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urjp
貴族パロ
苦手な方は見ないことを推奨します。
今宵は満月。きらびやかなドレスや宝石を身に纏った人々が、たった1つの屋根の下に集まる。所詮貴族のお遊び、夜会だ。優雅な遊びだろう。同性と話すときはにこやかに、男性と話すときは目を光らせ、愛想よく振る舞う。しかしその笑みは相手が下という事実に安堵し、零れただけの薄い笑い。良い男性が居れば、どんな手を使ってでも関係を持とうと必死に思考している。
「…実につまらないと思わない?」
「それをここで言わないのが、貴族の約束ですよ」
執事であるttに声を掛けたが、日常とは打って変わって執事を完璧にこなされてしまう。仕方のないことだと分かっているからこそ、何度目かの溜息を零す。輝くシャンデリアを見つめながら、2階のフロアから参加者を眺める。本日、この夜会が開かれた理由は、この国の第一王子が提案したものだった。他国との友好を築く為らしい。ほんとかよ。結局、俺もまたこの国の隣の第一王子という身分。参加せざるを得なくなり、渋々来た。しかし、友好関係なんて築く訳でもなく。無料で飲食して、適当に笑って、目立たず適当な時間で帰る、それが本日の俺の役割。
「jp様、何時迄も2階に居ないで他の方々と交流してください」
「嫌だね」
「王子」
「嫌」
「…面倒くさい王者なほんまに」
「打首にするよ」
「いやぁ王子が世界一の王子!よっ、我らの期待の新星!!」
調子の良い執事だこと。しかしずっとここに滞在するのも、却って悪目立ちしてしまう。大きな溜息を吐き、重い腰を持ち上げた。執事は「少々馬車の様子を見てきます。くれぐれも、失礼のないように」と言って立ち去っていった。下の階へ降りた瞬間。
「これはこれは、jp第一王子ではありませんか!この様な場所でお見かけできるとは、今日の私は実に幸運だ」
「それはどうも」
「どうです、本日会えた記念に、乾杯でも致しませんか?」
これが苦手だ。その笑みの下には、こいつと仲良くしてればいざ争う時に守ってもらえる、匿ってもらえる、手助けしてもらえる。何より国の王子というのは強い。そんな人と仲良くしてるとなれば、後ろ盾の強さで威張り散らせる。しかし、ここで無碍に扱えば後で叱られることは間違いない。適当に笑い、乾杯でもしておけば、後はもう去るだけだ。
「よければ踊っていきませんか?私の娘が、貴方様と踊りたがっていましてね」
「あぁ…すみません、先程少し足を怪我してしまって。誘っていただきありがとうございます」
相手の言葉を待つことなく、外へと歩き出す。人の声、あちこちからグラスのぶつかり合う音、不協和音のような下品な音楽の音。全てが不愉快で、眉を顰めてしまう。外へ出れば、どうやら庭園だったようだ。まだ室内の音は聞こえてくるが、どこまでいっても聞こえてくるだろう。気にせず庭園の真ん中にあるベンチにどかっと腰を下ろす。
「…」
「おや、隣国の第一王子様が、こんな所にいてもいいのですか?」
「…あなたは、」
薄目を開ければ、さらりと風によって茶色の髪が揺れ動いている。月夜の光で、顔が映り出す。夜が似合う人だ。整った顔立ちをしている。聞こえてくる声は、低く、落ち着いていて、聞き心地のよいものだ。さっきまで聞いてた不協和音のせいで、より一層心地よい。
「紹介遅れました。今夜の夜会を開いた、主催主のurと申します。以後お見知りおきを」
「…ur第一王子でしたか」
「覚えてくださってたのですね、実に光栄だ」
