テラーノベル
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――夜。焚き火を囲む杉元たちの前に、鶴見中尉が姿を現した。
杉元 「鶴見中尉!?」
杉元はいつでも攻撃できる態勢を取りアシㇼパを自分の背に隠す。
鶴見中尉「そんなに警戒しないでくれ」
鶴見中尉はそんな事を気にもせず、ニコニコと笑う
鶴見 「いやぁ、今日は少し面白い話をしようと思ってねぇ」
杉元 「……面白い話?」
キロランケ 「鶴見中尉……何を企んでいる?」
鶴見中尉は、ゆっくり尾形へ視線を向ける。
鶴見中尉 「尾形百之助について…」
その瞬間。
尾形の眉が、ほんのわずかに動いた。
尾形 「……中尉」
低い声。
尾形 「余計なことを喋らないでいただきたい。」
しかし鶴見中尉は止まらない。
鶴見中尉 「皆は、尾形がなぜあんな人間になったのか……考えたことはあるかい?」
杉元は黙った。
普段の尾形。
何を考えているのか分からない。
人と一定の距離を置き、誰かを信用することもない。
その理由を、誰も知らなかった。
鶴見中尉 「尾形には、父親がいた、」
杉元 「……!」
鶴見中尉 「しかし、尾形にとってその存在は――父親と呼べるようなものではなかった」
尾形は目を伏せた。
尾形 「……もういい」
そう呟き顔を背け銃の手入れを始める。
鶴見中尉 「いいや。最後まで聞いて貰おうか」
尾形はその言葉さえも無視し、手入れを続ける、
気にも止めないのか、
鶴見中尉は静かに語り続ける。
尾形が幼い頃から抱えていた孤独。
家の中で感じていた疎外感。
誰かに愛されることを、最初から諦めるようになった理由。
杉元たちは、言葉を失っていた。
アシㇼパ「……尾形。」
尾形は返事をしない。
だがアシㇼパのその言葉で手が止まる。
アシㇼパ「……ずっと、そんなこと一人で抱えてたのか、」
尾形 「……別に」
いつもの言葉。
いつもの無表情。
けれど――
杉元には、その「別に」が妙に痛々しく聞こえた。
杉元 「……馬鹿野郎」
尾形 「?」
杉元 「なんで何も言わねぇんだよ」
尾形が杉元を見る。
杉元 「お前が何も言わねぇからって、何も感じてねぇと思うな」
尾形は黙った。
そして止めていた手入れを続けようとする
キロランケも拳を握る。
キロランケ 「……尾形。」
尾形 「なんだ」
キロランケ 「今まで、よく一人で耐えたな」
【 耐 え た 】
その言葉を聞いた瞬間。
尾形の表情が、ほんの少しだけ揺れた。
尾形 「……やめろ」
杉元 「嫌だね」
尾形 「……杉元」
杉元 「俺は、お前のこと何も知らなかった」
杉元は真っ直ぐ尾形を見る。
杉元 「だからこれから知る」
白石 「俺も!」
キロランケ「俺もだ」
アシㇼパ 「私も!」
尾形は4人を見回した。
理解できない。
なぜ、そこまで自分に構うのか。
なぜ、過去を知った途端に離れていかないのか。
尾形 「……気味が悪いな、お前ら」
白石 「ひでぇ!」
杉元 「うるせぇ。今さらだろ」
思わず、尾形の口元がわずかに緩む。
ほんの一瞬。
けれど――
それを見た杉元たちは見逃さなかった。
アシㇼパ 「いま、笑ったか?」
尾形 「笑ってない」
白石 「いや笑った!」
キロランケ「確かに笑ったな」
尾形 「……気のせいだ」
4人が顔を見合わせる。
そして――
なぜか、尾形の周りに集まり始めた。
尾形 「……何をしている」
杉元 「別に」
白石 「仲間だからな!」
キロランケ 「一人にする気はない」
アシㇼパ 「これからも一緒にチタタプしよう!」
4人 「尾形!/尾形ちゃん!」
尾形は困ったように4人を見る。
こんな距離の近さを、知らない。
こんなふうに自分を気にかける人間を、知らない。
――だから。
どうしていいのか分からなかった。
尾形 「……俺は、お前らが思っているような人間じゃない」
杉元は即答した。
杉元 「知ってる」
尾形 「……」
杉元 「それでも仲間だろ」
尾形は何も言わなかった。
ただ、少しだけ目を伏せ、自分の手入れしている銃を見る、
誰にも見えないように。
ほんの少しだけ――
安心したように
微笑んだ。
一一一一一一一一
一一一一一一一一一一一一
一一一一一一一一一一一一一一一一
その夜から。
尾形が一人でいる時間は、少しずつ減っていった。
アシㇼパは質問を投げかける。
杉元は何かと尾形に話しかける。
白石はくだらない話を持ちかける。
キロランケは黙って隣に座りながら煙草を吸う。
そして尾形が「放っておけ」と言えば言うほど――
4人は放っておかなかった。
尾形 「……お前ら、本当に鬱陶しいな」
杉元 「そうかよ」
白石 「照れんなって!」
尾形 「照れてない」
キロランケ 「顔が少し赤いぞ」
尾形 「……キロランケ」
キロランケ 「すまん」
そんなやり取りが、当たり前になっていく。
愛されることを知らなかった男は。
少しずつ。
「ここにいてもいい」という感覚を覚えていった。
――そして誰よりも先に。
尾形自身が気づいていないだけで。
彼を放っておけなくなっていたのは、杉元たちのほうだった。
一一一一一一
一一一一一一一一一一
一一一一一一一一一一一一一
彼は愛されなかった訳では無い。
ただ、
【自分が愛される可能性】を信じれずいただけなのだ。
愛を知らずに生きて、
愛を理解しようとしたら挫折する。
駒として生きるのは
愛されていると思えるのだろうか、
思えるはずがないのだ。
そして皆さん、思いませんでしたか?
何故、鶴見中尉がわざわざ過去を晒し
何故、わざわざ本人が彼処にいたのでしょう、
それは、
鶴見中尉が私だからです♪
道案内はしますから、
もう少し、愛を実感してから
来てくださいね、兄様。
2026/8/16 00:08
コメント
1件
ああ、読ませていただきました……! 尾形の「別に」の一言がこんなに痛く響くのは、彼の孤独が積み重なってきた証拠ですよね。仲間たちが「放っておかない」と決めた空気、特にキロランケの「よく一人で耐えたな」という言葉が胸に刺さりました。あの瞬間、尾形の表情がほんの少し揺れる描写、繊細でとても好きです。そして最後のオチ——鶴見中尉がなぜそこにいたのか、あの一文で一気に世界が広がりました。続き、気になります……!