この作品はいかがでしたか?
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俺とアイはあれから毎日一緒に遊んだ。
トランプというカードゲームをしたり、すごろくっていうものをしたり、スイーツ食べたり、昼寝したり。
その一瞬一瞬を楽しみながらも、その一瞬は言葉通りすぐに過ぎ去ってしまう。
そして遂に終わった。。。
十三日目ー
外がやけに騒がしくて、俺は目を覚ました。
「メグル君。逃げるぞ」
パジャマ姿のグアニルさんが言った。
俺は何かが起こったのだと思った。
「何があったんですか!?」
「、、、君がここにいる事がバレた」
「そんな、何で、、、?」
「わからない。ただ、捕まればどうなるかわからない、、、」
「お父さん。どうしたの?」
寝起きのアイが来て言った。
「アイ、メグル君。私たちが表から出て囮になるから、そのうちに裏から出て」
「母さん、、、 何言ってるの?」
「メグル君。アイを頼んだよ」
突然の出来事だ。
ハニーさんとグアニルさんは俺たちを守るために死ぬつもりだ。
知り合いの死だ。お世話になった人の死だ。
辛いはずなんだ。辛くないといけないんだ。
でも、俺はあのシェルターで、少しずつおかしくなっていたんだ。それを実感した。
俺はもう二人の死を受け入れていた。
辛くない事がたまらなく辛い。
まるで自分が人では無くなったようで、人であろうと思う自分が醜く思える。
それでも俺は人として言った。
「はい。任せてください」
ハニーさんとグアニルさんは玄関へ走った。
俺はその反対へ走ろうとする。
だが、アイは動けないようだった。
だから、アイを背中に背負って俺は走った。
アイは口の閉じ方を忘れてしまったようで、彼女の唾液が俺の肩や頬に飛んでくる。
背後から甲高い悲鳴と鈍い低音が鳴り響いている。
それでも、俺は何も感じないようだ。
アイはようやく口の閉じ方を思い出したか、それとも身体が震えるのか、下顎を動かし続けていて歯のぶつかる音がする。
「アイ。外に出るぞ」
俺は窓を蹴り割った。
あれ、俺はこんなに力があっただろうか?
外を見ると既にかなりの数に囲まれていた。ざっと二十はいるだろうか。
俺の頬を液が流れた。
これは唾液では無い。
ならなんだ。
そうか。
これは涙だ。
さっきから、何も感じないのは俺が人で無くなったからでは無かった。
俺はただ憎いのだ。
幸せなクセに、普通に生きてるクセに、普通に生きれない俺たちから唯一の幸せを奪っていくコイツらが。
約束したんだ。『アイは任せてください』って。
約束したんだ。 『アイが死にそうになったら、ちゃんと守る』って。
約束したんだ。『自由に生きる』って。
俺はこんなところで、立ち止まる訳にはいかないんだ。
「そこを退けよ!!」
俺はそう叫んだ。
パリンッ
その刹那、俺の身体が光った。
この光は、あの時と同じだ。
瞬間移動の時と同じ、物質【X】が暴走時に発する光だ。
何故こうなったか何て事はどうだって良い。
身体が軽い。
このエネルギーは俺に力を貸してくれている。
俺は右足の脹脛に力を込め、
蹴った。
俺は一瞬で前に跳んだ。
俺が踏み込んだ衝撃で、地面が抉れた音が背後から聞こえる。
俺は音を越えた。
これなら逃げ切れる。
そう思った。
だが、この動きは人間の肉体では耐えきれないようで、すぐにとてつもない痛みが俺を襲った。
ブチブチと筋肉の繊維が一本ずつ切れていく。
俺の右足は自由を失った。
それでも、俺はさっきより弱い力で左足に力を入れて蹴った。
何本か切れた。
痛い。
だが、まだ動ける。
再び蹴った。
再び蹴った。
再び蹴った。
再び蹴った。
再び蹴った。。。。。
***
左足も遂に力尽き、俺は倒れた。
「メグル、、、ありがとう」
アイが言った。
「お前、もう話せるのか、、、?」
「うん。大丈夫、、、 それより、メグルが心配」
「俺は大丈夫だよ、、、」
正直なところ、大丈夫では無いだろう。
きっと、もう俺の足は終わったんだ。
途中から痛みすらも消えてしまった。
繊維が切れる感覚はあるのに痛くないんだ。
でも、彼女が『ありがとう』と言ってくれた。
だから、俺はまだ動く。諦めない。
「そうだメグル。一つだけ、言わなくちゃいけない事があってさ、、、」
アイは続けて言った。
「愛してる」
、、、、、
その時だ。
、、、、、
アイの身体を
、、、、、
いくつものワイヤーが貫いた。
、、、、、
、、、、、
、、、、、
俺は何が起こったか理解できなかった。
ただ、俺はアイを見つめた。
アイの傷口からは、ネジやパイプが飛び出でいた。
、、、、、
アイは人では無かった。
、、、、、
俺はアイに突き刺さったワイヤーを目で辿った。
そのワイヤーは金属の塊から出ていた。
太陽光が反射していて見づらい。
だが、俺はお前をお前だけは絶対に見間違えない。
「何でお前がここにいるんだ、、、」
それは信じ難い存在だった。
「【皇帝様】」
パリンッ
パリパリッ
音は再び鳴った。
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