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‐‐‐‐
「なぁ、青。 お前、ほんとに
“される側”に なったことねぇの?」
突然の質問に、
青は目を細めた。
「…当たり前でしょ。 僕は“する側”。
これまでずっとそうだったし
こ れからもそう」
「つまんねぇの。そうやって守ってばっかで」
桃はニヤリと笑う。
大学帰り、二人きりになった
タイミングだった。
「じゃあ、一回くらいされてみろよ。俺に」
青は、眉をひそめた。
「は?」
「お前が“される”とこ、見てみてぇな。
どんな顔すんのか」
冗談じゃない
──そう言いかけて、
青は言葉を飲み込んだ。
桃の目は冗談ではなかった。
喰うか、喰われるか。
そんな本能的な熱がそこにあった。
「……後悔すんなよ?」
「お前こそ」
──その夜、
主導権を巡る戦いが始まった。
「……どけよ」
青は玄関を入ってすぐ、
桃に背を押された。
狭い部屋。
壁に背中を押しつけられ、
すぐに唇が重なる。
舌が深く絡む。
熱い、
重い、
支配的なキス。
「っ……おい、ちょっと……」
「何? もう逃げんの?」
「逃げてねぇ。お前こそ、
手加減なしで来いよ……っ」
服を剥がされ、
ソファに押し倒される。
キスの合間に、
首筋に甘噛みされ、
肩口を舐められ、
肌が粟立つ。
(……まずい。こんな、 何も考えられないくらい……)
青は無理やりに体勢を
入れ替えようとした。
だが桃の腕は強く、
腰をがっちり押さえてくる。
「お前、えろい体してんな。 」
「うるさい……!」
青は睨んだ。
でも次の瞬間、
乳首に舌が触れて、
体がビクリと跳ねた。
「……っは、やだ……っ」
「うわ、ここ弱いのか。 じゃ、たっぷり可愛がってやる」
「ふざけ、っ、んん”っ”……!」
指先が腹筋の溝をなぞり、
脚の間をくすぐるように撫でていく。
快楽が、理性を蝕んでいった。
「ほら、ここ。もう濡れてんじゃん」
桃の指が、青の後ろを撫でた。
青の脚は開かされ、
桃からは丸見えな状態になっていた。
「こんなの、僕の意思じゃ……っ」
「言い訳すんなよ。体は正直ってことだろ?」
背を押さえられ、
四つん這いにされる。
羞恥と快感がないまぜになって、
青は顔を歪めた。
「や、やめ……こんな、体勢……っ」
「似合ってる。素直に“気持ちいい”って言ってみろよ」
「言わない……っ、言いたく、ない……!」
桃は指を差し入れて、
慣らし始めた。
指一本、
二本。
入り口が柔らかく開いていく感覚に、
青は呻いた。
「っ……っ、ふ、あああ……っ」
「すげぇ……お前、ほんとに初めて?
もう、キツすぎて最高」
「うるさぃ、黙れ”……っ!」
泣きそうな声が漏れる。
なのに、
腰は拒めなかった。
本番。
桃がゆっくりと、
奥まで侵入してくる。
「んっ、あ……っ!」
「ほら、入った。なあ、どう? お前がされる側って、案外悪くねぇだろ?」
「うるさい、ぬ、ぬけ……っ!」
身体は違った。
中はギュッと締まり、
桃を咥え込むように震えていた。
「お前の中、すげぇ……俺、ずっとお前でこうしたかった」
「嘘……だろ」
「ホント。ヤリチンなのに、やたら警戒心強くてさ。ずっと落としたかった」
青は言葉を失った。
(落としたかった……俺を?)
心の奥がかき乱される。
肉体だけじゃない。
桃は青の“プライド”まで暴いてくる。
「っんぁ、んっ……まっ、て……! ダメ……っ」
「もう遅いよ。ほら、奥、 当たってんの分かる?」
突き上げが深くなり、
青は情けない声を上げた。
「ん…っ、や、ぁ”っ、そこ……!」
「そうやって崩れてくお前、たまんねぇ。もっと見せて?」
「やっ……う、ぅ”……あっ……♡!」
息が詰まるほどの快感。
思考が焼ける。
心が溶けていく。
(やばいっ、あたま… おかしくなる、っ…♡)
「……っ、っは…ぁ…っ、はぁ ……♡」
果てた後、
桃はベッドに腰掛けた。
青はシーツに包まって、
背を向けていた。
「……ほんと、ずるい」
「またそれかよ」
「攻めてくるくせに、 キスは優しいし、
腰抱くときだけ本気になるし……
… ずるいだろ」
桃は笑いながら、青の頭を撫でた。
「じゃあ、もっと意地悪してやる。
お前が“俺だけのモノ”って言うまで」
青の心臓が跳ねた。
「……言わねぇよ」
「言うよ、そのうち。だって、お前、
声出すとき俺の名前呼んでたもん」
「っ……ばか……!」
枕で顔を隠して青は震える。
恥ずかしさと、
ほんの少しの幸福感に。
──数日後。
青はまた桃の部屋にいた。
ソファに座り、
缶ビールを傾ける。
「なあ」
桃が言った。
「次、後ろじゃなくて、上に乗ってみない?」
青はビールを吹き出しそうになった。
「はあ!? どこまで支配したいんだよ、お前……っ」
「いや、違ぇよ」
桃は笑う。
「もっと気持ちよくしてやるって話。嫌?」
青は視線を外した。
「…………嫌じゃ、ないかも」
「ほらな」
桃は当たり前みたいに言って、
青の腰に手を回した。
(どうして、こうなるんだろう)
青は少しだけ思う。
でも、その手を振り払う気には
なれなかった。
【完】
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