この作品はいかがでしたか?
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あまみゃside.
「天宮〜、もう疲れた膝枕してぇ……」
そう言ってもたれかかってくるとーやくんを、周りの先輩達が苦笑いで見ている。
一応とーやくんも先輩なんだけど、彼氏だし先輩にはあんまり見えないから、普段から「とーやくん」で通している。
三年生や先生にも、案外この呼び方は許されていた。きっと誰かみーはー? な一年か二年が流したんだと思う。
わたしは一年生でとーやくんは二年生だけど、みんな「お似合いのカップルだね」って言ってくれる。ちょっと嬉しい。
でも今は! 学校どころか部活動、しかも吹奏楽部!! ただでさえ厳しいこの部活で、少しでも不真面目に思われたら終わりだよ!!!……なんて考えてたのは最初だけで。
わたしは貴重なとーやくんのお守り係として、結構いちゃいちゃしてても大丈夫だってことに気付くのにそう時間はかからなかった。
「もうとーやくん……はい、どーぞ」
とーやくんは寂しがりやだから、たまにはこうやって構ってあげないと機嫌を損ねてしまう。でもそんなのは抜きにしても、ちょっと気の抜けた声で天宮、天宮と呼ばれると、なんだかすごく子供っぽくて、何でもしてあげたくなっちゃうのだ。
だってほら、いつもは見上げてるとーやくんの頭が自分の膝の上にあって、たまに居眠りもしてるなんて、、ちょっと可愛いよね。
「……あまみゃ?」
急にとーやくんが体の向きを変えて、鋭い視線を向けてくる。
あんまり突然で驚いたから、思わず肩がびくっと跳ねてしまった。
びっくりし過ぎてばくばくしている心臓をなんとか落ち着けながらとーやくんを見ると、とーやくんはちょっと怒ったような顔をして私を見ていた。
「え、、あまみゃ何かしちゃった……?」
とーやくんはしばらく黙ってから、
「……葛葉さんの匂いがする」
って不貞腐れたように言った。
「え、えーと……ん?」
くずは先輩……?確かにお昼休みに会ったけど…もしかして吸血鬼の何か術的なのかけられちゃった? あ、それとも、すれ違った瞬間に後ろから抱きつかれたからかなぁ……? うーん、どっちでもとーやくん怒るだろうなぁ……。
「……葛葉さんと何かあったの?」
……すでに怒ってた。
「だ、大丈夫だよ、ちょっとお話ししてただけ。だから全然、意地悪とかされてないよ?」
とーやくんは黙ってわたしを見ている。もちろんそんなことを聞いてるんじゃないだろうけど……。ヘンなことされてないかって話だもんね。
「……」
うぅ…こうなったらもう騙せない。後でバレるより自分で言った方が、ずーっと優しくしてくれるんだから。
「……すれ違った時に後ろからぎゅって…あと、ちょっとふわふわしたかも…。……ごめんね、とーやくん…」
ちょっとだけ目を潤ませてみたら、とーやくんはあっという間にわたしを逆に膝枕してしまった。柔軟剤のいい匂いがふわりと鼻をくすぐって、こんなこと滅多にないから少し顔が赤くなってしまう。
そのとき、がちゃりと音楽室のドアが開いて、とーやくんが少し身を硬くするのを感じた。
「……何しに来たんすか、葛葉さん」
「何って──」
そのひとはわたしを見て口元を歪め、小さく笑った。とーやくんがわたしの目を隠そうとするけど間に合わない。くずは先輩が口を開く。
「──あまみゃ貰いに♡」
「っ──」
ふわりと、意識を甘い霧が覆った。
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