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Stella

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Stella

12 - 1人じゃない

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2023年04月16日

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はっと頭を上げた。よく分からないけれど上げなければいけないように感じ取った。

『流星群……か』

どことなく懐かしい気分になる。嗚呼、やはり星は綺麗だ。

遠く遠くにある流星へと手を伸ばす。届かない、届くわけのない、それでも手を伸ばし続けた。

こんを詰めすぎては良くないと誰かが言っていた気がする。しかしそれは誰が言ったのかなんてもう覚えていない。何年前のことだろう。

すまない。本当に。

自分に責任がある。そうやって自分を追い詰めてしまっていた。彼らのことを考えれば考えるほど苦しくなる。

流星群はまるで去っていった彼らを表しているようだった。

side Gentarou Yumeno

深く息を吸う。そしてゆっくりと息を吐いた。緊張のせいか手はびっしょりと汗をかいていた。

前を向いてドアノブに手をかけようとする。この先に「リーダー」がいるのだから。俺は誘いに断らなければならない、俺はアイツと一緒に行くから。

2度だけノックをした。

コンコン

するとドアの向こうから入れと声が聞こえた。

ガチャ

『失礼する』

『そんなに畏まらなくてもいい』

ははっと笑われ俺はため息を着く。部屋に入る時の緊張はなんの意味があったんだと少々ガッカリする。

嫘は寂しそうな笑顔でこちらの全てを悟ったような瞳をしている。話すべきか話さぬべきか、ここまで来たなら話すが筋だろうがまだ上手く決意が固められていなかったのか、俺は手に汗を握る。

『俺は』

『あの元王様と行きたいんだろう?』

その言葉を聞いてどこかプツンと糸が切れた。肩の力はなくなりすとんと落ちるような感覚もした。

『……くっ、あははっ』

笑いが何故か止まらなかった。考えていたことが無駄になったというのに、全てを悟られていることがとにかくおかしかったのだ。

『どこがそんなに面白い?』

そうやってこちらに問う嫘すら優しい笑みをしていた。

『とても残念だよ、phantom』

『ああ、俺もさ嫘』

互いに小さな笑いを零して周りに花が咲く。

『でも俺は、俺には救世主が来てしまったんだ』

『いいや、いいんだ俺らはお前を強制することは出来ない』

残念だけど進みたい道へと行けと声をくれた。優しさに溢れ前へと押してくれるその言葉。

『王様の船の燃料はないだろう?持ってけ』

その言葉に俺は驚いた。燃料も持っていいなんて言われても受け取りずらい。確かに必要なものかもしれない、だけれどそこまでしてくれなくたっていい気がする。

『そんなっ、受け取れない』

『いいんだよ、うちに船なんてない』

『でも』

『でもじゃない、持ってけ』

寂しい瞳で嫘は言う。なんでそんなにも前へ押してくれるんだ。どうしてそんなにも救ってくれるんだ。俺はその優しさに泣きそうになった。

返せない自分が憎くて、悔しくて、そこまでしてもらう義理なんてないはずなのに……あったばっかりで損ばかりしているのは嫘なのだ。

メリットなんてない。きっと嫘も理解してるのだろう。

『なんでそこまでして俺を救うんだ』

『俺だって恨みがあるんだよ、お前の兄を殺したやつに』

『え……? 知ってるのか、?俺の兄を』

『あぁ、よーく知ってるよ』

震えた。何を知ってるのか分からない。それでも感謝するしかなくて、兄さんといてくれて嬉しくて。兄さんの良さを知ってる人はきっと俺以外にもいるって知れて、ただただ胸が暖かくなる。

『いってたさ、弟をよろしく頼むって。 似てるなphantom、お前の兄さんに』

その言葉だけで涙が溢れそうだった。いつ言葉を交わしていたのか分からない。文通だったかもしれない。頭が回らなくなるほど嬉しいと悲しいがいっぺんに来た。

なんで最後の最後でこんな思いになるのだろう。俺はいつだって前向きになんてなれなかったのに。

支えてくれる仲間がこんなにも暖かく、前へと押してくれる。

『ありがとう』

囁くようにそう放った。感謝してもしきれない。言葉にできないこの感情に、ただこの期待に、想いに応えるために俺は前へと進むんだ。

嫘は果たすことを果たした。みたいな顔をしてこちらの肩へと手を置いた。

『頑張れよ、そんな面じゃやってけねぇぞ』

『あぁ、やってやろうじゃないか、この世界を面白くしてやる』

『ははっ、いい意気込みだ。 やってこい』

ニカッと笑み嫘はそっと肩から手を離した。そしてまた、『行け』と声を出してこちらに優しい微笑みを向けて見送ろうとしていた。

扉まで少々小走りになる。そこまで長い道でもないのに。

『待てっ』

行けと言ったやつが急に止めて来た。

『なんだ?』

『酒とツマミでも持ってけ、今日は綺麗な流星群だ』

『! ありがとう』

手を出しそれを受け取る。すると今度こそお別れだ。

『またいつか会えた時は俺が地の果てに堕ちたときだろうよ、その時はまた拾ってくれ』

『縁起の悪いことを言うな、お前なら大丈夫だ』

まるで父親のようなことを言い出す嫘に吹き出しそうになったが、そんなことはやめた。真剣な話だからな。

他人にどうしてここまでできるのか理解できなかった。だって元は都合よく使われるだけの道具に俺はすぎなかったから。それでも誰かが俺を望むなら、それに全力で応えてやろう。

やってやるぜ、俺だって。見ててくれよ兄さん。

『じゃあな』

嫘は俺に手を振った。俺はそれに何も答えず、ただ手を振った。会える可能性なんて少ない、なら変な情も沸かさず手を振り、あえてまたななんて言わないでおこう。きっと嫘だってそうなのだから。

俺は走った。廊下を、階段までも。ただ息を切らして前へ前へと進んでいく。

次を俺を求める人に会うために。そこから外へ出るんだ。手を伸ばし、何かを求めるように。

『はぁっ、はあっ』

息を整えるべく少々深呼吸をしたりする。

上を見上げた時に見えた流星群はとても綺麗で、柄では無いがその星1つ1つに願いを込められているように感じた。手を伸ばし掴めない星を前にギュッと腕を握る。

届かない、分かってる。当たり前だから。

それでも尚その幻想を見続ける。叶わないことがあってもどこか光さす黄色があるのだから。

遠くに見える仲間に、大きく手を振って叫ぶんだ。

『おーい!!』

今日もいつしか俺の心では流星群ではない1つの星が流れていた。

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