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放課後の教室は静まり返り、外の廊下の音さえ遠くにかすんで聞こえる。
ミユは黒板に向かい、授業で使った資料を整理していた。机の上は整然としておらず、いつもより少し乱れている。それを見て、コビーは内心で微笑む。
「……手伝いますか?」コビーが声をかけると、ミユは振り返り、その鋭い目で彼を見つめる。
「必要ない。自分の机くらい自分で片付けられるよ。」
その言葉にコビーは少しひるむが、すぐに穏やかな声で返す。
「そうですか……でも、少しでも早く終わらせたほうが、二人の時間をゆっくり取れますよ」
ミユの唇がわずかに曲がり、冷たくも含みのある笑みを浮かべる。
「……ふぅん。そういうつもり?」
二人の間に一瞬の沈黙が流れる。教室の窓から差し込む夕日の光が、二人の影を長く伸ばしていた。
ミユは机の上にある資料をパラパラとめくり、コビーの存在を無視しているように見せかけつつも、彼の動きを確かめる鋭い視線を時折送る。
「……あまり私を甘く見ないでね」
コビーはその言葉に、思わず肩をすくめて笑った。
「はい。もちろんです。でも、それでも、こうして一緒にいられる時間は貴重ですから」
ミユは一瞬だけ眉をひそめるが、その目はわずかに柔らかくなる。
「……仕方ない。ほんの少しだけよ?」
コビーは心の中で安堵する。二人きりの教室で、仕事の合間のわずかな時間でも、互いに触れ合える距離を大切にしているのだ。
厳しく気の強いミユと、温厚で優しいコビー。二人の関係は、外からは見えないけれど、確かに強く結びついていた。