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#ウィンドブレーカー
유키에
44
#テニスの王子様
유리
87
#丸井ブン太
いちご飴⟡.·
26
ある日の夜。
柳沢慎也は、いつものようにベッドの上でぐっすりと眠っていた。
柳沢慎也「すぴー……すぴー……だーね……」
夢の中では、なぜか大量の焼きそばを食べていた。
柳沢慎也「うまいだーね……もう一皿だーね……」
しかし、そのとき。
ピカァァァァァッ!!
突然、柳沢の体がまばゆい光に包まれた。
柳沢慎也「ん……なんだーね……? まぶしいだーね……」
その光はどんどん強くなり、柳沢の姿を完全に包み込んでいく。
そして――。
シュンッ!
柳沢の姿は、ベッドの上から消えてしまった。
「……う、うーん……」
しばらくして、柳沢はゆっくりと目を開けた。
柳沢慎也「んん……朝だーね……?」
ところが、目の前に広がっていたのは、見慣れた自分の部屋ではなかった。
そこは、白い石で作られた不思議な部屋だった。
天井には見たこともない模様が描かれ、窓の外には巨大な木々と、空に浮かぶ島が見えていた。
柳沢慎也「…………」
柳沢慎也「……ここ、どこだーね!?」
ガバッ!
柳沢は飛び起き、慌てて周囲を見回した。
柳沢慎也「な、なんだーね、ここ!? 俺の部屋じゃないだーね! しかも、空に島が浮かんでいるだーね!?」
窓の外では、翼の生えた馬のような生き物が空を飛んでいる。
柳沢慎也「……夢だーね?」
自分の頬をつねる。
柳沢慎也「いっ……痛いだーね!」
どうやら夢ではないらしい。
柳沢慎也「ど、どういうことだーね!? 俺、昨日は普通に寝ただけだーね! いったい何が起きたんだーね!?」
そのとき。
ガチャッ。
部屋の扉が開いた。
入ってきたのは、ピンク色の髪をした可愛らしい女の子だった。
彼女は白いローブを身につけ、手には不思議な模様が描かれた杖を持っていた。
女の子「あっ! よかった……! 目が覚めたんですね!」
柳沢慎也「……お前、誰だーね?」
さくらはにっこりと笑った。
さくら「目が覚めましたか、勇者様!」
柳沢慎也「…………」
柳沢慎也「……勇者?」
さくら「はいっ!」
柳沢慎也「誰がだーね?」
さくら「あなたです!」
柳沢慎也「俺だーね!?」
さくら「はい! あなたこそ、この世界を救うために召喚された勇者様なのです!」
柳沢慎也「ちょ、ちょっと待つだーね! いきなり勇者って言われても意味が分からないだーね!」
さくら「あっ、ごめんなさい! 自己紹介がまだでしたね」
彼女は背筋を伸ばし、丁寧にお辞儀をした。
さくら「私は魔法使いのさくらといいます。よろしくお願いします、勇者様!」
柳沢慎也「魔法使い……?」
さくら「はい!」
柳沢慎也「杖を持っているし、魔法使いっぽい格好をしているだーね……」
さくら「本当に魔法使いですよ?」
柳沢慎也「いや、そういう問題じゃないだーね!」
さくらは首をかしげた。
さくら「えっと……勇者様、もしかして状況が分かっていないんですか?」
柳沢慎也「分かるわけないだーね! さっきまで自分のベッドで寝ていたんだーね! なのに目が覚めたら知らない場所にいるんだーね!」
さくら「ああ、なるほど!」
彼女はポンッと手を叩いた。
さくら「あなたは今、異世界にいるんですよ!」
柳沢慎也「…………」
柳沢慎也「異世界?」
さくら「はい! ここは、あなたが暮らしていた世界とは違う世界なんです!」
柳沢慎也「異世界……聞いたことあるだーね」
さくら「本当ですか?」
柳沢慎也「たしか、死んじゃって異世界に行くとか、そういう話があるだーね……」
そこまで言った瞬間、柳沢の顔が真っ青になった。
柳沢慎也「……て!」
柳沢慎也「俺、死んだーね!?」
さくら「ええっ!? ち、違いますよ!」
柳沢慎也「違うだーね!?」
さくら「あなたは死んでいません! 私が召喚したんです!」
柳沢慎也「…………」
柳沢慎也「……そうか、よかっただーね」
柳沢は胸をなで下ろした。
柳沢慎也「危うく死んだと思っただーね……。心臓に悪いだーね……」
さくら「驚かせてしまってごめんなさい」
柳沢慎也「いや、死んでないならいいだーね……。ところで、召喚ってどういうことだーね?」
さくら「実は、この世界は今、とても大変なことになっているんです」
さくらの表情が、急に真剣になった。
さくら「この世界には、人間やエルフ、ドワーフなど、さまざまな種族が暮らしています。でも……魔王が現れてから、世界は少しずつ闇に包まれてしまいました」
柳沢慎也「魔王……?」
さくら「はい。魔王の名前は、平古場凛」
柳沢慎也「……平古場?」
柳沢は思わず目をぱちぱちさせた。
柳沢慎也「なんだか聞き覚えがある名前だーね……」
さくら「えっ? 魔王をご存じなんですか?」
柳沢慎也「いや、知っているような、知らないような……だーね」
もちろん、柳沢が知っているのはテニスの試合で出会うような人たちのことだ。
まさか、異世界の魔王が平古場凛だとは思いもしなかった。
さくら「魔王は強大な力を持っています。魔物たちを従え、いくつもの国を支配しようとしているんです」
柳沢慎也「それで、俺を呼んだってことだーね?」
さくら「そうなんです!」
さくらは柳沢の両手をぎゅっと握った。
さくら「どうか! 勇者様の力で、魔王を倒してください!」
柳沢慎也「…………」
さくら「お願いします!」
柳沢慎也「…………」
さくら「世界を救えるのは、あなたしかいないんです!」
柳沢は、しばらく黙っていた。
そして――。
柳沢慎也「だーね!」
さくら「……えっ?」
柳沢慎也「分かっただーね! 魔王を倒せばいいんだーね!」
さくら「ほ、本当ですか!?」
柳沢慎也「ここまで来たからには、やるしかないだーね! それに、魔王を倒せば元の世界に帰れるかもしれないだーね?」
さくら「はい! 魔王城にあるという『帰還の魔法陣』を使えば、元の世界に帰れる可能性があります!」
柳沢慎也「それなら決まりだーね!」
さくら「ありがとうございます、勇者様!」
柳沢慎也「ただし!」
さくら「は、はいっ!?」
柳沢慎也「腹が減っただーね!」
さくら「…………え?」
柳沢慎也「寝起きだからお腹が空いたんだーね! 魔王を倒す前に、ご飯を食べたいだーね!」
さくら「……ふふっ!」
柳沢慎也「な、何がおかしいだーね!?」
さくら「いえ! 勇者様って、もっと厳しい人なのかと思っていたので……」
柳沢慎也「俺は普通の人間だーね! 腹が減ったらご飯を食べるだーね!」
さくら「はいっ! それでは、食堂に案内しますね!」
こうして、柳沢慎也の異世界生活が始まったのだった。
第二話 勇者のステータスはどうなっているだーね!?
