放課後。
生徒が次々と教室から出ていく。
教室には、僕と桃田さん、そして転校生の雪村くんが残っていた。
日誌を書き終えて、バッグを背負う。
「じゃあ桃田さん、またね」
桃田さんとは普通に話せるようになった。
前は緊張して、しどろもどろだったのに。
いつものように帰ろうとすると、桃田さんが「待って」と言った。
「どうしたの?」
「えっと…私が日誌を出しに行くよ」
「え…?大丈夫、僕が行くよ。ありがとう」
「でも…」
日誌ぐらい僕が出しに行くのに。
やっぱり、桃田さんは優しいな。
「桃田さん、また明日 」
「…う、うん…」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
〈桃田 目線〉
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
桧山くんが行ってしまった。
早く私も部活に行かなきゃ…だって─。
バッグに触れたその時、あの人──雪村くんが私の肩を叩いた。
思わず私は肩を震わせた。
「…な、なんですか」
震える声で聞くと、雪村くんは、にこにこ笑顔で答えた。
「そんなに怯えなくてもいいでしょ」
雪村くんが私の耳に顔を近づける。
「やっぱり、俺のこと覚えてるんだ」
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