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ひまわり畑で笑って

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ひまわり畑で笑って

13 - Happy yellow

♥

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2025年02月18日

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ひまわり畑で笑って


桃赤

青赤














―――『僕、来月のクリスマスイブの日、アメリカに行く』









「え….な、なんで….」




びっくりして口をパクパクすることしか出来ない俺に、青ちゃんは優しい顔で微笑んだ。


「実は….この間の学校で練習試合してる時に、アメリカの有名な監督が僕らの試合を見に来たんだ。

それで僕に….君には才能がある、一緒にアメリカでサッカーしないかって、プロ目指さないかって誘いがあって….」


アメリカ。監督。プロ。

青ちゃんの、夢。

ぐるぐると頭の中で文字が回って、思考がついて行かない。


「その人に着いていけば必ずプロになれる。でも….サッカーは好きだけど、サッカー選手になるなんて考えたこと無かったし….」


青ちゃんは俯いたと思ったら急に俺を引き寄せて強く抱きしめた。


「もちろん断ったよ。赤くんと離れるなんて死んでも嫌だし」

「青ちゃ….」


俺を理由に彼は夢を諦めようとしている事に酷く罪悪感が募った。

サッカーをしている彼はほんとに輝いている。眩しいくらいに。

青ちゃんの、シュートを決めた時に笑顔が忘れられない。

その癖、同時に行って欲しくない、そばにいて欲しい、彼を傷つけてばかりの俺には、傲慢すぎる感情が溢れそうになった。


「でも僕、知ってたよ」

「え….」

「桃くんが赤くんの事どれだけ好きなのか」

「青ちゃ….」

「元々….桃くんがちゃんと気持ち伝えたら、赤くんのこと、離してあげるつもりだったし….だからこれで最後にする」


彼はケジメをつけたように俺を離すと、そっと俺の手を取って小さな写真を握らせてきた。


「クリスマスイブの日、空港まで僕を選んで来てくれたら、アメリカには行かない。ずっと僕は赤くんのそばにいる。」

「でもその日、赤くんが来てくれなかったら、僕はそのまま飛行機でアメリカに行く」






















―――









お風呂に入って、自分の部屋のベットに寝転がりながら青ちゃんに貰った写真を見る。


その写真は、雨の中浴衣を着て、ビニール傘をさしてこちらを振り返った俺の写真が写っていた。

以前写真部の橙くんのカメラのフォルダの中に何故か入っていて、見せて貰ったことのある写真で見覚えがあった。確か消してとお願いしたけれど青ちゃんが隣で現像して僕にちょうだいなんて言ったんだっけ。