食堂に向かう途中、柳沢は城の中をきょろきょろと見回していた。
柳沢慎也「すごい建物だーね……。本当に異世界に来たんだーね……」
廊下には金色の鎧を着た騎士たちが立っていた。
騎士A「おお! あのお方が勇者様か!」
騎士B「なんと頼もしそうなお姿だ……!」
柳沢慎也「……俺のことを言っているだーね?」
さくら「もちろんです! 勇者様は、この世界を救う希望なんですから!」
柳沢慎也「いや、俺はただの中学生だーね……」
さくら「中学生?」
柳沢慎也「あっ、こっちの話だーね!」
ようやく食堂に到着すると、テーブルの上にはパン、スープ、焼いた肉、果物などが並んでいた。
柳沢慎也「おおおおおっ! すごいだーね!」
さくら「遠慮せずに食べてください!」
柳沢慎也「いただきますだーね!」
柳沢は勢いよく食べ始めた。
騎士たちが目を丸くしている。
騎士A「す、すごい食欲だ……!」
騎士B「これほど食べられるとは……。さすが勇者様!」
柳沢慎也「もぐもぐ……?」
柳沢慎也「なんで食べているだけで感心されているだーね?」
さくら「勇者様は何をしてもすごいんですよ!」
柳沢慎也「そんなわけないだーね!」
食事が終わると、さくらは小さな水晶玉を取り出した。
さくら「それでは、勇者様の能力を調べましょう!」
柳沢慎也「能力?」
さくら「この世界では、人はそれぞれステータスを持っているんです。魔力や体力、攻撃力などですね」
柳沢慎也「ゲームみたいだーね……」
さくら「この水晶に手を置いてください」
柳沢が水晶に触れると、まばゆい光が広がった。
ピカァァァッ!
水晶の上に文字が浮かび上がる。
さくら「こ、これは……!」
柳沢慎也「どうしたんだーね?」
さくら「勇者様のステータスが表示されました!」
【勇者・柳沢慎也】
* 職業:勇者
* レベル:1
* 体力:120
* 攻撃力:35
* 防御力:28
* 魔力:5
* 素早さ:42
* 特殊能力:超反射神経
* 固有スキル:だーね式カウンター
* 称号:異世界から来た者
柳沢慎也「……魔力、5?」
さくら「そ、それは少し低いですね……」
柳沢慎也「少しどころじゃないだーね! 勇者なのに魔力が低すぎるだーね!」
さくら「でも、特殊能力の『超反射神経』はすごいですよ!」
柳沢慎也「反射神経?」
さくら「相手の攻撃を見切って、素早く反応できる能力みたいです!」
柳沢慎也「それなら、テニスで鍛えているだーね!」
さくら「テニス?」
柳沢慎也「俺はテニスをやっているだーね!」
さくら「なるほど……! だから素早さが高いんですね!」
柳沢は水晶を見つめた。
柳沢慎也「それで、この『だーね式カウンター』って何だーね?」
さくら「私にも分かりません……。勇者様だけが持っている固有スキルのようです」
柳沢慎也「使い方が分からないスキルなんて、意味がないだーね……」
さくら「きっと、冒険を続けるうちに分かるはずです!」
柳沢慎也「そうだといいだーね……」
そのとき、食堂の扉が勢いよく開いた。
バンッ!
兵士「さくら様! 大変です!」
さくら「どうしたんですか!?」
兵士「城の外に、ゴブリンの群れが現れました! 数はおよそ二十!」
さくら「そんな……! 城の結界を破ってきたんですか!?」
兵士「はい! 騎士団が迎撃していますが、押されています!」
柳沢慎也「ゴブリン?」
さくら「人間を襲う魔物です! 勇者様、危険ですから、ここで待っていてください!」
柳沢慎也「……いや」
柳沢は椅子から立ち上がった。
柳沢慎也「俺も行くだーね!」
さくら「えっ!?」
柳沢慎也「この世界を救うって決めたんだーね! 目の前で困っている人がいるのに、黙って見ているわけにはいかないだーね!」
さくら「勇者様……!」
兵士「し、しかし、相手は二十体もいます!」
柳沢慎也「数が多いなら、全部まとめて相手にすればいいだーね!」
さくら「……分かりました! 私も行きます!」
こうして、柳沢の初めての戦いが始まろうとしていた。
第三話 初めての魔物退治! これが勇者の実力だーね!
城の門を出ると、そこには緑色の肌をしたゴブリンたちが集まっていた。
ゴブリンA「ギャギャッ!」
ゴブリンB「人間だ! やっちまえ!」
騎士たちは必死に剣を振るっていたが、ゴブリンの数に圧倒されていた。
さくら「みなさん、下がってください! 私が魔法を使います!」
さくらは杖を掲げた。
さくら「炎よ、集え! ファイアボール!」
ボウッ!
火の玉が飛び、ゴブリンの前に着弾した。
しかし、ゴブリンたちは左右に分かれて避けてしまった。
さくら「ああっ! 避けられた!」
ゴブリンA「ギャギャギャッ!」
一体のゴブリンが、さくらに向かって突進してきた。
柳沢慎也「危ないだーね!」
柳沢は素早く前に出た。
ゴブリンが棍棒を振り下ろす。
柳沢慎也「そんな攻撃、見えているだーね!」
ヒョイッ!
柳沢は攻撃を紙一重で避けた。
ゴブリン「ギャッ!?」
柳沢慎也「そこだーね!」
柳沢はゴブリンの腕をつかみ、その勢いを利用して地面へ転がした。
ドサッ!
ゴブリン「ギャアアッ!」
柳沢慎也「よし! まず一体だーね!」
さくら「す、すごいです! 魔法を使わずにゴブリンを倒しました!」
柳沢慎也「テニスで鍛えた反射神経のおかげだーね!」
残りのゴブリンたちが柳沢を取り囲んだ。
ゴブリンA「ギャギャッ!」
ゴブリンB「コイツ、強いぞ!」
柳沢慎也「一斉に来るだーね? なら、まとめて相手をするだーね!」
ゴブリンたちが一斉に襲いかかった。
右から棍棒!
左から石!
後ろから突進!
しかし、柳沢は素早く身をかわしていく。
柳沢慎也「右だーね!」
ヒョイッ!
柳沢慎也「左だーね!」
サッ!
柳沢慎也「後ろだーね!」
クルッ!
ゴブリンたちの攻撃は、次々と空振りした。
その瞬間、柳沢の目の前に文字が浮かび上がった。
《固有スキル『だーね式カウンター』が発動しました》
柳沢慎也「……えっ?」
突然、柳沢の手に光が集まった。
柳沢慎也「な、なんだーね!?」
さくら「勇者様! その光は……!」
柳沢の体が軽くなる。
敵の動きが、ゆっくりに見えた。
柳沢慎也「なるほど……! これが俺のスキルだーね!」
柳沢はゴブリンの攻撃をかわし、その勢いを利用して一体ずつ弾き飛ばしていった。
柳沢慎也「だーね式カウンター!」
ドカッ!
バシッ!
ドスッ!
ゴブリンたちが次々と倒れていく。
最後の一体が震えながら後ずさった。
ゴブリン「ギ、ギギ……!」
柳沢慎也「もう終わりだーね!」
ゴブリン「ギャアアアッ!」
ゴブリンは逃げ出した。
周囲が静かになる。
騎士A「た、倒した……!」
騎士B「二十体近いゴブリンを、ほとんど一人で……!」
さくら「勇者様! すごいです!」
柳沢慎也「ははは! これくらい、どうってことないだーね!」
そう言った直後、柳沢のお腹が鳴った。
グゥゥゥゥ……。
柳沢慎也「……腹が減っただーね」
さくら「ええっ!? 今、戦ったばかりなのに!?」
柳沢慎也「運動したらお腹が空くだーね!」
騎士たちは顔を見合わせた。
騎士A「……本当に勇者様なのだな」
騎士B「いや、そこは関係あるのか?」
こうして柳沢は、異世界で初めての戦いに勝利した。
しかし、この勝利を遠くから見ている者がいた。
城から離れた森の奥。
黒い鳥が、ゴブリンたちの様子を見届けていた。
そして、その鳥は闇の中へ飛び去っていった。
第四話 そのころ魔王城では……
世界の北端。
黒い雲に覆われた山の頂上に、巨大な城がそびえ立っていた。
それが魔王城である。
城の玉座には、一人の少年が座っていた。
長い髪。
鋭い目つき。
不敵な笑み。
彼の名は――平古場凛。
魔王平古場凛「……ん?」
そこへ、一人の魔物が慌てて駆け込んできた。
魔王の手下「魔王様、大変です!」
平古場凛「なんや、騒がしいのう」
魔王の手下「勇者が現れました!」
平古場凛「……ほう?」
魔王の手下「しかも、城の近くにいたゴブリンたちを、たった一人で撃退したとのことです!」
平古場凛「そうか……」
平古場はゆっくりと立ち上がった。
平古場凛「それは面白そうやの……」
魔王の手下「いかがいたしましょう、魔王様?」
平古場凛「慌てることはないさ。勇者っちゅうのが、どれほどのもんか見せてもらおうや」
手下「では、四天王を派遣いたしますか?」
平古場凛「いや、まだ早い」
平古場は窓の外を見た。
遠くの空に、わずかな光が見えていた。
平古場凛「勇者がどんな奴か、まずは調べるんや」
魔王の手下「承知しました!」
平古場凛「それにしても……」
平古場はニヤリと笑った。
平古場凛「久しぶりに退屈せんで済みそうやの」
その目は、獲物を見つけた猛獣のように鋭かった。
魔王平古場凛。
彼もまた、ただの魔王ではなかった。
彼の正体は、柳沢が知っている世界と、どこかでつながっている存在だったのだ。
第五話 勇者と魔法使い、旅立つだーね!
