処変わってお食事処
目の前の彼はがつがつと茶漬けを平らげていた
僕は其の様子をただ見ていた
国木田「おい太宰早く仕事に戻るぞ
仕事中に突然「良い川だね」とか云いながら川に飛び込む奴がいるか
おかげで見ろ
予定が大幅に遅れてしまった
それに非番の冬美まで巻き込んでしまったではないか」
太宰「国木田君は予定表が好きだねえ
あと,冬美ちゃんに関しては申し訳無いと思っているよ」
バンッ!と国木田さんは手帳を机に叩き付けた
国木田「これは予定表では無い!!理想だ!!
我が人生の道標だ
そしてこれには仕事の相方が自殺マニアとは書いていない」
それ書いてあったら凄いよ?
敦「ぬんむいえおむんぐむぐ?」
国木田「五月蝿い
出費計画の頁にも俺の金で小僧が茶漬けをしこたま食うとは書いていない」
敦「んぐむぬ?」
《仕事だよ
確か今日は太宰さん達は軍警察の依頼で猛獣退治を》
太宰&遥華「君達なんで会話できてるの?/どうして会話出来てるの?」
敦「はー食った!
もう茶漬けは十年は見たくない!」
国木田「お前……」
見るからに怒ってる
敦「いやほんっとーに助かりました!
孤児院を追い出され横浜に出てきてから食べるものも寝るところもなく…
…あわや斃(へい)死かと」
孤児院出身なんだ
太宰「ふうん
君,施設の出かい」
敦「出というか……追い出されたのです
経営不振だとか事業縮小だとかで」
遥華「随分と薄情な施設だね」
お姉ちゃんの言葉に僕も頷く
国木田「おい太宰
俺たちは恵まれぬ小僧に慈悲を垂れる篤志家じゃない
仕事に戻るぞ」
敦「四人は……何のお仕事を?」
太宰「なァに……探偵さ」
《格好つけないで下さいダサいですよ》
太宰「酷いっ!仮にも歳上なのだよ?」
自分で仮にもと付けてる時点でもう…
国木田「チッ
探偵と云っても猫探しや不貞調査ではない」
不貞調査はどっちかと云うと太宰さんがされる側じゃないかな
遥華「ウチは斬った張ったの荒事が領分なの」
《異能力集団,武装探偵社を知らない?》
敦さんは聴き覚えがあったのか驚いている
太宰さんは天井を見上げた
太宰「あの鴨居頑丈そうだね……たとえるなら人間1人に耐えれそうな位」
国木田「立ち寄った茶屋で首吊りの算段をするな」
太宰「違うよ首吊り健康法だよ
知らない?」
国木田「何あれ健康にいいのか?」
遥華「え,じゃあ今度試してみようかな…」
『?!』ブンブンッ
僕はお姉ちゃんの腕を掴んで首を振る
お姉ちゃんが居ない世界は嫌だ!
敦「(本当かなあ……)
そ…それで探偵社の4人の今日のお仕事は」
其の言葉に国木田さんはムッとした
国木田「虎探しだ
と云っても冬美は今日休みだったが」
敦「……虎探し?」
遥華「近頃街を荒らしている人食い虎だよ
本当に人を食べたのか分からないけど…倉庫を荒らしたり畑の作物を食べたり好き放題」
《最近この近くで目撃証言も…》
ガタッ,と音が響い
敦さんが椅子から落ちた音だ
敦さんの顔は恐怖に染まっている
逃げようとする敦さんを国木田さんは首根っこを掴み逃がさんとする
敦「む,無理だ!奴に人が叶うわけない!」
其の言葉に国木田さんは驚く
国木田「貴様人食い虎を知っているのか?」
敦「あいつは僕を狙ってる!
殺されかけたんだ!
この辺に出たんなら早く逃げないと__」
国木田さんはぱっと敦さんを離しすかさず手を掴み地面に叩き付けた
遥華「痛そう…」
国木田「先程遥華が云っただろう
武装探偵社は荒事専門だと
茶漬け代は腕一本かもしくは凡て話すかだな」
僕は異能を発動させた
『{離せ}』
国木田さんは敦さんを離した
『【駄目ですよ
地面に叩き付けてるんだから肺を圧迫させて話せないかもですし
まず尋問みたいです
それに社長だって国木田さんがやると情報収集が尋問になるって毎回云われてるじゃないですか】』
白い文字が空中に浮かぶ
渋々納得した様な表情で国木田さんは他の客に「なんだ見せものではないぞ」と追っ払っていた
太宰「それで?」
敦「………うちの孤児院はあの虎にぶっ壊されたんです
畑も荒らされ倉も吹き飛ばされて__死人こそ出なかったけど
貧乏孤児院がそれで立ち行かなくなって口減らしに追い出された」
遥華「それは…災難だったね」
国木田「それで小僧
殺されかけたと云うのは?」
敦「あの人食い虎__孤児院で畑の大根食ってりゃいいのにここまで僕を追いかけてきたんだ!
あいつ僕を追って街まで降りてきたんだ!
空腹で頭は朦朧とするしどこをどう逃げたのか」
?空腹の人間が虎から逃げれる筈がない
裏があるね,此れは
太宰「それいつの話?」
敦「院を出たのが2週間前
川であいつを見たのが__4日前」
証言と一致している
太宰さんはそれを聞いて考え込んだ
太宰「敦君これから暇?」
敦「…猛烈に嫌な予感がするのですが」
『【貴方が人食い虎に狙われてるなら好都合
虎探しを手伝ってよ】』
敦「い,いい嫌ですよ!
それってつまり餌じゃないですか!誰がそんな」
太宰「報酬出るよ」
現在無一文だよ?お金無しに如何生きていくつもり?
太宰「国木田君と遥華ちゃんは社に戻ってこの紙を社長に」
国木田「おい3人で捕まえる気か?
まずは情報の裏を取って」
遥華「それ以前にもう暗いですよ
未成年である冬美を連れ回す気ですか」
『【いいから】』
敦「ち,ちなみに報酬はいかほど?」
太宰「こんくらい」
太宰さんは0がたくさん書かれている紙を見せた
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