ー空港 17時。


そして裏には彼のお世辞にも綺麗とは言えない字が書いてあった。


ぼーっと部屋の照明をぼんやり眺めていると、突然スマホが鳴ってびっくりして起き上がった。

表示されている”桃”という文字に目を見開く。

彼から電話がかかってくるなんてほんとに久しぶりだ。


「….はい」

「っ….赤?」

両手でスマホを耳に近づけて恐る恐る返事をすると何故か息を切らした桃くんが安心したように俺の名前を呼んだ。


「も、桃くん….?どうしたのこんな時間に….」

「いや、あの….ほんとに夜遅くごめん….今家の前にいるんだけど….」

「え??」


メリーさんか??なんて混乱しながら部屋のカーテンを開けるとコート姿でこちらを見上げた桃くんと目が合った。













―――





「悪い、こんな時間に呼び出して」

「いや….全然大丈夫だけど….」


桃くんと並んで歩き、近くの公園のベンチに腰を下ろすと、ふわりと彼のロングコートが肩にかけられた。


「お前薄着すぎ、湯冷めするだろ」

「いや、桃くんだって寒いでしょ….?」

「俺は歩いてきたらからいーの」


そう言うと桃くんは自動販売機で買ったココアを俺に手渡した。

薄暗く、照らす公園の街灯。

口をつける気にもならず、かじかんだ手を温めるだけのものとしてココアは両手に包んで膝に置いた。

白い息が暗闇にふっと消えていく。

少し赤くなった鼻の先。

彼の綺麗な横顔がぼんやり浮かび上がるのが酷く焦れったかった。


「あの、さ….」

「……..うん」

「俺、この間赤に….告白した」

「うん…….」


俯き、履いているスニーカーのつま先をじっと見つめて、彼の言う次の言葉を待っていた。


「….返事聞きたいなって思って」



「……..赤のこと好きだから」



唇を噛み締める。何故か泣きそうになってしまう。



「….クリスマスイブの日、街中で大きなツリーのライトアップあるだろ….?」


嫌な予感がした。


「俺を選んでくれるなら….夕方、そこで待ってる」


それだけ、だから。ごめんな、ほんとに急に呼び出して。本音を言うと会いたかったんだ。


俺の気持ちも知らないで彼は立ち上がり俺の頭に手を置くと、風邪ひく、帰ろうと少し笑った。

























―――






鼻歌を歌いながら僕は金色の光沢をなぞる。

ピストンにオイルを垂らし軽く馴染ませてふぅ、と息をつく窓に目をやる。

外は真っ暗の突然の大雨で、こんな寒い冬の雨の中散歩に出かけたら風邪ひくだろうなぁなんて思いながらカーテンを閉める。

もうすぐクリスマスに向けて定期演奏会があるし、僕達吹奏楽部は大忙しだ。

手入れをしようと家に持って帰ったのはいいものの、近所迷惑になるからあまり練習出来ないのは少し残念だ。

黒いケースに丁寧にしまい、蓋を占めるとぴんぽん、と玄関のチャイムが鳴った。

もう外は真っ暗の10時過ぎ、こんな遅くに誰だろう。両親も今日は出張で帰ってこないはず。慎重に2階からに降りてモニターを除くと


「….赤!?」


そこにはビショ濡れの赤が立っていた。


「黄….くん….っおれ、」


血相を変えて扉を開けると震えた彼の小さな唇から僕の名前が呼ばれる。

大きめのバスタオルを頭に被せ、慌ててお風呂へ誘導する。項垂れて俯いている彼の顔はよく分からなかった。


赤のための着替えをお風呂場に置くと、扉の中、シャワーの音の中にすすり泣く声が聞こえ、思わず扉を見つめる。

彼は何度も何度も、ごめんなさいごめんなさいと泣きじゃくっていた。




「赤、髪乾かしてあげる。こっちおいで」

「….うん。….ありがとう黄くん」


指をすべらすと手のひらからサラサラと落ちていくきめ細かい髪の毛。

乾かし終わり、軽くくしでとかしながら、赤がどうして泣いていたのか、聞くべきか聞かないべきか迷う。

そんな僕を察したのか赤は泣き腫らした赤い目で、こちらを振り返った。









そしてこう言ったのだ。







どうしたら_傷つけず傷つかず、大切な人を守っていけるの_____、






それは僕には到底答えられない質問で。






「おれっ….青ちゃんも桃くんも大切なのっ….片方を選ぶなんてっ….むりだよぉっ…..」










また華奢な肩を震わせて泣く彼が、いつもよりさらに小さく見えて。ただ唇を噛み締めて薄い背中をさすった。
















































































―――









数年後_______________、










「赤、この間また大学で告られてたでしょ」

「ぶっ、」


大学近くのオシャレなカフェ。僕の言葉に隣の赤は飲んでいたアイスココアを吹き出す。

ブラックのコーヒを飲む僕とは対称的に、赤は相変わらず中身は変わっていないように思える。


「、なななななんで知ってるの!?//」

「あーあ、結構イケメンだったのになー、しかも医学部」

「黄ちゃんはまたそーゆー話….」

「まぁた振ったんでしょ〜もったいない」

「….だって知らない人だし」

「皆泣いてるよ?医学部、高身長、性格顔イケメンのあいつでさえ駄目なのかって」

「恋愛はもういーの、俺は十分このままでも幸せだし」


伏し目がちに笑うと、彼の長いまつ毛が強調されて僕はまたもったいないなぁ、呟く。

高校生の時と比べて背こそ伸びなかったもの、赤はやっぱり大学1ずば抜けて可愛いし美人さんだ。人混みに紛れていても赤がいるとすぐにわかるし、通り過ぎる人々にいつも熱い眼差しを受けられている。のにも関わらず彼は全く興味なしだ。