ゴブリンを撃退した翌朝。
柳沢は王城の客室で目を覚ました。
柳沢慎也「……ふわぁぁ……よく寝ただーね」
窓の外から、小鳥のさえずりが聞こえる。
柳沢慎也「そういえば、ここは異世界だっただーね……」
昨日の出来事を思い出し、柳沢は頭を抱えた。
柳沢慎也「本当にとんでもないことになっただーね……」
コンコン。
さくら「勇者様、起きていますか?」
柳沢慎也「起きているだーね!」
さくらが部屋に入ってきた。
さくら「今日は、旅に出る準備をしましょう!」
柳沢慎也「旅?」
さくら「はい! 魔王を倒すためには、魔王城へ向かわなければなりません。でも、その前に仲間を集めたり、装備を整えたりする必要があるんです」
柳沢慎也「なるほどだーね!」
さくら「王様がお二人のために、旅の道具を用意してくださいました!」
部屋の隅には、革のかばん、地図、薬草、そして剣が置かれていた。
柳沢慎也「おお! これが勇者の装備だーね!」
さくら「剣もありますよ!」
柳沢は剣を持ち上げてみた。
柳沢慎也「……重いだーね」
さくら「大丈夫ですか?」
柳沢慎也「大丈夫だーね! ただ、ラケットのほうが手になじむだーね……」
さくら「ラケット?」
柳沢慎也「いや、なんでもないだーね!」
出発前、王様が二人を呼び止めた。
王様「勇者よ。この世界の命運は、お前たちにかかっている」
柳沢慎也「はいだーね!」
王様「旅は険しいものとなるだろう。魔物だけでなく、魔王軍の刺客も現れるかもしれぬ」
さくら「分かっています、陛下」
王様「どうか、無事に戻ってきてくれ」
柳沢は少しだけ表情を引き締めた。
柳沢慎也「必ず魔王を倒して、この世界を救うだーね!」
王様「うむ……!」
こうして、柳沢とさくらは城を出発した。
目指すは、最初の町。
冒険者たちが集まるという「ルミナスの町」だった。
第六話 最初の町で大騒動だーね!
森の道を歩くこと数時間。
柳沢はすっかり疲れ切っていた。
柳沢慎也「……まだ着かないだーね?」
さくら「もう少しですよ!」
柳沢慎也「さっきもそう言っていただーね!」
さくら「ご、ごめんなさい!」
柳沢慎也「異世界って、移動が大変だーね……。電車もないし、バスもないだーね……」
さくら「電車? バス?」
柳沢慎也「気にしないでほしいだーね……」
そのとき、森の向こうから町の姿が見えてきた。
さくら「ほら! 見えてきました!」
柳沢慎也「おおおっ!」
町には大きな門があり、商人や冒険者たちが行き交っていた。
柳沢慎也「すごいだーね! 本当に異世界の町だーね!」
門をくぐると、柳沢はさっそく屋台に目を奪われた。
柳沢慎也「おっ! あれは何だーね?」
さくら「焼き鳥ですよ!」
柳沢慎也「焼き鳥!?」
さくら「はい!」
柳沢慎也「食べたいだーね!」
さくら「ええっ!? さっき食べたばかりじゃ……」
柳沢慎也「旅は体力勝負だーね!」
さくら「……分かりました。一本だけですよ?」
数分後。
柳沢の手には、焼き鳥が十本も握られていた。
さくら「一本だけって言いましたよね!?」
柳沢慎也「……細かいことは気にしないだーね!」
さくら「気にします!」
二人がそんなやり取りをしていると、突然、町の広場から悲鳴が聞こえた。
町人「魔物だーっ!」
町人「逃げろーっ!」
広場の中央に、大きなオークが現れていた。
オーク「グオオオオッ!」
その手には巨大な斧が握られている。
さくら「そんな……! 町の中にオークが!?」
柳沢慎也「また魔物だーね!」
オークは屋台を壊し、町人たちに襲いかかろうとしていた。
柳沢慎也「さくら! 町の人たちを避難させるだーね!」
さくら「はいっ!」
柳沢はオークの前に立ちはだかった。
柳沢慎也「おい! こっちだーね!」
オーク「グオ?」
柳沢慎也「町の人に手を出すなだーね!」
オーク「グオオオオッ!」
オークが斧を振り下ろす。
ドゴォォォン!
地面が砕けた。
しかし、柳沢はすでに横へ飛び退いていた。
柳沢慎也「遅いだーね!」
オークが再び斧を振るう。
柳沢は攻撃を避けながら、相手の動きを観察した。
柳沢慎也「力は強いけど、動きが大きすぎるだーね……!」
オーク「グオオッ!」
柳沢慎也「そこだーね!」
柳沢はオークの懐に飛び込んだ。
だが、オークは予想外の速さで腕を振り回した。
柳沢慎也「なっ!?」
バシッ!
柳沢は吹き飛ばされ、地面を転がった。
さくら「勇者様!」
柳沢慎也「い、痛いだーね……!」
オークは勝ち誇ったように吠えた。
オーク「グオオオオッ!」
柳沢は立ち上がった。
柳沢慎也「……なるほどだーね。さっきまでのゴブリンとは違うだーね」
さくら「勇者様、無理しないでください!」
柳沢慎也「大丈夫だーね。俺には、まだ試していないことがあるだーね……!」
柳沢は深呼吸をした。
そして、オークが再び斧を振り上げた瞬間――。
柳沢慎也「だーね式カウンター・改!」
光が柳沢の体を包み込んだ。
相手の力を受け流し、その勢いを逆に利用する。
柳沢はオークの攻撃を紙一重で避け、足元へ滑り込んだ。
柳沢慎也「今だーね!」
ドカァァァン!
柳沢の一撃がオークの体勢を崩した。
オーク「グ、グオッ!?」
柳沢慎也「これで終わりだーね!」
オークは地面に倒れ、光の粒となって消えていった。
広場に静寂が戻る。
町人「た、倒した……!」
町人「勇者様だ!」
町人たちから歓声が上がった。
さくら「勇者様! 本当にすごかったです!」
柳沢慎也「ははは……。まあ、これくらい当然だーね!」
しかし、その直後。
柳沢慎也「……あっ」
さくら「どうしました?」
柳沢慎也「焼き鳥が……」
さくら「え?」
柳沢慎也「戦っている間に、全部落としただーね……」
さくら「…………」
柳沢慎也「俺の焼き鳥ぃぃぃぃぃっ!!」
さくら「そこですかーっ!?」
町の人々は、勇者の意外すぎる一面を知ることになったのだった。
第七話 仲間が増えただーね!
