絶対に手放したくないもの
それは私の家だ、そのためならなんだってする。騙すことも、殺すことも厭わない
それが私の家を守ることができるのなら。
血の滲むような努力も、自分の心身を削っても必要な知識は叩き込むし、顧客のことはすべて把握しておく。
辛くはない。凡人は此位しなければ大切なものなんて守れない。
苦しくない、全く苦しくなんかない
はずなんだが時折夢が見たくなる。母がいて、父がいて、私がいて。温かいご飯が出ることが当たり前で、学校に通って、恋人を作って温かい家庭を築く夢。
その夢を見た朝は決まって何処か虚しくなる。何かかすっぽり抜け落ちた感覚がする。
それを薬で埋める。
パテで埋められたようなわたしの心は思ったよりも脆かった。砕かれては砕かれては埋め。ただそれの繰り返し。段々と広がってく穴と増える薬の量。
ああ、凡人でありながら凡人として生きることはわたしにはできないのか
そんな気持ちも夢の詰まった白い粒と一緒に胃の中に流し込んだ。
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