「やっぱ色気か….?」

「何言ってるの….」


目の前の彼をじっと見つめる。呆れ顔で言われてるがしょうがない。赤は可愛い自慢の親友だから。




僕と赤は同じ大学に進み、僕は大学のオーケストラに入って相変わらずトランペットを続けている。

桃くん、紫ーくん、橙くんはそれぞれ別々の大学へ進学。そして青ちゃんは….アメリカでサッカーをしている。赤と僕以外はこうして離れ離れになってしまったけれど。






赤はあの日、青ちゃんのところにも、桃くんのところにも行かなかった。

片方を選べばもう片方が傷つく。

それがわかっているから赤はあえてどちらも選ばなかった。自分が1番傷つく未来を選んだのだ。

泣きじゃくる赤にどちらを選べばいいかなんて言えるはずもなく、無理して笑う彼のそばに居た。

その後曖昧なまま、あっという間に三学期が終わって桃くん、赤と紫くん、僕と橙くんでクラスが別れた。青ちゃんはアメリカに行き、今では有名なチームに入っていて期待の選手となっているらしい。

….もう赤は桃くんとも青ちゃんとも会わない気でいるのだろう。

人の気持ちなんてすぐに変わってしまう、そう思っていた。3年生になってクラスが別れても、悲しそうな顔で赤の姿を追う桃くんの視線を僕はずっと見てきた。今更どうこうすることは出来ないけど、ただ3人が幸せになってくれたら。




「あ、そういえば」


僕は鞄を漁り、赤の前に大学オーケストラの演奏会のチケットを出す。毎年彼を招待しているから今年も特別に無料にプレゼントだ。


「あ、今年も取っておいてくれたんだ」

「うん、今度の土曜日でやるから絶対来てね」

「もちろん、ありがとう!頑張ってね」


ふわりと笑う彼に僕も微笑むとカランと音を立てる彼の氷のグラス。麦わら帽子を被って追いかけっこをしている窓の外の子供達を見て、今年も暑くなるな、そう思った。























──────



大きな拍手に包まれると、黄くんの演奏会は幕を閉じた。人々がザワザワと会場を後にしていく。俺も余韻に浸りながら、黄くんにメッセージでとってもよかったよ、と感想を送ると席を立った。

やはり有名なオーケストラで人が凄い。毎年チケットを取ってくれる黄くんに感謝だ。フラフラと歩いているとドンッと誰かにぶつかってしまい、謝ろうと顔を上げると、そこには驚いた顔の青ちゃんがいた。




「赤くん….?」
















「日本に戻ってきてたんだね….」

「うん、黄くんに招待されて….一時帰国してるんだ」


会場前の噴水の前のベンチ。木がザワザワ揺れる木の影のおかげで少し涼しい。隣に座る彼は背が伸びていて日に焼けただろうか、ちらりと彼を盗み見ると目が合ってくすりと笑われた。


