SAID(O.T)
明るい陽の光が俺を打ち付ける。晴れてよかった、そう思った。なんとなく、今日はいい日になりそうだと思いながら玄関の扉を開ける。お出かけ日和。そうだな、今日こそはオフの日を楽しもう。
⋯つっても、ただ気を紛らわすためのお出かけ。
この前、藍が、俺の唇に触れたことは気づいていた。それからは少し気まずい。話す時もなんだかぎこちない。多分、そう思っているのは俺だけ。藍はいつも通り明るい声で話しかけてくる。───それでも俺は、唇と唇が触れた感覚を覚えてる。
もしかして、お前も俺のこと。だなんてありえない話だ。ただの事故だろう。まあ、事故だとしても少し喜んでいる俺がいる。でも、事故じゃなくて、いつかは。
SAID(T.R)
今日も癖で早起きしてしまった。ランニングにでも行こう。誰か誘おうか、と考えたが今日は一人で行きたい気分だったので一人で行くことにした。⋯昨日の小川さん、なんだか気まずそうだったなあ。俺なんかしたんかな。今日ランチにでも誘おう。と思いスマホを手に取る。
“小川さん、おはようございます!”
“おはよう。早起きだね”
“つい癖で、笑 小川さんこそ早起きですね?”
“今日は服でも買いに行こうかなって”
“ちょうど良かった、お昼一緒に食べませんか?”
“まあ、いいよ笑”
やった。ついガッツポーズをしてしまった。何食べようか、まあこの事はランニングしながら考えよう。寝ている智さんを起こさないよう、そっと扉を開ける。ホテルの外へ出て上を見上げると、外は、快晴だった。
昼になって合流した。何食べるかはもう決まった。服もキメたし、髪型もバッチリ。って、恋する乙女か何かか。と自分でツッコミをいれる。数分後、小川さんが来ると緊張して落ち着かない雰囲気だった。やっぱりなんだか気まずい。頭の中でぐるぐる考えてたら、話すことすら忘れていた。小川さんが口を開いて話すまでは気づかなかった。
「藍、体調でも悪い?」
「⋯えっ、あ、そんな事ないっすよ??」
「ならいいんだけど、今日の藍は元気ないね」
「ちょっと考え事してて、笑」
「先輩が聞いてやろうか。」
「なら聞いてもらえますか?」
友達の話として置き換えた。話はこうだ、友達は好きな人がいて片思いらしい。それで、なぜか急に気まずい雰囲気が流れていると、その原因が分からないと。すると小川さんは、「嫌われたんじゃね。」なんて、冷たいこと言うから不安になった。もう思い切って伝えようかな。ああ、やっぱり無理だ。多分、今の関係性が一番いい距離感なんだろう。どうせ片思いなんだから、さ。
「たしかに、笑」とだけ呟いた。
部屋に戻った。小川さんと帰っている時なぜか足が重くて。気持ちも重かった。天気がわるかった、どんよりした灰色の空。明日は雨でも降るのかな。
「今戻りました!智さんよく寝れましたか?」
「おかえり〜、よく寝れたよ。今からお昼食べてくるね、おすすめの店とかある?」
「あ〜、こことかいいっすよ。行ってらっしゃい!」
「行ってくるね」
一気に力が抜けた。セットした髪もぐしゃぐしゃにしてベッドにダイブした。その時、扉がノックされた。こんな時に誰だ。今は誰かに会う気分ではない。扉を開けると、誰もが察するだろう。今一番会いたくない人だった。心配そうに目線をこちらに持ってくる。小川さん。
「あー、藍。今日なんか体調悪そうだったし、大丈夫かなって。」
「⋯あ、はい。はは、大丈夫っすよ笑」
なんでだろう。涙がこぼれそうになった。抱き締めたいという欲が俺を掻き乱した。貴方の腕を引っ張ってそのまま抱き締めた。扉が閉まって、貴方は驚いていた。しまった、と思った。ところが、予想外の反応だった。彼の顔が赤く染っているように見えた。
「⋯ぇ、あ、見るな。」
ただその一言。貴方は赤く染った顔を手で隠したまましゃがみこんだ。俺もしゃがんだ。
「小川さん、ごめんなさい。俺貴方の事好きみたいです。今日も、小川さんと話す時なんだか気まずい雰囲気で。友達の話として話たヤツ、小川さんはどう思ってるのか気になって。そんで、嫌われてんのかと思って、ごめんなさい。」
「あ、と、今の抱き締めたんは、心配してたから。嫌われてなくて安心した、みたいな。はは。馬鹿ですよね。」
そのまま顔を下にした。上手く笑えてるかな。涙がこぼれそう。抑える。すると小川さんが抱き締めてきた。
「えっと、その、嬉しい、よ。俺も、藍のこと好きだから。心配させてたんなら、ごめんね。藍は謝んなくていいよ。」
貴方の横顔を見ると耳が赤くなっていた。ああ、可愛い。なんて可愛いんだろう。いつもの貴方じゃないみたい。
「じゃあ、小川さん、俺と付き合ってくれる?」
「⋯当たり前じゃん、⋯もう、恥ずい。」
「可愛い。」
「うるせえよ」
あー顔熱い。と言いながら頬を触る貴方を抱き締めて。耳元で“大好きだよ”と呟く。“俺は、愛してる”だなんて貴方が言うから。好き、大好き。そんな今まで伝えられなかった気持ちが溢れ出る。貴方に優しく、そっと口付ける。
「⋯ん、ぅ。」
「⋯ん、小川さん、愛してるよ。」
───もうずっと俺だけ見ててね。
コメント
2件
神すぎ大好きです
ほんと、好きです マジで、最高です