オークを倒した柳沢は、町の冒険者ギルドに案内された。
ギルドの中には、剣士や魔法使い、弓使いなど、さまざまな冒険者が集まっていた。
受付嬢「あなたが、噂の勇者様ですか?」
柳沢慎也「そうだーね!」
受付嬢「オークを倒したと聞きました。本当にすごいですね!」
柳沢慎也「いやいや、それほどでもあるだーね!」
さくら「ちょっと、調子に乗らないでください!」
柳沢慎也「褒められたら、素直に喜ぶべきだーね!」
そのとき、ギルドの奥から一人の青年が歩いてきた。
青年は長い金色の髪を後ろで結び、腰には剣を差していた。
青年「へえ……。こいつが勇者か」
柳沢慎也「……誰だーね?」
青年「俺はレオン。剣士だ。あんたが本当に勇者なのか、少し試させてもらいたい」
さくら「ちょ、ちょっと! いきなり何を言っているんですか!?」
レオン「勇者だっていうなら、腕前を見せてくれよ」
柳沢慎也「……いいだーね」
さくら「勇者様!?」
柳沢慎也「ただし、勝負は模擬戦だーね! ケガをさせるのはよくないだーね!」
レオン「へえ。余裕だな」
二人はギルドの訓練場へ向かった。
レオンは木剣を構えた。
レオン「いくぞ!」
柳沢慎也「来るだーね!」
レオンの剣が素早く振り下ろされる。
柳沢はそれを避けた。
レオン「ほう!」
次の攻撃。
さらに次の攻撃。
柳沢はすべて見切っていた。
柳沢慎也「動きは速いけど、次の攻撃が分かりやすいだーね!」
レオン「なにっ!?」
柳沢はレオンの剣を受け流し、木剣を軽く弾き飛ばした。
カランッ!
レオン「……参った」
柳沢慎也「いい勝負だっただーね!」
レオンはしばらく驚いていたが、やがて笑った。
レオン「気に入ったぜ。俺もあんたたちの旅に同行させてくれ」
さくら「えっ! 仲間になってくれるんですか?」
レオン「ああ。魔王軍の魔物が増えているのは俺も気になっていたんだ」
柳沢慎也「よろしく頼むだーね!」
こうして、柳沢たちに新しい仲間が加わった。
だが、レオンには一つだけ秘密があった。
彼は以前、魔王軍の領地にある村で暮らしていた。
そして、彼の故郷を滅ぼした魔物を指揮していたのは、魔王軍の四天王だったのだ。
レオン「……魔王軍を倒す。それが俺の目的だ」
柳沢慎也「……分かっただーね。一緒に頑張るだーね!」
レオン「ああ!」
三人は固い握手を交わした。
第八話 魔王軍の四天王、動き出す!
そのころ、魔王城。
平古場凛は、部下から勇者たちの報告を受けていた。
魔王の手下「魔王様。勇者は仲間を加え、北の街道を進んでいるようです」
平古場凛「ほう……。仲間まで増やしたか」
魔王の手下「いかがいたしましょう?」
平古場は玉座に肘をついた。
平古場凛「そろそろ、ちょっと遊んでやるかの」
彼が指を鳴らすと、暗闇から四人の影が現れた。
それが魔王軍の四天王だった。
第一の四天王、炎を操る魔術師。
第二の四天王、氷の槍を使う女騎士。
第三の四天王、巨大な斧を振るう獣人。
第四の四天王、幻術を操る謎の魔法使い。
平古場凛「お前ら、勇者を迎え撃つ準備をしろ」
四天王の一人「勇者を始末すればよろしいのですね?」
平古場凛「いや……」
平古場は笑った。
平古場凛「まずは、どれほどの力を持っとるのか見せてもらう」
四天王たちは一斉に頭を下げた。
四天王「はっ!」
平古場凛「楽しみにしとるで、勇者……柳沢慎也」
魔王は、すでに柳沢の名前を知っていた。
なぜなのか。
その答えは、まだ誰にも分からなかった。
第九話 幻の森! 仲間の絆が試されるだーね!
柳沢たちは、魔王城へ続く街道を進んでいた。
やがて、三人の前に深い森が現れた。
さくら「ここは『幻影の森』です」
柳沢慎也「幻影の森?」
レオン「森の中では幻術が使われるらしい。自分の記憶や恐怖を見せられることもあるそうだ」
柳沢慎也「……なんだか嫌な場所だーね」
さくら「気をつけて進みましょう」
森に入った瞬間、霧が立ちこめた。
白い霧が視界を覆い、仲間の姿さえ見えなくなっていく。
柳沢慎也「さくら! レオン! どこだーね!?」
返事はない。
柳沢は一人、森の中に取り残されてしまった。
すると、目の前に見慣れた景色が現れた。
青学ではない。
そこは、柳沢が通っていた六角中のテニスコートだった。
柳沢慎也「……ここは?」
コートの向こうに、見慣れた仲間たちの姿があった。
木更津淳「柳沢、何をぼんやりしているんだ?」
葵剣太郎「早く練習を始めようよ!」
柳沢慎也「みんな……?」
柳沢は思わず駆け寄ろうとした。
しかし、その瞬間。
仲間たちの姿が、黒い霧に包まれた。
そして、彼らは冷たい目で柳沢を見つめた。
仲間の幻影「お前は何もできない」
仲間の幻影「勇者なんて、似合わない」
仲間の幻影「元の世界に帰れないんじゃないか?」
柳沢慎也「……っ!」
柳沢の足が止まった。
幻影の声は、どんどん大きくなる。
仲間の幻影「お前はここで一人ぼっちだ」
仲間の幻影「誰も助けてくれない」
柳沢慎也「……違うだーね」
幻影「何が違う?」
柳沢慎也「俺は……」
柳沢は拳を握った。
柳沢慎也「俺は一人じゃないだーね!」
その瞬間、霧の向こうから声が響いた。
さくら「勇者様ーっ!」
レオン「柳沢! どこにいる!」
柳沢慎也「さくら! レオン!」
柳沢は声のする方へ走った。
柳沢慎也「俺には仲間がいるだーね! こんな幻に負けてたまるかだーね!」
柳沢の体から光があふれ出した。
パァァァッ!
幻影が次々と砕け散っていく。
森の奥で、誰かが驚いた声を上げた。
四天王「なに……? 私の幻術を破っただと?」
柳沢がたどり着いた先には、黒いローブをまとった魔法使いが立っていた。
第四の四天王「勇者よ。なかなか面白いものを見せてもらった」
柳沢慎也「お前が幻を見せただーね?」
第四の四天王「その通り。私は魔王軍四天王の一人、幻術師だ」
さくらとレオンも、柳沢のそばへ駆けつけた。
さくら「勇者様、無事だったんですね!」
レオン「こいつが幻術を使っていたのか……!」
幻術師「だが、今日はここまでにしておこう。魔王様も、お前たちに興味を持っておられる」
柳沢慎也「待つだーね! 魔王のところへ案内するだーね!」
幻術師「それは、まだ早い」
幻術師の体が黒い霧に包まれた。
幻術師「次に会うときまで、せいぜい強くなることだ」
シュンッ!
幻術師は消え去った。
柳沢慎也「逃げられただーね……」
レオン「だが、魔王軍の四天王が動き始めた。これからは、もっと厳しい戦いになるぞ」
さくら「それでも、私たちは進むしかありません」
柳沢は二人を見た。
柳沢慎也「そうだーね! 三人で魔王を倒すだーね!」
さくら「はい!」
レオン「ああ!」
三人は再び歩き出した。
第十話 炎の四天王との決戦!
幻影の森を抜けた三人は、火山地帯へとたどり着いた。
赤い溶岩が流れ、空には黒煙が立ち上っている。
さくら「ここは炎の山です。魔王城へ向かうには、この山を越えなければなりません」
レオン「そして、この山には炎の四天王がいる」
柳沢慎也「また四天王だーね……。ずいぶん人数が多いだーね」
さくら「四人ですから!」
柳沢慎也「それは分かっているだーね!」
そのとき、山頂から巨大な火の玉が飛んできた。
ボォォォォン!