「な、なに….//」

「いや、赤くん前も凄い可愛かったけど今はもっと可愛く美人になってるなって….」

「褒めてもなんも出ないよ….//」

「ははっ….あーあ、だめだね。いざ会うとまた触れたくなる」


少し寂しそうな顔をした青ちゃんに俯いて膝の上で拳を握る。


「っ….青ちゃん….本当にごめんなさいあの日….」


下を向いてるせいか視界が滲んで唇を噛み締める。あの日青ちゃんがどんな気持ちで待っていたのか、日本を去ったのか考えるだけで苦しくて申し訳なくて。


「分かってたよ、赤くん。….でもねもういいんだよ」


青ちゃんはポンポンと俺の頭を撫でた。

生ぬるい夏の風が俺の髪を揺らす。


「僕はもう大丈夫だからさ….行っておいで」


顔を上げると優しい瞳と目が合って微笑まれる。


「今、1番会いたい人の所へ」
























──────











茂みを抜けると、満開のひまわり畑が一面に広がっていて思わず立ち尽くす。

風に笑うように揺れる黄色。

いつかのあの日のように太陽がキラキラ輝いて視界が眩しい。


『おおきくなったらけっこんしようね』



彼と誓いの言葉を立てた場所。





「桃く….」

「…………赤?」


振り返った彼は驚いたように俺を見た。


「桃く…….」


久しぶりに呼んだ彼の名前に思わず目の奥が熱くなった。


「好き…….おれ、桃くんの事が好きです….遅くなって….ごめんなさい」


成長した彼の顔を姿を綺麗な髪も目に焼き付けていたいのに、どんどん視界がぼやけて崩れていった。溢れた涙が何度も何度も頬を伝う。


「それだけ….です、じゃぁ、」

「っ、待てよ!」


涙を乱暴に手の甲で拭き、背を向けて走り出そうとすると彼に思いっきり後ろから抱きしめられた。たくましい体つきに少しドキッとする。


「言うだけ言って逃げるのかよ…….ほんとに赤か….?好きとか….夢じゃ….ない、よな」


振り返ると泣きそうな彼がいて、その瞳の中にはちゃんと俺がいた。


「夢じゃ….ないよ」

「赤っ….」


少し笑って彼の頬を両手で包み込む。

今度は正面から大きな体で抱え込むように強く抱きしめられ、足が宙に浮く。

また涙がポロポロ彼の肩を濡らした。



「すきだっ….すきだ、赤っ….すき」

「おれもすきっ….」

「やっと、つかまえた….」


桃くんは涙でぐしゃぐしゃの顔の俺を両手で包むと俺の唇に角度変えて何度も何度もキスした。

触れ合ったところから熱を帯びて胸がきゅぅっと締め付けられる。



「んっ//、くるしっ」

「可愛すぎる赤が悪い」

「なっ//」

「俺の片思い歴舐めんなよ、今から覚悟しとけ」

「ひえっ//」









泣きながら、2人の恋人はほんとに幸せそうに笑う。


そんな2人に、ひまわりが祝福するようにゆらゆらとまた風に揺れた。


“おめでとう”そう、言われたような気がした。






















……..𝑒𝑛𝑑

























終わりましたぁぁぁあ!!

無理やり感凄いですけどごめんなさい笑

たくさんの応援と、みなさんここまでお付き合いありがとうございました🫶

いつの間にかフォロワーが1000人超えてましたびっくり😳ありがとうございます!


そして



これを最後に、1度活動を区切らせて貰いたいと思います。辞める訳では無いのですが投稿頻度がとても少なくなると思っているので(((現に今もそう

お詫びとしてはなんですが最後なので!コメントでフォローして欲しい方言ってくれればフォローしに行きます!

私がフォローしてる方、古参?の頃にフォローしてくれた人達なんですよ笑 フォロワーとフォロー中の数同数で相互フォロー目指してたんですけどリムられ率が多くて、不可能ってことに気づき面倒くさくてフォローするのやめてしまいました笑

なので!いつも長文くれる方々!いいねしてくれる方々!フォローさせてください!

感想も待ってます!

今までありがとうございました!

また私が気分で小説出した時は構ってやってください笑


以上、はみぃでした。

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コメント

44

ユーザー

連載終了お疲れ様です! 登場人物たちみんなが優しい心の持ち主で、一つ一つの言葉がとても美しく思わず見入ってしまうような魅力的で素敵な作品でした!🫶 投稿頻度が少なくなってしまうのは悲しいですが、またいつかはみぃさんの素敵なお話を拝見できることを楽しみにしています😊 もし良ければなのですが、はみぃさんにフォローして頂けると本当に嬉しいです!よろしくお願いします🙇‍♀️ 長文失礼しました!💦

ユーザー

初コメ失礼します!とっても素敵な作品ですね!何度も読み返せてしまう✨ 新しい作品待ってます🎶これからも頑張ってくださいね😊

ユーザー

初コメ失礼致します! 3日前ぐらいに主様と出会い、主様のかいた小説をほとんど見てきました 主様の言葉選びや感情表現がとてもお上手で、、ほんと、みてて飽きなくて、すごくいいお話ばかりでした、! ストーリーもとても凝っていて尊敬しかないです、! ほんとに、もう大好きです() これからの連載も楽しみにしております!!ただ、無理しないでくださいねっ! これからも応援しております!😊 長文失礼しました

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