな事を言いたかった訳じゃない。これ以上距離が開くのが嫌で、前みたいにバカやりたくて、もっと一緒にいたくて、
下唇を噛みながら、顔を青くした俺にアメリカは近づいた。
せっかく2人きりになれたのに、せっかくアメリカは俺とよりを戻す為に歩み寄ってくれたのに、言いたいことも言えずに終わってしまうのだろか。自分の性格の悪さを恨んだ。
「君ってほんっ、とうにバカだね」
そう言いながら、彼は俺の頭に自分が被っていたクラッカーを被せた。
「は、はぁ!?」
彼の行動に戸惑いながら目を丸くする。
「最初から今まで、俺は君に追いついたなんて1ミリも思ったことないんだぞ!」
「そんな俺に追いつかれたくなかったら、クヨクヨしてないで俺のBirthdayを祝うんだね」
少し怒り気味に言ったアメリカに、俺は固まる事しかできなかった。予想もしてなかった言葉を頭の中で整理しながら口を開く。
「その…怒ってないのかよ、あんな事言って…」
「怒ってるに決まってるだろう?」
「怒ってるけど…別に君が嫌いな訳じゃないからね。そのおめでたい思考に怒ってるんだぞ」
「…」
子供じゃない。彼の言った言葉を再確認させられた。子供だったのは、どうやら俺の方だったらしいな、
「はは、見たいうちに随分立派になったもんだな、」
「……ありがとな」
苦笑い気味になりながら、輝く彼の目と合わせた。
「Happy Birthday、アメリカ」
「……それが聞きたかったんだぞ」
テーブルにはお揃いの食器が並べられていた。