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《思い出す》
「せんぱーい。」
「ふへ、!何…?」
「そんな驚かなくてもいいのに〜(笑)。」
お前が静かに後ろから近づいてくるからだろ。と思いながら、 俺は手元にある大量の楽譜をペラペラとめくる。
「あぁ、先輩も配られてるんですね。」
「この楽譜。」
俺をなんだと思っているのか。
一応先輩であることを忘れないでいてほしい。
「普通先輩から配られるだろ、」
チラッと893のほうを見て笑った。
「…(笑)いやぁ〜、ちょっと背も低いし、」
………今、俺ディスられたか?
「性格もひたむきだし、」
多分これはディスられている。
楽譜をもつ手に少し力が入っていた。
「………はぁ…?💢」
「無自覚受けだし〜〜〜(笑)!」
「後輩みたいに見えちゃって(笑)。」
「ッはぁ…!?」
893はこちらを見てにこにこと笑っている。
気持ち悪いほどに。
ただ俺にしか聞こえない声量で言ってくれただけいいだろう。
「実際めっっちゃ喘いでくれましたし(笑)。」
「可愛かったよ〜〜〜?」
そう言うと静かに立ち、フルートを持って移動しに行ってしまった。
今、俺の耳がとても熱い。
………思い出させないでくれ。
《言って》
今日は風が冷たい。
そんな日に限って部活が早く終わってしまったため、バス停で少し長い間、待たなければならない。
「〜〜〜♪ 」
「…そんな鼻歌歌ってたら、変な人だって思われますよ?」
「うわぁ!…893かよ」
「うーん、それも一理ある…。」
「えぇ〜!珍しく素直〜〜!」
893とは途中まで一緒になる。
しかもこのバスを利用する人は少ない。
毎日の、この時間、
周りを気にせず893と話せる時間。
この時間を少し楽しみにしている自分がいる。
沈黙の時間すらも楽しいのだ。
「ねぇ、先輩。」
「…ん?」
「えぇ、待ってさっきの表情ずるい。」
「大好き。」
急に放たれる”大好き”という言葉に固まる。
だんだんと顔が熱くなる。
こんなの俺じゃない。
「ぁ、」
「いっくん。」
「は、いっ!」
緊張して声が裏返る。
“俺はいっくんじゃない、014だ”という、いつもなら言えていることも、今は 声が出ない。
というか、今言えるような雰囲気ではない。
「好きって、言ってくれない?」
「は………」
「あぁ……っ?」
「無理…むりむり…。」
いつもヘラヘラしてるくせに。
そんな真剣にこっちを見つめないでほしい。
………でも、俺、本気で恋してるんだな。
「お願い…!」
「…………」
「好…き……………………です。」
想いを伝える事が、こんなにも難しいだなんて。
もう次はi、!
「ん゛ん゛ッ!?」
「何…っして!!!」
ここはバス停。誰に見られるかも分からない。
なのに、こんなところでキスなんてしていい訳がないだろ。
「ごめん、可愛すぎて。」
そう言うと893は目を逸らして少し笑った。
893らしくない。
…………。
「バス来たー。」
「もー、固まってないで乗るよーーー? 」
多分、893は根は優しい。
面倒見もいいと思うし、
頭も冴えてるし、スタイルもいい。
ただ、どこかのネジが外れている。
でも、俺はそんな奴に恋してる…。
「先輩…何してんの?」
そんなことを考えていると、待ちくたびれた893が俺の裾を引っ張る。
「あぁ…ごめん。今行く」