三人の目の前で爆発が起きる。
炎の四天王「よく来たな、勇者ども!」
岩の上に、炎をまとった魔術師が立っていた。
炎の四天王「俺は炎の四天王! この山を越えたければ、俺を倒してみろ!」
レオン「俺が相手をする!」
レオンは剣を抜き、四天王へ突進した。
レオン「はあああっ!」
剣が炎の魔術師に迫る。
しかし、炎の四天王は片手を上げた。
炎の四天王「フレイムウォール!」
ゴオオオオッ!
炎の壁が立ち上がり、レオンを押し返した。
レオン「くっ……!」
さくら「レオンさん!」
炎の四天王「人間の剣など、俺の炎には通用せん!」
柳沢慎也「なら、俺がやるだーね!」
柳沢は前へ出た。
炎の四天王「勇者か。お前の力を見せてもらおう!」
四天王が炎の矢を放つ。
柳沢は身をひねって避けた。
しかし、炎の矢は地面に当たると爆発し、熱風が柳沢を襲った。
柳沢慎也「熱っ! 熱いだーね!」
さくら「勇者様! 炎を避けるだけでは近づけません!」
柳沢慎也「分かっているだーね!」
柳沢は攻撃のタイミングを見計らった。
炎の四天王が大きく腕を振り上げる。
炎の四天王「これで終わりだ! インフェルノ!」
巨大な炎が柳沢へ迫った。
柳沢慎也「今だーね!」
柳沢は横へ飛び、炎の攻撃が地面にぶつかった瞬間、その勢いを利用して一気に接近した。
柳沢慎也「だーね式カウンター!」
だが、炎の四天王は笑った。
炎の四天王「甘い!」
炎の四天王の体が炎に包まれる。
柳沢慎也「なっ!?」
柳沢の攻撃が弾き返された。
柳沢は地面に倒れた。
さくら「勇者様!」
炎の四天王「終わりだな。勇者よ!」
四天王がとどめを刺そうとした、そのとき。
レオン「させるか!」
レオンが横から剣を振るった。
炎の四天王「ぐっ!?」
レオン「柳沢! あいつの炎は、攻撃した瞬間に弱まる! その隙を狙え!」
柳沢慎也「分かっただーね!」
さくらも杖を構えた。
さくら「水よ、集まれ! ウォーターストーム!」
大量の水が渦を巻き、炎の四天王を包み込んだ。
炎の四天王「ぐおおおっ! 炎が……!」
柳沢慎也「今だーね!」
柳沢は一気に飛び込んだ。
柳沢慎也「だーね式カウンター・全力!」
光が爆発する。
ドォォォォン!
炎の四天王は岩壁に叩きつけられ、膝をついた。
炎の四天王「ば、馬鹿な……! この俺が……!」
柳沢慎也「一人じゃ勝てなかっただーね。二人のおかげだーね!」
レオン「当然だ。仲間なんだからな」
さくら「えへへ……!」
炎の四天王は悔しそうに笑った。
炎の四天王「勇者よ……。魔王様は、お前が思っているような相手ではないぞ」
柳沢慎也「どういう意味だーね?」
炎の四天王「魔王様は……」
その瞬間、四天王の体が黒い光に包まれた。
炎の四天王「ぐああああっ!」
黒い光は四天王の体を包み込み、やがて消えた。
残されたのは、炎の形をした小さな結晶だった。
さくら「これは……魔王軍の魔力の結晶?」
レオン「魔王が四天王を操っていたのか……?」
柳沢は結晶を見つめた。
柳沢慎也「……魔王。いったい何を考えているだーね?」
その答えは、まだ分からない。
だが、柳沢たちは確実に魔王城へ近づいていた。
第十一話 氷の四天王と、レオンの過去
炎の山を越えた三人は、雪に覆われた谷へ入った。
吹雪が吹き荒れ、視界は真っ白だった。
柳沢慎也「さ、寒いだーね……!」
さくら「この谷には氷の四天王がいると言われています」
レオン「……ここか」
レオンの表情が曇った。
柳沢慎也「どうしただーね?」
レオン「この先に、俺の故郷があった」
さくら「えっ……?」
レオン「昔、魔王軍の魔物に襲われたんだ。俺はそのとき、村を守れなかった」
柳沢慎也「……」
レオン「だから、魔王軍を倒したい。もう二度と、誰にも同じ思いをしてほしくないんだ」
柳沢は静かにうなずいた。
柳沢慎也「……一緒に倒すだーね」
レオン「ああ」
そのとき、吹雪の中から冷たい声が響いた。
氷の四天王「感動的な話だな」
白銀の鎧をまとった女騎士が姿を現した。
氷の四天王「だが、過去にすがる者に未来はない」
レオン「お前は……!」
氷の四天王「久しぶりだな、レオン。あの村の生き残りか」
レオン「お前が……俺の故郷を……!」
氷の四天王「そうだ。私が命じた」
レオンは剣を握りしめた。
レオン「許さない……!」
氷の四天王「ならば、私を倒してみろ!」
氷の槍が飛んでくる。
レオンは剣で弾き返した。
レオン「うおおおおっ!」
二人の戦いが始まった。
しかし、氷の四天王の力は圧倒的だった。
氷の四天王「アイスランス!」
氷の槍が地面から突き出し、レオンの足を封じる。
レオン「ぐっ……!」
氷の四天王「終わりだ!」
さくら「レオンさん!」
柳沢慎也「させないだーね!」
柳沢が飛び込んで攻撃を受け流した。
柳沢慎也「レオン! 一人で背負い込むんじゃないだーね!」
レオン「……柳沢」
柳沢慎也「仲間だーね! 一緒に戦うだーね!」
さくら「私もいます!」
レオンは二人を見つめた。
そして、ゆっくりと立ち上がった。
レオン「……そうだったな」
レオンの剣が光を帯びた。
レオン「俺はもう、一人じゃない!」
レオンは氷の四天王へ向かって走った。
さくらが魔法を放ち、柳沢が攻撃を引きつける。
その隙に、レオンの剣が四天王の鎧を打ち砕いた。
氷の四天王「な、なんだと……!」
レオン「これで終わりだ!」
最後の一撃が決まった。
氷の四天王は膝をついた。
氷の四天王「……私の負けだ」
レオンは剣を下ろした。
レオン「……村のみんなの分まで、俺は前へ進む」
氷の四天王は静かに目を閉じた。
その体から黒い光が抜けていく。
さくら「これで二人目の四天王を倒しましたね……」
柳沢慎也「レオン、よく頑張っただーね」
レオン「……ありがとう」
三人は再び、魔王城へ向かって歩き出した。
第十二話 魔王の正体
旅を続けるうちに、三人は魔王城の近くまでたどり着いた。
そこには、かつて栄えていたという大きな町があった。
しかし、町は荒れ果て、人影もほとんどなかった。
柳沢慎也「……ひどい有様だーね」
さくら「魔王軍に支配された町です。人々は食料も自由に手に入れられず、苦しんでいます」
レオン「こんなことを続けさせるわけにはいかない」
三人は町の人々を助け、魔物たちを追い払った。
その夜、町の宿屋で休んでいると、さくらが古い本を取り出した。
さくら「勇者様。少し気になることがあるんです」
柳沢慎也「何だーね?」
さくら「魔王の名前についてです。平古場凛という名前……。この世界の記録には、数百年前から存在していることになっています」
レオン「数百年前だと?」
さくら「はい。でも、記録の一部が破られていて、詳しいことは分かりません」
柳沢慎也「……平古場凛」
柳沢はその名前を何度も口にした。
柳沢慎也「どこかで聞いたことがある気がするだーね……」
さくら「勇者様の世界に、同じ名前の人がいるんですか?」
柳沢慎也「……いや。そういうわけじゃないだーね」
柳沢は、テニスの試合で出会った人たちのことを思い出そうとしていた。
しかし、記憶ははっきりしなかった。
そのとき。
宿屋の窓が、突然黒く染まった。
さくら「きゃっ!?」
レオン「伏せろ!」
窓ガラスが砕け、黒い霧が部屋に流れ込む。
霧の中から、一人の人物が姿を現した。
第四の四天王「勇者よ。魔王様がお呼びだ」
柳沢慎也「またお前だーね!」
幻術師「魔王城へ来い。そこで、すべてが分かる」
さくら「罠かもしれません!」
幻術師「罠だと思うなら、それでも構わん。だが、お前たちが知らぬ真実を、魔王様は知っている」
柳沢慎也「真実……?」
幻術師「お前がなぜ召喚されたのか。なぜ魔王が、お前の名前を知っているのか」
柳沢は息をのんだ。
幻術師「すべてを知りたければ、魔王城へ来ることだ」
黒い霧が消えた。
部屋には静寂が戻った。
さくら「……どうしますか?」
レオン「危険なのは間違いない」
柳沢は立ち上がった。
柳沢慎也「行くだーね」
さくら「勇者様!」
柳沢慎也「ここまで来たんだーね。魔王を倒す。それに、俺がどうしてこの世界に来たのかも知りたいだーね」
レオン「……分かった。最後まで付き合う」
さくら「私もです!」
三人は翌朝、魔王城へ向かうことを決めた。
第十三話 魔王城への突入!
