スタッフさんの呼んだ救急車が来て、元貴の小さい身体には沢山の針とコードが付けられた。「おひとりまで同乗できます。」救急隊員の声がして、いつの間にか僕は救急車の後ろに座っていた。
なんで、今。薬だって毎日飲んでいた。発作が起きたのは中学の時が最後だ。今だってあの時のことを覚えている。ー
元貴は体調不良で、よく学校を休んだり、保健室へ行く子供だった。そういう奴って男からは好かれない。友達は少なかったようだった。
ある日の授業中、元貴はいきなり倒れた。大きな物物音がして振り返ったら倒れていたんだ。仰向きになって痙攣していた。さっきと全く同じように。
女子が泣いていた。僕も怖かった。
先生が隣のクラスの先生を読んできた。保健室の先生は担架を持ってきた。痙攣が止まってから 3人がかりで持ち上げて教室を出ていった。見ちゃいけないような気がして。まっすぐ見れなかった、白い顔をした元貴。
その日から元貴は学校を休みがちになった。
「てんかんっていうんだってさ」
元貴はてんかんを持っているらしかった。生まれつきらしい。そして、曲を書いているとも聴いた。元貴が書いた曲を教えて貰って聞いてみた。
僕と同級生がこれを書いている。繊細で怒っている。悲しんでいる。元貴を知りたい。僕もこんな風に音楽を作り出したい。
以前から初めていたギターをその日から死ぬ気で練習したことを覚えてる。
勝手に繋げちゃってごめんね。若井です。誰か、わかる?
ギターを本気で初めてから3ヶ月、僕は元貴の友達に頼んで元貴とLINEを繋げてもらった。
うん、わかるよ。サッカー部だよね。なんか用?
どうやってバンドを組もうって言えるんだろう。
君の曲の大ファンなんだ。話してみたくて。
なんで僕が曲作ってるって知ってるの?
噂で聞いたなんて言えないだろ。でも正直に言おう。
噂。ごめんね
僕が倒れたから?
うん、そう。最近学校休んでるけど体調大丈夫?
うん、大丈夫。ただあの後から行きにくくなっちゃって。
そっか
うん
ねえ
いきなりどうしたの?
僕ギターやってるんだ。元貴と一緒にバンド組みたい。
サッカー部忙しいんでしょ?
辞めるよ。
だめだよ。僕なんかとやっても楽しくない。歌える人なら、いるでしょ?
元貴の曲がいいんだ。お願い、せめて1回スタジオに入らせて。
1回だけね。
救急車は緊急外来の前に止まった。
「待合室でお待ちください。」
元貴は運ばれていった。
待合室で待った。マネージャーさんたちに報告しなきゃいけないと思うけど、何も知らなかった。
ドタドタと足音が聞こえて顔をあげると目を赤くした涼ちゃんがいた。
「元貴は、大丈夫なの?」
声が震えていた。
「なんにも、わかんないんだ」
涼ちゃんは何も言わず僕の隣に座った。
しばらく無言で時間が過ぎた。1時間はたったと思うけど、なにも報告は来ない。
「ねえ」涼ちゃんが口を開いた。「知ってたんだね?」
「うん。てんかんだよ。生まれつきの。中学の時授業中に発作を起こしたんだ。さっきみたく」
「教えてくれなかったんだ」
「あれ以来、発作を起こしたことがなかったんだ。元貴はできるだけ隠したがってたから。薬は今も飲んでる」
「大森元貴さんのご友人ですね?」
頭の上から声がした。
コメント
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続きありますか?!あるんだったらすごく楽しみすぎます︎💕︎✨