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最後まで毎話毎話泣いちゃいました🥲
ありがとうございます😭
ガサッ…
物音がして、慌てて2人は隠れた。
「スゴイ!ここから花火良く見えるよ! 」
「本当だ!もっとあっち行ってみようぜ!」
カップルらしき話し声が聞こえた。
足音が遠ざかると、草むらにしゃがみ込んで隠れていた湊とシンは顔を見合わせ
「ふっ…はっ!笑」
笑った。
「さすがにこれは…」
「ベタ過ぎですね笑」
「…だな笑」
湊は崩れた襟を直す。
湊が立ち上がると、シンも立ち上がった。
「そろそろ終わるな…花火…」
「早いですね…」
シンは湊を後ろから抱きしめた。
花火を見上げる湊の視界にはシンの顔が入っていた。
(きれいな顔だな…)
花火を遠くに見ながら、湊はシンの顔を見つめる。
「……!」
不意にシンの顔が近づいてきて、湊にキスをしてくる。
「俺ばっかり見てないで、花火見てください…湊さん」
そう言ってにっこり笑う。
「っるっせー…お前が勝手に俺の視界に入ってきてるんだろ!」
「じゃあ俺と花火。どっちが好き?」
「はぁ?」
「そういう時は、慎太郎です。って可愛く言うんですよ…」
「………」
「湊さん!クライマックス!」
次々と打ち上げられる花火を見ながら湊は説明のできない何かを感じていた…
それから数日が経った。
「アキラさん。これ、邪魔っ!」
明日香にはいつもの湊の座っている椅子に座り横に積み上げてある本を指で指す。
「明日香。勉強なら店でやれっ!今から帳簿だの請求書だのやんなきゃなんねーから机使うの!」
「いーじゃん別に」
「あっそーですか。じゃ、もう店(そっち)は使わせてやんねーからな!」
「はいはい。邪魔者はあっちに行きますよ~」
明日香は席を立って店へと向かった。
明日香の居なくなった椅子に湊は座る。
横に目をやると
「確かに邪魔だな…片付けるか…」
そう呟いて手を伸ばし積み重なった雑誌を掴む。
「んっ…?」
ひらひらと紙が落ちた。
拾い上げた紙は、あの時シンに渡せなかった手紙だった。
「結局渡せなかったな……」
「湊さん」
ガレージの入口にシンが立っていた。
「シンっ!」
湊は驚いて持っていた手紙を慌てて丸め、ごみ箱に捨てた。
「お前学校は…?」
「今日は午前中だけだって言ったじゃないですか」
「そうだっけ…」
店から明日香が走ってきた。
「アキラさん!おっ、シン!」
さっきは居なかったシンに驚く。
「なんだ英も居たのかよ…」
「俺は勉強しに来てんの!」
「勉強ぐらい家でやれよ。湊さん迷惑だろ」
「シンだって、店で勉強させてもらってたくせにっ!」
「まーまーまー…」
湊が2人の間に入る。
「そんな事より。どうした明日香?」
「アキラさん。冷房壊れたかも…」
「またぁ?シン悪い。ちょっと店行って見てくるわ」
湊がガレージから居なくなると、シンはさっき湊が捨てた紙をごみ箱から拾う。
(…?)
「明日香、お前冷房のリモコン触っただろっ!」
「ちょっと暑かったから温度いじっただけだよ」
「とりあえず壊れてなくて良かった~また、修理代かかるかと思った…」
「もうあの冷房古いからそろそろ新しいのに買い替えたら? 」
「どこにそんな余裕あるんだよ!」
「あいからわずケチくさいな〜アキラさんは…」
2人が話ながらガレージに戻ってくると
「あれっ?もう帰るのかシン?」
シンがガレージから出ようとしていた。
「まだ課題終わってなくて…」
シンは拾い上げた紙をポケットにしまった。
「そっか…がんばれよ」
「はい…」
湊に会釈をしてシンは去って行く。
「なんかシン、慌ててる感じだったけど…ケンカでもした?」
「いや……」
シンは急いで帰ると自室の机に座り、先程の紙をポケットから取り出した。
「ただいま〜」
帰っているはずのシンの返事はなかった。
シンの部屋に向かうとノックをする。
「シン!入るぞ~ 」
「お前返事くらい…居ない?」
机の上には先程捨てたはずの手紙が置いてあった。
「なんで…?」
その時電話が鳴った。
『湊さん。仕事終わりましたか?』
「お前今、どこにいるんだよ」
『ちょっと出て来れますか?』
呼び出された場所は海だった。
シンは防波堤の上に立っていた。
「お前課題は終わったのか…って、おいっ!!」
湊はシンに向かって叫ぶと、 シンは湊を見るなり…海に飛び込んだ。
「!!」
バタバタと手足を動かし溺れている様に見えて急いで湊も海に飛び込む。
「何やってんだよっ!」
必死になってシンを浜辺に救い上げた。
「……げほっ」
「おいっ風邪ひくから店行くぞ!」
シンを抱えて立ち上がろうとすると、シンは湊の左手を掴み見上げる。
「…湊さんに助けてもらったのこれが2回目ですね…」
「……えっ」
湊とシンは浜辺に座っていた。
「……さっきのはわざとだろ…」
「……」
「……」
「ここは、あんたと初めて会った場所です」
「……」
「俺はここで湊さんに一目惚れしたんだ…」
「……」