魔王城は、黒い山の頂上に建っていた。
巨大な門の前には、無数の魔物たちが待ち構えていた。
柳沢慎也「……すごい数だーね」
レオン「ここが最後の戦いだ」
さくら「勇者様。必ず、三人で帰りましょう」
柳沢慎也「もちろんだーね!」
三人が門へ近づくと、魔物たちが一斉に襲いかかってきた。
柳沢慎也「来ただーね!」
レオン「俺が右を受け持つ!」
さくら「私は後ろから援護します!」
三人は息を合わせて戦った。
柳沢が敵の攻撃をかわし、レオンが剣で道を切り開き、さくらが魔法で魔物たちを押し返す。
ついに、巨大な門が開いた。
ギギギギギ……。
その向こうには、長い階段が続いていた。
柳沢慎也「行くだーね!」
三人は階段を駆け上がった。
途中には数々の罠が仕掛けられていたが、柳沢の反射神経とレオンの剣技、さくらの魔法で乗り越えていった。
そして、ついに――。
巨大な玉座の間へたどり着いた。
玉座に座っていたのは、黒い衣装をまとった少年。
平古場凛だった。
平古場凛「よう来たのう、勇者」
柳沢慎也「お前が……魔王、平古場凛だーね?」
平古場凛「そうさ」
平古場は玉座から立ち上がった。
平古場凛「ようこそ、魔王城へ。待ちくたびれたで」
柳沢慎也「どうして俺の名前を知っているだーね?」
平古場凛「その答えを知る前に、ひとつ聞きたいことがある」
柳沢慎也「何だーね?」
平古場凛「お前は、この世界を救うために戦ってきたんか?」
柳沢慎也「……そうだーね」
平古場凛「本当に?」
柳沢慎也「当たり前だーね! お前が魔物を使って人々を苦しめているなら、俺はお前を止めるだーね!」
平古場は、しばらく柳沢を見つめていた。
そして、静かに笑った。
平古場凛「……変わらんな、お前は」
柳沢慎也「……何?」
平古場凛「いや、こっちの話さ」
平古場が手を上げると、玉座の間に黒い魔力が渦巻いた。
平古場凛「さあ、始めようや。勇者・柳沢慎也。お前の力を、俺に見せてみろ!」
柳沢慎也「望むところだーね!」
最終決戦が始まった。
第十四話 勇者VS魔王! だーね式カウンターの真価!
平古場は片手を掲げた。
平古場凛「ダークボール!」
黒い魔力の球が、柳沢に向かって飛んでくる。
柳沢慎也「だーねっ!」
柳沢は身をひねって避けた。
だが、黒い球は壁に当たると、爆発して周囲を飲み込んだ。
柳沢慎也「危なかっただーね……!」
平古場凛「なかなかやるやん」
平古場は次々と魔法を放った。
炎。
氷。
雷。
そのすべてが、柳沢に襲いかかる。
柳沢は必死に避け続けた。
しかし、魔王の攻撃はあまりにも速かった。
柳沢慎也「くっ……! 攻撃の隙がないだーね!」
レオン「柳沢! 俺たちも加勢する!」
さくら「一人で戦わないでください!」
レオンが剣を構え、さくらが杖を掲げた。
平古場凛「仲間に頼るんか?」
柳沢慎也「当たり前だーね!」
平古場の眉が、わずかに動いた。
柳沢慎也「仲間と一緒に戦うのは、悪いことじゃないだーね!」
レオン「その通りだ!」
さくら「私たちは、絶対に負けません!」
三人は同時に攻撃を仕掛けた。
しかし、平古場は黒い壁を作り、すべての攻撃を防いだ。
平古場凛「甘いのう!」
ドォォォン!
黒い衝撃波が放たれ、三人は吹き飛ばされた。
柳沢慎也「ぐっ……!」
さくら「きゃあっ!」
レオン「くそっ……!」
平古場はゆっくりと歩み寄ってきた。
平古場凛「これで終わりか?」
柳沢慎也「……まだだーね」
柳沢はふらつきながら立ち上がった。
柳沢慎也「俺は……まだ負けていないだーね!」
平古場凛「なぜ、そこまで戦う?」
柳沢慎也「……決まっているだーね」
柳沢は拳を握った。
柳沢慎也「さくらがこの世界を救ってほしいって頼んだんだーね。レオンも、みんなも、必死に生きているんだーね」
柳沢慎也「だから俺は……最後まで戦うだーね!」
その瞬間、柳沢の胸元から光があふれた。
水晶で見たステータスが、空中に浮かび上がる。
《固有スキル『だーね式カウンター』が進化しました》
《新スキル:勇者の反撃》
《新スキル:仲間との連携》
柳沢慎也「……これは!?」
さくら「勇者様の力が……!」
レオン「進化したのか!」
平古場凛「……ほう」
柳沢の体が光に包まれた。
彼は剣を構え、魔王を見据えた。
柳沢慎也「これが、俺の全力だーね!」
平古場凛「来い、勇者!」
柳沢は走り出した。
平古場が魔法を放つ。
柳沢はそれを見切り、攻撃を受け流す。
レオンが横から剣を振るい、魔王の動きを封じる。
さくらが魔法で援護し、黒い魔力を打ち消す。
三人の力が一つになった。
柳沢慎也「だーね式カウンター・ファイナル!」
光が玉座の間を包み込んだ。
ドォォォォォン!!
