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7
最近、食欲がない。
というか、食べないようにしてる、のほうが正しいだろう。
『仁人、昼それだけなん?』
「うん、腹減ってねえし」
ちょっとしたサラダとお茶。
ほんとはもっと食べたいけど最近は我慢している。
階段上がるときに目に入る脚。
昔から筋肉質だな、とは思っていたものの最近は余計気になるようになってきた。
女の子みたいに華奢で、守りたくなる感じだったら、俺のことを好きになってくれるのかもしれない。
俺は勇斗のことが好きなわけで、そんな勇斗はノンケだ。普通に女の子が好きであろう。
絶対に今の俺のままじゃ好きになってくれる可能性はほぼ0に等しいと思っている。
「素の自分を好きになってもらわなくていいの?」とか言われるかもしれないがそんなのどうでもいい。
なんとしてでも勇斗に振り向いてもらいたい。
__________
『仁人ー』
「んー?何」
振り向いたら勇斗がこちらを見つめながら話しかけてくる。
『あとでさー買い物付き合ってくんね?』
『ほしいもんあってさ』
「うん!いいよ!」
前まではこんな素直に頷かなかったのに。
前までなら絶対「え?なんで俺が行かなきゃいけないの?」「なんか奢れよ」とか言ってたはずなのに。
実を言うと最近は、ビジュアルだけではダメだと思い、内面も変えようと努力している。
どうせ勇斗だって男なんだから、可愛くてか弱くて守りたくなるような女の子が好きなんだろ。
だからなるべくその理想に近づけるように、声のトーンも優しくしてみたり、ちょっと自信なさげを装ってみたりしている。
数時間後。
さっき約束した買い物の付き合い中だ。
というか『付き合ってくんね?』とか言われたとき、交際しようと申し込まれているみたいで照れちゃいそうになった。まあ照れた。
そんなバカはおいておき、今始めて勇斗の運転する勇斗の車に乗っている。
何度か運転する勇斗の顔は見たことがあるが、流石に右から右を覗く形で見るのは初めてだ。
「……あのさ」
『ん?』
「勇斗って、どんな子が好きなの」
できるだけ自然に聞いたつもり。
男同士、こんな会話をするのも別に珍しいことではないだろう。
『え、急だな』
「…なんとなくね」
『んー……』
『無難に優しい人とか?』
『甘えてくれる子も好きだな』
終わった。
今の俺といえば生粋のツンデレキャラのイメージが強いであろう。
性格も変える!と意気込んでいたが、流石に短期間でガラッと変えることは難しい。
俺だって勇斗に甘えたいと言う思いはあるが心が素直に動いてくれない。
今の自分、真逆じゃん。
「……そっか」
無理やり笑う。
素直に甘えられたらどれほど良かったかと思う。
まあそんな甘える甘えないの1つで恋人にするかしないかを決めることはないとは思いつつ…。
それからもっと、食べる量を減らして、変に大人しくして、ぶりっ子して、可愛いを演じるようになった。
『仁人』
「…なに?どうしたの」
『お前最近、大丈夫?』
「……は?」
本気で心配そうな顔をして迫ってこられるからびっくりした。
心配されているのは嬉しいことだが、何かそんな心配をかけることをしただろうか。
『なんか最近元気なくね?』
『悩んでんならさ、話聞くぞ』
……。
何がそんなに俺が悩んでいるように見せているんだ??
「……別に、悩んでないけど」
『いや絶対なんかあるだろ』
「ないって」
『嘘つけよ』
ぐっと顔を覗き込まれる。
『食欲も無さそうだしさ…』
「……」
『なんか前より静かになった気がするんだよ』
『あんなにでっけー声だったお前がさ』
あー、心当たりしかないがそう言うことではないんだよ。
まぁ、まぁ彼の心の中で俺が心配の対象として居座り続けてられていたのならそれは正解なのかもしれないが。
でも気づけよ、鈍感め。
お前に好かれたくてやってるんだよ。
「……ほっといて」
こんなことを言われた時の可愛らしい返事とか考えたこともなくて、いつもより変にそっけなく突き放してしまった。
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