「あんたに少しでも近づきたくて水泳を始めたし、あんたに会いたくて何度もコインランドリーに通った…去年あんたを見かけた時心臓が止まるかと思う位嬉しかった…湊さん、覚えてますか?」
「…あぁ…覚えてるよ…」
「嬉しくて、嬉しくて…毎日夢なんじゃないかと思う位嬉しくて…」
「……」
「あんたが初めて俺の事好きだって言ってくれたのも、この場所でしたね…」
「…お前…記憶」
「思い出しました。あんたとの記憶。全部…」
「……いつから思い出していた?」
「気がついていたんですね…」
「お前の言葉にひっかかるもんがあってずっと気になってた…」
「花火大会の少し前あたり…断片的にですけど…」
「なんで言わなかった」
「途切れ途切れだったので確証がもてなくて…中途半端なままあんたに話せば、あんたはまた心配して俺に気を使う。思い出さなければ、あんたが悲しむ。そう思って…言い出せなかった…」
「……」
「…怒ってますか?」
「うん」
「……そう…ですよね」
「ウソだよ…ばーか!笑。……怒ってねーよ…」
「……」
「本当は呆れてる…」
「……湊さん。ごめん…」
「自分にだよ。俺が…お前が話せないようにしちまってたんだな…」
「違いますっ!俺が…弱いから…」
「お前は強ぇーよ。全部1人で抱えて、俺を心配して、俺を守りながら1人で解決したじゃねーか…」
「……」
「良く頑張ったな。シン…」
「湊さんが居てくれたから…」
「俺はなんもしてねーよ…」
「あんたが近くに居てくれてる。それだけで俺は前に進もうと頑張れたんです…」
「…なんだよそれ」
「これからも、俺の一番近くに居てください…」
「言ったな…シンちゃん!その言葉忘れんなよ!」
「もう、2度と忘れません!」
「お前が離れろって言っても離れてやんねーからなっ!」
「言うわけないでしょ!」
「……」
「……」
「……シン。少しは俺を頼れよ…」
「頼れませんよ」
「なんでだよ」
「あんたが隠し事するから」
「はぁ?俺は隠し事なんか…」
「手紙」
「……」
「なんで捨てたりするんですか?」
「…ほ…ほらっ。もうずいぶん時間経っちまったし」
「せっかく湊さんが俺の事を想って書いてくれた大切な手紙なのに、俺が拾わなかったらかわいそうでしょ?」
「かわいそうって…手紙が…?」
「俺が」
「……はぁ…?」
「あんたが俺の為に書いたラブレターなのに」
「ラブレターじゃねーって!」
「俺の好きなところたくさん書いてありましたよ。シン、好き!大好き!って」
「もーやめろっ!って!そんなん書いてねーし!」
「俺、あんたの書く文字も好きなんです…」
「……」
「俺の宝物なんですから。勝手に捨てないでください」
「……恥ずかしいからコレクションに加えるなよ」
「家宝にします!」
「すんなって!」
「……笑」
「……」
「……」
「… …冷えてきたな。帰って風呂入るぞ。シン」
「……お誘いですか?」
久しぶりに聞いたシンの言葉に湊は嬉しくなって満面の笑みをする。
そして、
「………そーだよっ!」
シンを抱きしめた。
次の日。湊とシンの左手首にはお揃いのブレスレットが光っていた…
おわり
【あとがき】
長くなりましたが…最後までお付き合いありがとうございました。
迷走に迷走して出口がわからなくなりそうでしたが、やはり最後はこの言葉で終わりたかったのでたどり着いてよかったです。
やっぱり しんみな 書くのは楽しいですね。
まだ書きたい気持ちもありますが、この作品はこれで終わりにしたいと思います。
今作について裏話。
湊が預かっていたブレスレット。
実は花火大会に行く前の掃除をした際にシンは湊の部屋で開いていた引き出しの中に入っていたのを見つけ、記憶が少し戻った設定になっています。
なので、その後は少し?イケイケになってます。
でもその段階ではまだ全てを思い出してはいません。
やはり、手紙が決めてです。
(愛及屋烏までやりたかったのですがドラマとまる被りするのでこちらはあえて封印しました。)
そして、湊を呼び出しわざと海に入ったのは、出会った場所からまた始めたいと思ったからです。
そこを踏まえてお読み頂けるとしっくりくるかな~と思います。
そして最後にひとつだけ…シンのDTを外で喪失させそうになったのを阻止した自分を褒めてあげたい。笑
また書きたい話が浮かんでいます。
こちらも長くなりそう…多分…
まだまとまってないので、次回作はこれとは別の話になるかも…
読んで頂いた全ての皆様に感謝申し上げます。
また、次回作でお会いできますように…
月乃水萌
【おまけ】
「お前に渡すもんがある…」
「……」
「あれ…箱の位置が微妙にずれてる…」
「どうしたんですか?」
「いや…勘違いか…。これ。お前の記憶が戻ったら渡そうと思ってて…」
「誕生日に貰ったお揃いのブレスレットてすね!…やっと渡してくれた…」
「んっ?」
「いや……」
「もう、無くすなよ…」
「無くしません。ブレスレットも、記憶も…あんたも…。」
「……」
「湊さん今から一緒に…」
「お誘いか……?笑」
「そうです」
「…いいよ。って…ぅわっ…」
「きちんと許可とりましたからね…あんたが承諾したんだ…覚悟してください……」
「…お前もな」