テラーノベル
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修太郎さんに同じことを言われたならば、「ごめんなさい」と素直に謝れていた気がする。
でも、健二さんと私は面識がないも同然なのだ。
そう思ったら、知ったようなことを言われたのがすごくすごく腹立たしくなってしまった。もっと言うと、相手だけが私のことを知っているような口振りなのが、何だかとてもモヤモヤしたのです。
『貴女が思う以上に、俺は日織さんのことを知ってると思いますよ』
でも、私の抗議の声に何らひるむことなく、それどころか幾分も悪びれた風もなく健二さんがそう返していらしたから堪らないの。
「私は……健二さんのことを何も知りません。なのに……そういうのは何だかフェアじゃないと思うのです。私、対等じゃないのは……嫌です!」
今までならば、思っていても決して口には出来なかったであろう言葉。
でも、私は、市役所で出逢った皆様のおかげで、少なからず変われたんだと思うのです。
今まで健二さんがおっしゃることには――例えそのお姿が見えなくても――、何の疑問も抱かず、無条件で従う癖が付いてしまっていた。
でも、それって……本当はおかしいと思わないといけなかったのです!
『日織さん、ずいぶん成長なさいましたね』
私は健二さんがお怒りになられても仕方がないと思って言ったのだけれど。
健二さんは何故か嬉しそうにそうおっしゃられて……。
『俺はね、何でも俺の言いなりになる貴女のことが、実はちょっぴり苦手でした。俺はそんなに暇じゃないんで、自分で物事を考えられないような女性とは正直なところ、面と向かって話す価値すらないと思っていました』
だからこそ、私に外へ出て自分の在り方を見つめ直して欲しかったのだと、健二さんはおっしゃった。
『まぁ、もっともそれだけが理由ってわけじゃなかったんですけどね……』
聞かせるとはなしに小さくつぶやかれた言葉が耳に引っかかって、私は思わず「え?」と聞き返す。
『あ、いや、それはこっちの話なんで気にしないでください。――ところで』
私はもっとそこを掘り下げてお聞きしたかったのだけれど、健二さんは尋かれたくなかったみたいで。すぐに話題を変えられてしまう。
『ところで――今まで持とうともしなかった携帯を突然お持ちになられた理由はなんですか? 日織さん、俺に何か言いたいことがあるんじゃないですか?』
ドキッとした。
健二さんは、何もかもお見通しなのではないかと思ってしまって、私は無意識に、服の胸元をギュッと掴んでいた。
心臓が物凄い速さで血液を送り出しているのが分かる。
喉が引きつって、口を開こうとしたら情けないくらいに唇が震えてしまって……。
私は気持ちを落ち着けるために深呼吸をする。
「――あ、あのっ、突然で大変申し訳ないのですが……その……健二さんのご都合がよろしいときに一度、お会いすることは出来ませんか? 私、どうしても健二さんにお会いして、ちょ、直接お話させていただきたいことが……あるのです……」
しどろもどろではあるけれど、何とかシミュレーション通りに言うべきことが言えた!……と、思う。
ギュッと携帯を握り締めて……私は健二さんのお返事を待った。
心臓が、今にも口から飛び出してしまうんじゃないかと思うくらい、胸の中で暴れているのが分かる。
『もちろんいいですよ。俺も、そろそろ正式に日織さんとお会いしたいと思っていたところですし。――えっと、じゃあ」
#極道
鷹槻れん

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健二さんが、手帳をめくられていると思しき音が、やけに耳に残って……。
『……そうですね。今週の日曜なんて、如何ですか?』
そう、提案された。
コメント
2件
いよいよ いいなずけさんと会うのね!?
よっす、はる。だわ! このエピソード、めっちゃ良かった……! 今までの「従順な日織ちゃん」から、自分の言葉で「フェアじゃない」って抗議するところ、めちゃくちゃグッときたよ。成長したなあって。しかもその言葉に健二さんが「言いなりは苦手だった」って返すのも渋いよね。お互いに変化してる感じがたまらん。 「正《・》式《・》に」って強調が効いてて、ついに会うのか!っていうドキドキが止まらなかった。日曜が楽しみすぎる🔥