平古場は大きく後ろへ吹き飛ばされた。
黒い魔力が砕け散る。
平古場凛「ぐっ……!」
柳沢慎也「これで終わりだーね!」
柳沢は最後の一撃を放とうとした。
しかし、その瞬間。
平古場が苦しそうに笑った。
平古場凛「……やっぱり、お前は変わらんな」
柳沢慎也「……何を言っているだーね?」
平古場凛「お前なら、ここまで来ると思っとった」
魔王の体から、黒い魔力が溢れ出した。
平古場凛「だが……俺を倒せば、それで終わりだと思うな」
さくら「どういうことですか!?」
平古場凛「俺は……この世界を守るために、魔王になったんや」
柳沢慎也「……何だって!?」
玉座の間が揺れ始めた。
平古場の背後に、巨大な黒い魔法陣が浮かび上がる。
平古場凛「見せてやる。本当の敵をな……!」
第十五話 真の敵! 世界を覆う闇
黒い魔法陣から、巨大な影が現れた。
それは人間の形をしていながら、全身が闇でできた怪物だった。
さくら「こ、これは……!?」
レオン「魔王よりも、さらに強い魔力を感じる……!」
平古場凛「こいつの名は、虚無の王。世界を飲み込むために生まれた存在や」
柳沢慎也「虚無の王……?」
平古場凛「数百年前、こいつは世界を滅ぼしかけた。俺は、こいつを封印するために魔王の力を手に入れたんや」
さくら「では、魔王軍が世界を支配しようとしていたのは……?」
平古場凛「封印を維持するために、魔力を集めとったんさ。だが、いつしか俺の力も限界に近づいた」
レオン「だから、勇者を呼び寄せたのか?」
平古場凛「いや。俺は勇者を召喚しとらん」
柳沢慎也「……え?」
平古場凛「お前を召喚したのは、さくらだ。だが、お前がこの世界に来たのは偶然やない」
柳沢慎也「どういうことだーね!?」
平古場凛「お前の持つ『だーね式カウンター』は、虚無の王の攻撃を打ち返すための力や」
柳沢は息をのんだ。
平古場凛「お前なら、この世界を救えると思ったんや」
虚無の王が、ゆっくりと腕を上げた。
虚無の王「……人間……」
その声は、世界そのものが震えているようだった。
虚無の王「すべて……消し去る……」
次の瞬間、黒い衝撃波が放たれた。
平古場凛「避けろ!」
柳沢たちは飛び退いた。
衝撃波が玉座の間を破壊し、壁を吹き飛ばした。
さくら「こんな力……!」
レオン「まともに戦えば、勝ち目がないぞ!」
平古場凛「虚無の王は、相手の魔力を吸収する。魔法を使えば使うほど、強くなるんや!」
さくら「それなら、どうすれば……!?」
平古場凛「攻撃を受け流し、その力を利用するしかない」
柳沢は、自分の手を見つめた。
柳沢慎也「……つまり、俺のスキルが必要だーね」
平古場凛「そういうことや」
柳沢は立ち上がった。
柳沢慎也「分かっただーね!」
さくら「勇者様!」
柳沢慎也「さくら、レオン! 俺が攻撃を引きつける。その間に、魔王と一緒に虚無の王の弱点を探すだーね!」
レオン「無茶だ!」
柳沢慎也「でも、誰かがやらなきゃいけないだーね!」
さくら「……分かりました。必ず、助けます!」
平古場凛「……お前、本当に変わらんな」
柳沢慎也「何か言っただーね?」
平古場凛「いや。頼んだで、勇者」
柳沢は虚無の王へ向かって走り出した。
柳沢慎也「来い! 虚無の王!」
虚無の王「愚かな……」
巨大な腕が振り下ろされる。
柳沢は攻撃をかわし、力の流れを見極めた。
柳沢慎也「だーね式カウンター!」
攻撃が弾き返され、虚無の王の体が揺らいだ。
虚無の王「……何?」
柳沢慎也「効いているだーね!」
しかし、虚無の王はすぐに体勢を立て直した。
虚無の王「小さき者よ……!」
黒い触手が柳沢へ伸びる。
柳沢は必死に避け続けた。
その間、さくらとレオン、平古場は魔法陣を調べていた。
さくら「この魔法陣……! 中心に、黒い結晶があります!」
平古場凛「それが虚無の王の核や。あれを破壊せん限り、何度でも再生する」
レオン「なら、あの核を破壊すればいいんだな!」
平古場凛「ただし、核は強力な結界に守られとる。普通の攻撃では届かん」
さくら「勇者様のカウンターなら……?」
平古場凛「可能性はある」
三人は柳沢を見た。
柳沢は、限界に近づきながらも攻撃をかわし続けていた。
平古場凛「……頼むで、柳沢」
第十六話 最後の一撃! 世界を救うだーね!
柳沢の息が荒くなっていた。
柳沢慎也「はぁ……はぁ……!」
虚無の王の攻撃は、ますます激しくなっていく。
虚無の王「消えろ……!」
黒い衝撃波が迫る。
柳沢慎也「くっ……!」
柳沢は攻撃を受け流した。
だが、すべてを避けることはできなかった。
バシィッ!
柳沢は地面に叩きつけられた。
さくら「勇者様ーっ!」
レオン「柳沢!」
柳沢は立ち上がろうとした。
しかし、体が動かない。
柳沢慎也「……くそっ……。まだ……だーね……」
虚無の王が、ゆっくりと近づいてきた。
虚無の王「お前の世界も……この世界も……すべて、闇に沈む……」
柳沢は歯を食いしばった。
柳沢慎也「……そんなこと……させないだーね……!」
そのとき、さくらが柳沢の前に立った。
さくら「勇者様! 私の魔力を使ってください!」
柳沢慎也「さくら! 危ないだーね!」
さくら「私は魔法使いです。あなたを助けるために、ここまで来たんです!」
レオンも剣を構えた。
レオン「俺の力も使ってくれ!」
平古場も前に出た。
平古場凛「俺の魔王の力も貸したる」
柳沢慎也「……お前たち……!」
さくら「一人じゃありません!」
レオン「最後まで一緒だ!」
平古場凛「世界を救うんやろ?」
柳沢は、三人を見つめた。
そして、ゆっくりと立ち上がった。
柳沢慎也「……そうだーね」
柳沢の体に、三人の力が集まっていく。
さくらの魔法。
レオンの剣気。
平古場の魔王の魔力。
それらが柳沢の固有スキルと融合した。
《新スキルが発動します》
《勇者の絆》
《だーね式カウンター・アルティメット》
柳沢慎也「これが……俺たちの力だーね!」
虚無の王「何……!?」
柳沢は走り出した。
虚無の王が黒い衝撃波を放つ。
柳沢はそれを受け流した。
その力を、自分の中に取り込む。
さらに、さくらの魔力が柳沢を包み、レオンの剣気が道を切り開いた。
平古場凛「今や! 核を狙え!」
柳沢慎也「うおおおおおおっ!」
柳沢は高く跳び上がった。
その目の前に、虚無の王の核があった。
黒い結晶。
世界を闇に染める、すべての元凶。
柳沢慎也「これで……終わりだーね!」
柳沢慎也「だーね式カウンター・アルティメットォォォッ!!」
一撃が、核を貫いた。
パキィィィィン!!
黒い結晶にひびが入る。
虚無の王「ぐ……ああああああああっ!!」
結晶が砕け散った。
巨大な体が崩れ始める。
虚無の王「なぜ……人間ごときが……!」
柳沢慎也「一人じゃないからだーね!」
虚無の王「うおおおおおおおっ!!」
光が爆発した。
玉座の間を包み込んでいた闇が、少しずつ消えていく。
黒い雲が晴れ、空からまばゆい光が差し込んだ。
そして――。
虚無の王は、完全に消滅した。
静寂。
その場にいた全員が、しばらく動けなかった。
さくら「……終わったんですか?」
レオン「ああ……」
平古場凛「……終わったんや」
柳沢はその場に座り込んだ。
柳沢慎也「……つ、疲れただーね……」
さくら「勇者様!」
さくらは柳沢に駆け寄った。
柳沢慎也「お腹……空いただーね……」
さくら「もうっ! 最後までそれなんですか!?」
レオン「はははっ!」
平古場も、思わず笑った。
平古場凛「……お前らしいのう」
こうして、世界を覆っていた闇は消え去った。
長い戦いは、ついに終わったのだった。
第十七話 魔王との和解! 平古場凛の本当の気持ち
戦いが終わったあと。
魔王城の崩れかけた玉座の間で、柳沢たちは休んでいた。
平古場は窓の外を見つめていた。
平古場凛「……ようやく、終わったんやな」
柳沢慎也「そうだーね」
平古場凛「俺は長い間、魔王として生きてきた。人間から恐れられ、憎まれてきた」
さくら「……」
平古場凛「本当は、誰も傷つけたくなかったんや。けど、虚無の王を封印するためには、魔力が必要やった」
レオン「だから、魔王軍を使って魔力を集めたのか」
平古場凛「そうさ。だが、そのせいで苦しんだ人間が大勢おる。俺がやったことは、決して正しいとは言えん」
平古場は目を伏せた。
平古場凛「……すまんかった」
レオンはしばらく黙っていた。
やがて、ゆっくりと口を開いた。
レオン「俺は、お前を簡単に許せない。故郷を失った人間の気持ちは、そう簡単に消えないからな」
平古場凛「……そうやろうな」
レオン「でも、これからお前が本当に世界を守るために行動するなら……俺も、いつかは認められるかもしれない」
平古場は驚いたように顔を上げた。
平古場凛「……ありがとう」
さくら「これからは、みんなで世界を立て直していきましょう!」
柳沢慎也「そうだーね! 魔王も、これからは悪いことをしちゃダメだーね!」
平古場凛「……誰が魔王やねん!」
柳沢慎也「いや、お前だーね!」
平古場凛「今はもう魔王をやめるつもりや!」
柳沢慎也「そうなのかーね!?」
さくら「ふふっ!」
レオン「はははっ!」
張り詰めていた空気が、ようやく和らいだ。
平古場は柳沢のほうを向いた。
平古場凛「柳沢。お前には、ひとつ礼をせんとな」
柳沢慎也「礼?」
平古場凛「お前が元の世界に帰れるように、帰還の魔法陣を使わせたる」
柳沢慎也「本当だーね!?」
平古場凛「ああ。お前はこの世界を救った英雄やからな」
柳沢は、少しだけ寂しそうな顔をした。
柳沢慎也「……そっか。帰れるんだーね」
さくら「……勇者様」
柳沢慎也「……どうしただーね?」
さくら「帰ってしまうんですね」
柳沢は、さくらの顔を見た。
彼女は笑顔を作っていたが、その目には少し寂しさがにじんでいた。
柳沢慎也「……ああ。でも、俺は元の世界の人間だーね」
さくら「……そうですよね」
柳沢慎也「だけど……」
柳沢は二人を見た。
柳沢慎也「お前たちと過ごした時間は、絶対に忘れないだーね!」
さくら「……勇者様!」
レオン「俺もだ。お前に出会えてよかった」
平古場凛「俺も、お前と戦えてよかったで」
柳沢慎也「……みんな……」
柳沢は、照れくさそうに笑った。
柳沢慎也「……なんだか、泣きそうだーね」
さくら「私もです……!」
三人は、しばらく言葉を交わさずにいた。
やがて平古場が、魔法陣の準備を始めた。
平古場凛「さあ、柳沢。帰る時間や」
柳沢慎也「……分かっただーね」
最終話 さようなら、異世界! また会う日までだーね!