覚えるも何も、この人は貴族の中では有名な人だ。誰しも一度は名を耳にしたことがある。そこまで強くなかった国の第一王子として彼が君臨した瞬間、国は大きく動いた。とにかく人付き合いが上手いというより、女ならこの顔でころっと落ちてしまう。例え偉い位置にいるのが男だとしても、その男の妻や娘に近付き、甘い言葉を囁やけばそれで商談成立。そうして、強国の一つだと名高いわけだ。生まれ持った力の恐ろしさよ。そして、できれば俺は近付きたくはなかった。顔に弱いとかではなく、単純に面倒なやつだ。懐に入り込まれれば、どう足掻いても逃げ出せはしない。警戒し続けなければいけない厄介な奴だ。
「そんな怪訝そうな顔をしないでくださいよ。私はあなたとお話したかったんですよ?」
「御冗談を」
「いいえ」
気が付けば手を引かれ、彼の元へ近付くことになっていた。腰元にさっと手を置かれ、まるで踊り出す前の男女のようだ。阿呆か、俺は男だ。振り払おうにも、体制はこちらが圧倒的に不利だ。下手すれば転けてしまう。どう動くか考えている間に、ニヤニヤした顔で話が続いた。
「どうです、私の国と手を組みませんか?あなたほどの地位があれば、他の国に負けることはないでしょう」
「結構です。そのような話に興味はありません、離してください」
「へぇ…ますます気に入った」
気が付けば、口調が丁寧からは一変していた。これは不味いと思ったが、もう手遅れ。顎を掴まれ、顔が迫ってきた。ギュッと目を瞑ると、唇に柔らかい感触が降ってきた。思わず目を開けると、王子の顔がニヤニヤしていた。
「思ってたより柔らかいんだな、jp王子の唇は」
「な、なっ…何して、!!」
「一度気に入ったら、俺はどんな手を使ってでも手に入れる。知ってるだろ?俺の手口は」
そっと解放され、王子は数歩後ろに下がった。月明かりで、彼の整った顔立ちは浮き上がっていた。その目には、嘘など含まれていなかった。夜会の人々のような浅はかさも、薄汚い欲望も、何も無かった。ただひたすらに、真っ直ぐな願いだけが映り込んでいた。気が付けば音楽は不協和音に聞こえなくなった。美しいメロディが奏でられ、それによって人々の動く揃った足音。ハイヒールの甲高い音が聞こえてくる。まるで、世界がひっくり返ったようだ。
「jp王子、今宵は満月だ。次の満月まで1月程ある。それまでに、必ず貴方を手に入れましょう」
「…知りませんから!!」
そう言い、その場を立ち去った。必死に庭園から走り出し、ホールを駆け抜け、入り口の扉を勢いよく開ける。息が切れようとも、鼓動がどくどくと暴れようとも、髪が乱れようとも知ったこっちゃない。
「何なんだよ、あの王子は!!!!」
俺を手に入れる?俺を気に入った?何言ってるんだ一体。何でキスしたんだ、何なんだ、あの感触が頭から離れない。姫じゃない、俺は男で、王子なのに。どうしてこんなにも、胸が痛い程高揚しているんだ。見慣れた金髪が見え、一直線で走り出し、無防備な背中を押して無理矢理馬車のなかに詰め込んだ。
「ちょっ、!?!?」
「俺はもう帰るから、馬車を走らせる」
その一言で馬車は動き出し、夜会を後にする。後ろを向けば、ガラス越しに遠くなるきらびやかな世界が見える。前は、暗闇だ。ようやく肩の荷が下り、ずるずると柔らかい椅子に身を委ねる。
「どうしたんや、一体」
「…tt」
「なんや?」
いつも通りの口調に安心する。そういえば、あの男はこう言っていた。今宵は満月だと。外を見れば、確かに限界まで輝く大きな丸が空に存在している。他のどの星よりも目立つもの。少し空を見ていれば、北極星も見えてくる。どれだけ月が明るくても、必ず見える、すべての指針。暫くじっと見て、目を瞑る。
「月は、指針が欲しかったのかな」
「何の話や?」
その問いに答えるのも面倒で、目を瞑り眠りにつく。暗闇が支配しても、月明かりがそうはさせてくれない。全く、厄介な男に目を付けられた。一人愚痴りながら、取り敢えず束の間の休息に身を委ねた。
ひでお
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