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目を醒ますと、佐川は自宅のベッドにいた。
ゆっくり起き上がる。
時刻は朝9時、カレンダーは土曜日の休日だった。
「夢なのか」
「そうだよな、ハハハ、リアルな夢だ」
「え」
佐川は違和感を覚える。
服装が夢と同じ黒のジャージ、それにポケットの中に何かがある。
そっと手をポケットの中に入れる。
夢と同じ、四つ折りの紙が出てきた。
「まさかな、こんな紙なんてよくあるし」
唾を飲み込み、ゆっくりと紙を開く。
「体育祭のお知らせ」
あぁ、そうだった。
この格好も体育祭の合同練習で着用したものだ。
恐らく、金曜日の放課後練習で寝落ちしたんだな。
体もなんだが汗臭い。
「シャワーでも浴びるか」
シャワーを浴びた後、部屋に戻りTシャツと長ズボンに着替えた。
母親は夜勤帰りでまだ寝ている。
1階のリビングには妹の花鈴がいた。
涼より身長が10cm低い。
黒髪ツインテール。
涼とは似ない母親似の美人だ。
俺は父親似で平凡な顔立ちだが、兄妹仲は良い方だ。
「お兄、昨日お風呂入らなかったの」
たわいのない会話、文句の言い合いは日常茶飯事だ。
「そういえば、お兄は体育祭近いんだよね」
「最後にフォークダンスをペアで踊る相手は誰なの?」
「昨日も同じ会話したよな」
「話を聞いてなかったな、恵だよ」
「え、恵さんってどこの恵さん」
「おいおい、何言ってるんだよ、お隣の恵」
「篠原 恵だよ」
花鈴は驚いた表情をする。
「お兄、篠原 恵って誰?、それに隣に家なんかないよ」
涼は困惑した。
信じることができず、恵の家が見える方角のカーテンを開けた。
そこには篠原家はなく、空き地しかなかった。
涼は玄関から家を出て、走り出した。
後ろで妹の声が聞こえたが、気にせず走るスピードを上げる。
缶詰工場廃墟、隅田川付近を見て回るが、恵の姿はどこにもない。
後は俺に穴掘り調査を依頼した人だ。
確か、田中と名乗っていた。
その人とは1週間前、日給アルバイト募集の雇い主だった。
浅草の家で、穴を5m掘るだけの仕事。
思えば、あの時に何かあったような気がする。
記憶がはっきりしないが、この不思議な出来事の発端と疑った。
現地に着いたが、田中の家はなかった。
涼はその場に膝を付き、泣いた。
すると、見覚えのある四つ折りの紙が涼の右手に握られていた。
紙を開き、読んでみる。
ようこそ、ニーグリへ
あなたの成績は、以下のとおり。
・戦闘結果
◯勝者生存、×敗者死亡
◯佐川 涼VS ×タール
◯サーザス VS ×篠原 恵
・戦利品
漆黒のマント、恵からの譲渡品
タールのクロスボウ、タールの戦利品
・記録書のルール
1.この紙の使用期限は1年
2.戦闘時間は最長5時間
3.勝者は相手の異能を奪える
4.この世界で死亡した者は、現実の世界から抹消される
5.対戦相手はランダムに設定される
6.各プレイヤーはポイントを集める
7.ポイント上位者は半年に1回開かれるトーナメントに招集される。
8.優勝者は、特典が与えられる
・各プレイヤーの特典履歴
第一回優勝者 過去に戻る
第二回優勝者 異能強化
恵が頬に触れ、言った言葉を思い出す。
「これあげるね、何のことかわからないと思うけど」
「次の召集があった時はこのマントで逃げてね」
「今は私に任せなさい、悪い人はみんな私が倒すよ、約束だよ」
掌で土を握る。
「あぁ、約束するよ、お前が勝ってなかった悪い奴は皆んな俺がこの手で制裁を与える」
「そして過去に戻り、君を救ってみせる」