魔王城の地下。
そこには、古代の文字が刻まれた巨大な魔法陣があった。
平古場凛「これが、帰還の魔法陣や」
柳沢慎也「これを使えば、元の世界に帰れるだーね?」
平古場凛「ああ。ただし、一度使えば、この世界とのつながりは閉じる。もう一度ここへ来るのは難しいやろう」
柳沢慎也「……そうか」
さくらは、柳沢に小さな袋を差し出した。
さくら「これを、持っていってください」
柳沢慎也「これは何だーね?」
さくら「旅の途中で見つけた、お守りです。勇者様が元の世界に帰っても、私たちのことを忘れないように……」
柳沢は袋を受け取った。
柳沢慎也「……ありがとうだーね」
さくら「それから……」
さくらは少しだけうつむいた。
さくら「勇者様に会えて、本当によかったです」
柳沢慎也「……俺もだーね」
さくら「最初は、世界を救うために召喚しただけだったんです。でも、旅をしているうちに、勇者様のことをもっと知りたいと思うようになりました」
柳沢慎也「……さくら」
さくら「だから……元の世界に帰っても、元気でいてくださいね!」
柳沢は、いつものように笑った。
柳沢慎也「もちろんだーね! 俺は簡単にはくたばらないだーね!」
レオン「お前なら、どこへ行っても大丈夫だろうな」
平古場凛「向こうの世界でも、しっかりやれよ」
柳沢慎也「ありがとうだーね! みんなも元気でいるだーね!」
平古場が魔法陣に魔力を注いだ。
魔法陣が輝き始める。
平古場凛「準備はええか?」
柳沢慎也「ああ!」
さくら「……さようなら、勇者様!」
レオン「またな、柳沢!」
平古場凛「元気でな!」
柳沢は三人に向かって、大きく手を振った。
柳沢慎也「みんな! 本当にありがとうだーね!」
光が柳沢の体を包み込んでいく。
柳沢慎也「……また会う日までだーね!」
シュンッ!
柳沢の姿が消えた。
魔法陣の光が、ゆっくりと消えていった。
さくらは、しばらくその場に立ち尽くしていた。
やがて、涙をぬぐって笑った。
さくら「……さようなら、勇者様」
レオン「……帰ってしまったな」
平古場凛「……ああ」
三人は、静かに空を見上げた。
その空は、もう黒い雲に覆われてはいなかった。
一方、そのころ。
柳沢慎也の部屋。
ベッドの上に、まばゆい光が現れた。
シュンッ!
柳沢慎也「……ん?」
柳沢は、自分のベッドの上で目を覚ました。
柳沢慎也「……ここは……」
見慣れた天井。
見慣れた机。
見慣れた部屋。
柳沢慎也「……俺の部屋だーね!」
ガバッ!
柳沢は飛び起きた。
柳沢慎也「戻ってきただーね! 本当に戻ってきただーね!」
時計を見ると、異世界へ行く前とほとんど時間が変わっていなかった。
柳沢慎也「……夢だったのかーね?」
しかし、ふと自分の手を見ると、小さな袋が握られていた。
柳沢慎也「……これは……」
袋を開けると、中には美しい青い石が入っていた。
それは、さくらがくれたお守りだった。
柳沢慎也「……夢じゃなかったんだーね」
柳沢は、青い石を大切に握りしめた。
柳沢慎也「さくら……レオン……平古場……」
異世界で出会った仲間たち。
一緒に戦った日々。
世界を救った最後の一撃。
そのすべてが、柳沢の胸に鮮明によみがえった。
柳沢慎也「……また会えるといいだーね」
そのとき。
柳沢のお腹が鳴った。
グゥゥゥゥ……。
柳沢慎也「……腹が減っただーね」
柳沢はベッドから立ち上がり、部屋を出ようとした。
しかし、扉を開けた瞬間――。
ピカァァァッ!
青い石が突然、光り始めた。
柳沢慎也「……えっ?」
石の表面に、小さな文字が浮かび上がった。
《勇者・柳沢慎也へ》
《こちらの世界は、今日も平和です》
《でも、いつかまた、あなたの力が必要になるかもしれません》
《そのときは、よろしくお願いします!》
最後に、見覚えのある文字が現れた。
《さくらより》
柳沢は、思わず笑った。
柳沢慎也「……まったく、仕方ないだーね!」
青い石をポケットにしまう。
柳沢慎也「また呼ばれたら、そのときも世界を救ってやるだーね!」
柳沢は、いつもの調子で歩き出した。
異世界での冒険は終わった。
しかし、彼と仲間たちの絆が消えることはない。
いつかまた、あの世界で出会う日が来るかもしれない。
そのときもきっと、柳沢慎也はこう言うのだろう。
柳沢慎也「任せるだーね!」
――柳沢慎也の異世界物語・完!
おまけ:異世界から帰還した柳沢慎也は、翌日の六角中の練習で、いつも以上に反射神経がよくなっていたらしい。本人いわく、「異世界で修行した成果だーね!」とのこと。もちろん、誰も信じてくれなかった。
コメント
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うわっ、一気に最後まで読んじゃった!めっちゃ面白かったわ〜! てかまず「だーね」口調の主人公、最後までブレずに貫き通したの本当に好き。しかも焼き鳥に執着しすぎてるし、戦い終わった直後に腹減ったって言うギャップ、脳筋じゃないのに強い感じがツボすぎる🔥 そして魔王の平古場が実は世界を守るために魔王やってたっていう伏線、全然気づかなかったから心臓止まるかと思った。最終決戦で三人+元魔王で虚無の王に立ち向かうシーン、熱すぎて何度も読み返したわ。 さくらとの別れはちょっとウルッときた…。最後の青い石のメッセージで「また呼ばれたら世界を救うだーね!」って言う柳沢、それでこそだよって思った。お腹すいたって言いながら日常に戻るラストも最高。 いい作品読ませてもらった、さくらさん!続編とかあったら絶対読みたいわ!