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【俺の恋の命日】
今日は、命日だ。
俺の、恋の命日。
誰にも思い出されることのない、寂しい日。
だからせめて、俺くらいは、今日くらいは、
誰にも知られずひっそり死んでしまった
あの恋を悼んで、涙を流してあげよう。
俺は、毎日朝6時には家に出る。
なぜなら、俺が通っている中学はバスで1時間30分くらいかかる。そして、俺の住んでいる場所は田舎中の田舎、ど田舎だ。
なので、1本乗り遅れただけで50分以上待たなければいけない。
でも苦痛ではない。
何故なら、貴方と同じバスに乗れるから。
今日も俺は寂れた停留所でバスを待つ。
でも、俺だけではない。
ブレザーを着た学生、貴方も一緒だ。
毎朝同じバス停から同じバスに乗るけれど、学校が違うので知り合いではない。
ベンチの端と端に、間隔を空けて座っている。
俺は時々、ちらりと貴方に視線を送るが、貴方はいつも音楽に夢中で俺のことを見向きもしない。
俺は貴方のその青髪、すっきりとした一重瞼のシャープな目元、青い目、太くて男らしい凛々しい眉毛、、、。
好きなところを挙げると止まらないくらい、俺は貴方のことを見ているのに。
ある日、俺は手になにかを握りしめてバス停に現れた。
今日こそ貴方に声をかけようと、一夜漬けをして手紙を書いてきたのだ。お陰で目元にはくっきりとクマが出来た。でも、今日貴方に声をかけられるなら、、。
でも、俺はなかなか勇気が出ないまま、結局いつものバスが来てしまう。
貴方が先にバスに乗り込み、それに続くように俺も少し高い階段の足場に足を踏み入れる。
貴方はいつも1番前の席に座る。そして、俺は今日も勇気が出ずにいつもの1番後ろの座席に腰を下ろす。
貴方の背中をじっと見つめる俺の横顔が、バスに運び去られていく。
翌日も、その翌日も、手紙を渡すどころか声をかけることすらできず、時間だけが過ぎていく。
そして枯れ葉が落ちていく季節も終わり、美しい桜色が咲く季節になった。
俺はいつものようにバス停のベンチに座っている。
でも、待っても待っても貴方は来ない。
いつものバスが来てしまった。
俺はその時初めて貴方は同学年ではなく、3月で卒業してしまった高校生だった事に気づいた。
花吹雪に包まれながら、俺は車内に乗り込んだ。
『その日、俺の恋がしんだ死んだ。』
誰もいないバス停に降り注ぐ桜色の花びらを背景に、俺は小さく囁いた。
それから数年後、社会人になった俺は、バス停を訪れた。
俺の手には小さいけれど、綺麗な青色の花束がある。
俺はベンチの前に立ち、いつも自分が座っていた場所に花束を添えて、手を合わせた。
#ミセスグリーンアップル
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それからいつも貴方が座っていた場所に腰を下ろして祈るように目を瞑る。
『今日は、命日だ。俺の、恋の命日。誰にも思い出されることのない、寂しい命日。』
閉じた瞼の隙間からぽろりと、悲しい色をした水が溢れる。
『だから、せめて、俺くらいは、今日くらいは、誰にも知られずひっそり死んでしまったあの恋を悼んで、涙を流してあげよう。』
目をゆっくり開け、後ろを向いたらまさかの事が起こった。
なんと、ビニール傘を差した貴方がいた。
ゆっくりと俺に歩み寄り、ベンチに置かれた青い花束を手に取る。
貴方は小さく笑って傘を俺に差し掛かる。
そして、花束を大切そうに抱えて、「最期にこんな綺麗なのを貰えて嬉しい。ありがとう。」と小さく、でもハキハキと言った。
その瞬間、貴方は何処かへ消えていってしまった。
俺はゆっくりと立ち上がった。
貴方に貰ったビニール傘を手に持ち、『貴方も最期だったんですね。』と言った。
そして、ゆっくりと歩き出し、雨の向こうへと姿を消した。
再び空っぽになったベンチに雨と花びらが降り注いでいる。いや、それだけではない。
小さく、綺麗な水がベンチに付いていた。
ーーーEND
コメント
1件
ひなあみさん、第1話読み終えたよ〜〜!😭💔💔 出会った相手への片思いが、卒業で気づかぬまま終わってしまって…しかも数年後、彼がもうこの世にいなかったっていうラスト、マジで涙腺やられる…。「最期にこんな綺麗なのを貰えて嬉しい」って言われた時の切なさと温かさが同時に来て、心臓ぎゅってなったよ…!! 青い花束とビニール傘、あのベンチに残った水滴の描写、美しすぎて何度も反芻しちゃう…。 恋の命日を自分で悼む主人公、すごく尊い…!!次のお話も絶対読みたいです🌸✨